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民事信託(家族信託)の当事者について

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 民事信託における委託者、受託者、受益者について

 民事信託における当事者についてご説明します。登場人物は主に3名おり、それぞれ、委託者・受託者・受益者といいます。

委託者とは、財産の所有者のことであり、財産を託す側の人物をいいます。

受託者とは、委託者の反対に、委託者により財産の管理・運用・処分等を任された者をいいます。

受益者とは、託された信託財産から生じる利益をもらう人のことをいい、信託財産の事実上のオーナーと言ってもよいでしょう。受益者は自分が利益を受けることができるように受託者の仕事を監視・監督する権限も持っています。

 

委託者はどんな人がなれるか?

 民事信託において委託者に該当することになるケースとしては親が子に財産を託す際のその親が委託者となります。財産管理を「委」任し、「託」す側なので、委託者といいます。委託者は信託契約をするための契約行為ができる者であればだれでも委託者になることができます。(未成年者が委託者になる場合は少ないのですが、未成年者が信託契約の当事者になるケースは、親権者(法定代理人)の同意が必要で、遺言による信託であれば、委託者が満15歳以上である必要があります。)注意点としては、すでに認知症やその他の精神上の障害により契約をする能力がないものは委託者になれないということです。この場合での財産管理は成年後見制度に頼らざるを得ません。

 

受託者はどんな人がなれるか?信託監督人とは?受益者代理人とは?

 民事信託において受託者に該当することになるケースとしては親が子に財産を託す際のその子が受託者となります。財産の管理を(受)諾し、「託」される側なので、受託者といいます。受託者は個人でも法人でもなることができますが、個人の場合、未成年者は受託者になることはできないとされています。財産を託される者には高度な注意義務があることから、未成年者などはその能力がないとされ、受託者になることができないのです。

 

 なお、いくら家族内で信頼できる人がいたとしても、もしかするとその受託者が受益者の利益を考えずに身勝手なことをしてしまうかもしれません。その場合は、受託者の監督者として、信託監督人を契約上選任することもできます。受益者が高齢で受託者の行動をきちんと監督できない時に、この信託監督人の働きは重要になってきます。信託監督人は受託者とは親族関係にない第三者を立てることが理想です。受託者と信託監督人が親族関係にある場合、適正な監督が期待できず、受託者と信託監督人との間で財産管理上の争いが生じるケースもあるので、極力、弁護士等の法律専門家を信託監督人に選任することがよいかと思います。

 

 また、受益者が高齢にともない意思の表示ができなくなってしまうことに備え、受益者の代理人を選任しておくこともできます。受益者代理人は、受益者の利益を保護するために受益者に代わり一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。

 

 

受託者の権限と義務について

 受託者は信託契約の目的達成のために、契約で定められた権限の行使が可能となります。権限の範囲については、信託契約の中で詳細を定め、委託者が望まない権限の行使を制限することもできます。

 

 次に、受託者の法的な義務についてですが、以下に記載の義務が受託者に課せられます。受託者は一定の重い責任を負うことになります。

善管注意義務
 善良な管理者としての高度な義務をいいます。自分の財産の管理以上に注意をもって信託事務を行う必要があります。

忠実義務
 信託法や信託契約上の信託目的に従って、専ら忠実に受益者の利益にかなうよう信託事務を処理することが必要です。

分別管理義務
 受託者個人の財産と信託財産とを区別して管理しなければなりません。不動産であれば、登記手続きにより分別を明確にすることになります。預貯金が信託財産であれば、受託者個人の預貯金と信託財産とが混じり合わないよう、分別する必要があります。

自己執行義務
 受託者は原則的に自ら信託事務を執行することが必要になります。しかし、実務上は、信託契約書の中に信託事務を第三者へ委託できる旨の条項を入れることで、この義務を回避する方法があります。

公平義務
 
受益者が2人以上いる場合、受託者はその2名以上の受益者に対し公平に信託事務を行う義務があります。

帳簿の作成等、報告及び保存の義務
 
受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、信託財産に係る帳簿その他の書類を作成しなければなりません。また、受託者は、毎年一回、一定の時期に、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類も作成する必要があります。それらの書類の保存義務や閲覧請求があったときの開示義務もあります。

損失てん補責任  
 受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失や変更が生じた場合、損失てん補の責任や現状回復の義務を負うことがあります。

 

 

信託契約期間中に受託者が死亡した場合はどうするか?

