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家族信託の活用事例「子供ありの前妻と子供なしの後妻」
自分の相続が開始した際、後妻と前妻の子供が財産を相続することになります。しかし、まずは後妻に全ての財産を相続させ、後妻が死亡後に前妻の子に相続させたい場合、どのような方法で財産の相続者を指定すればいいのでしょうか。ここでは、後妻と前妻の子供が順に財産相続をするための方法について、事例を交えて説明していきます。
前妻との間に子供がいるが後妻との間に子供がいない場合の相続問題
離別・死別を問わず、再婚すると後妻が法律上の配偶者になるため相続では前妻の子とともに配偶者も法定相続人となります。
しかし、男性が望んでいた相続の形は以下のようなものでした。
- まず後妻にすべての財産を相続させる
- 後妻が亡くなった後は、残る財産の全てを前妻の子供に相続させる
問題は、後妻が亡くなった後の相続において、一旦後妻に相続された財産はすべて後妻の父母や兄弟姉妹に行ってしまい、前妻の子供に財産がいかない結果となってしまう点にあります。どうせ相続させるなら、後妻が亡くなった後は前妻の子供に残る全財産を相続させたいと考えていたため、この問題をどのような制度で解決していくかを悩まれていました。
遺言書で指定する方法もありますが、遺言書では一代先までしか効力を持たないため、後妻に子供がいない以上「後妻が亡くなった後に前妻の子供に遺贈させる」といった指定をすることはできません。
そこで、とるべき選択肢は信託契約ということになってきます。信託契約を交わすと以下のような関係性ができあがります。
- 財産所有者→委託者
- 財産の管理や運用を任せられた者→受託者
- 財産から生じる利益を得る者→受益者
信託契約のいいところは、自分が健在のうちから亡くなった後にかけて、連続的に契約ごとが実行されていく点にあります。遺言書のように一世代のみ適用される、といったしばりもないため、柔軟性に富んだ方法だといえるでしょう。また、自分が亡くなった後、誰にどのように財産を継いでもらいたいかを設定しておけるので、自分が思い描く形に添って受益者を指定していけばいいのです。
よくあるパターンとしては、本人を委託者兼受益者とし、子供に受託者を任せるというものがあります。子供がいない場合は、他の親族や信託銀行などを受託者としてもいいでしょう。
まずは受益者を後妻とすることで、自分が亡くなった後も後妻の生活は守られます。後妻が亡くなった後に備え前妻の子供に財産が継がれるよう指定しておけば、後妻の兄弟姉妹などに相続されることなく希望通り前妻の子供に財産が移行することになります。このような形を、受益者連続型信託契約といいます。
後妻に相続させた財産を次に前妻の子供に継がせる事例
80歳の男性は前妻と離婚した過去がありますが、現在は再婚して後妻とともに暮らしています。前妻との間に子供が一人いる一方、後妻との間には子供はいません。
前妻の子供は非常に人柄がよく後妻のことも大切にしてくれるため、男性は将来的に後妻に財産を相続させた後、後妻も亡くなったときには前妻の子供に財産を継いでほしいと考えています。
家族信託の設計(スキーム)
本件における家族信託の設計(スキーム)は以下の通りです。
- 委託者:男性
- 受託者:信託銀行
- 第一受益者:後妻
- 第二受益者:前妻の子供
これにより、男性が健全なうちは財産管理や運用を受託者に任せ、自分が亡くなった後は財産を後妻に継がせることができます。さらに後妻も亡くなった後は、前妻の子供に財産が移行するよう指定できることになります。
まとめ
男性は遺言書を書いて財産の相続先を指定することもできましたが、遺言書では一代先までしか有効性を保つことができません。そこで信託契約を活用し、より柔軟な財産相続の在り方を実現したのです。
相続権利は後妻と前妻の子供の両方が持ちますが、男性は、後妻の父母や兄弟姉妹にまで相続されてしまいかねない事態を避けたいと考えていました。
信託契約であれば、遺贈型受益者連続信託という形をとることで、後妻に継がせた財産を後妻が亡くなった後は前妻の子供に相続させるといったことが可能になるのです。このような仕組みは専門家に相談して初めて提案されることも多いため、ぜひ一度当事務所までご相談いただけますと幸いです。