 信託契約期間中に受託者が死亡した場合であっても、信託契約はそれだけでは終了せず、そのまま契約の効力を維持します。受託者死亡の場合、受託者の権利義務はその受託者の相続人には相続されません。信託契約の設計の仕方にもよりますが、受託者が死亡した場合の2次的受託者を信託契約上指定している場合は、その2次的受託者が信託事務を行うことになります。

 

 もしも、上記のような2次的受託者の定めがない場合は、委託者及び受益者が新たな受託者を探す必要が出てきます。場合によっては、裁判所に受託者の選任申し立てを行うというケースもあります。受託者死亡後、新受託者が選任できず、死亡から1年間を経過すると、信託契約は強制的に終了ということになります。

 

 なお、人間であれば死亡という事実を避けて通ることができませんが、法律による人(法人)であれば、死亡ということを観念できません。法人であればその法人が受託者として、信託事務を長い年月に渡って行うことも現実的に可能です。信託契約は長い年月に渡ってその効力を維持する設計も可能なため、受託者を法人にすると上記のような個人が死亡した際の様々な問題に対処することもできることになります。

 

 

受託者の人数や報酬、解任・辞任など

 信託法において、受託者の人数制限については触れられておらず、2人以上の者が受託者になることも可能です。ただし、複数の受託者がいると受託者同士の意見調整が必要になったり、信託事務の執行が円滑に進まなくなる恐れもあるため、受託者は多ければ多いほどよいということにはなりません。複数受託者の選任をしたい方は、委託者の家族の他に専門家を受託者に交えるなどして、利害関係のない者同士で信託事務を処理する体制にするなど工夫が必要になるでしょう。

 

 受託者が委託者の家族であっても、信託契約での合意によって受託者に信託報酬を与えることができます。これは労務の対価として受け取る報酬と言えます。民事信託の場合、業として信託事務を処理している場合でないので、報酬をもらっても問題がないわけです。

 

 受託者側からの意思により、信託契約の受託者の地位から降りたい(辞任)場合は、委託者と受益者の同意が必要となってきます。原則的には受託者の一方的な意思により受託者の地位から退くことはできませんが、やむを得ない事由がある場合についても、裁判所の許可をもらって受託者を辞めることもできます。この場合、新受託者の選任ももちろん必要になってきます。

 

 上記とは反対に、委託者や受益者側から受託者を辞めさせることを解任といいます。この解任を行うには、委託者と受益者の合意により解任することができます。また、裁判所の許可をもらって解任手続きを行うこともできます。解任した場合は、受託者が不在となるため、委託者及び受益者(委託者不在の場合は、受益者のみ)において新受託者を選任することができます。

 

信託契約における受益者について

 受益者とは、信託契約において信託財産より利益を受ける者のことをいいます。受益者は信託契約上の委託者によって指定されます。(受益者の受諾の意思表示すら不要です。)受益者は信託契約の成立により受益権を取得し、この受益権は譲渡することも可能です。

 

 受益者はその受益権に基づき、受託者に対し適正に信託事務を処理するよう監督する権限もあり、場合によっては、受託者の解任も行うことができます。

 

 受益者になることができるのは、委託者個人であってもよい(委託者=受益者。これを自益信託といいます。)ですし、法人でもよいです。また、受益者を複数に設定することもできます。(受益権の準共有)その他、権利能力なき社団(例えば、町内会など)や胎児、将来生まれるかもしれない者でもよいのです。異時的に受益者を定めることもできます。(受益者連続型の場合。例えば、最初は夫が受益者、夫が死んだらその妻が受益者になるケース

 

 信託契約上、受益者が死亡しても信託契約終了の定めがない場合は、受益者が有する受益権は、受益者の相続人に相続され、その権利を遺産分割によって承継した者が新受益者となります。受益者が遺言を遺していた場合は、その遺言で受益権の承継先(者)が定まっていれば、その者が新受益者となります。なお、信託契約において、2次的な受益者が定められている場合は、その2次的受益者が受益権を承継します。(受益者連続型)

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