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民事信託(家族信託)とは

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家族信託のアウトライン

 テレビや新聞、ニュースなどで「家族信託」が特集されることが多くなってきました。今後、家族信託はより普及されていくと思われますが、この家族信託という法制度(信託法に規定)は一般の方にはまだまだ馴染めない面もあると思いますので、このページでは大まかなアウトラインの説明のみをして、家族信託の仕組みを理解していただきたいと思います。

 

家族信託は財産管理方法の新手法

家族信託では、主に次のような登場人物が出てきます。

家族信託の仕組図

 これまでの財産管理と言えば、親が子に財産の管理を依頼し、子は親から指示された財産管理事務を行っていく中で、その財産管理事務の目的物の所有権はあくまで親に残ったままでした。(親子間で目的物の売買や贈与などをした場合は除く)この時生じる問題としては、いくら子が有する財産管理事務の権限の範囲に、その目的物の処分権限や財産の資産運用権限が含まれていたときであっても、実際の取引の場面では、本人(親)が所有権を有するということで、子がその権限を使って目的物を処分したり、資産運用したりするのが現実難しいことが多いのです。

 

 そこで、この問題に対処するため信託法による財産管理手法を用いることになります。信託法による財産管理の考え方は、財産管理を託す目的物(信託財産)のオーナー(委託者)が、財産管理を託される者(受託者)に目的物の所有権を形式的に譲渡し、その委託者の指示によって、その目的物から得られる利益者(受益者)のために財産を管理・運用・処分等してくださいという関係性が構築されます。財産を託された者(受託者)は形式的に所有権を持っていますが、あくまで形式的なので、真のオーナーは実質的にその目的物から得られる利益者(受益者)ということになります。

 

 この信託法による財産管理手法を使うと、従来の財産管理ではできなかった、目的物を託された者(受託者)による財産の処分や資産の運用も可能となります。取引の相手方は形式的であれ、所有権を有する相手方を取引の相手方にできるため、契約トラブルのリスクを回避できます。

 

 

遺言書では実現できない財産承継の新手法

 前述は財産管理の新手法としての解説でしたが、家族信託ではもう一つ重要な機能があります。それは、遺言に代わる財産承継の新手法としての機能です。

 

 遺言書では遺言者死亡後の財産の承継先を細かく指定ができ、遺言書がない場合における遺産分割協議を不要にして、無用な争いを防ぐ機能があります。しかし、遺言書でもできないことがあります。それは2代先、3代先の財産承継先の指定です。例えば、遺言書で「不動産の全ては長男に相続させる。長男がそれら不動産を相続した後、長男が将来死亡した場合は、それらの不動産は長男の子Aに相続させる」というような、2代先、3代先までの指定です。

 

 遺言書ではできなかった財産承継の紐づけが家族信託では可能となっています。

 

 これは、財産管理を託す不動産などの目的物のオーナー(委託者)が、形式的な所有権を受託者に移し、目的物から得られる利益者(受益者)が実質的なオーナーになる関係を信託によって構築できることから、信託の仕組みをうまく使うことによって、その受益者を複数名にしたり、死亡などによる事由の発生順にその利益者の入れ替えを自由に設定できるからです。家族信託はつまり、遺言の代用となり、なおかつ、遠い将来の承継先指定も細かく指定できる機能を持っていることになります。

 

家族信託の遺言代用機能

 

 

民事信託(家族信託)と商事信託の違い

 民事信託(家族信託)とは、前述のとおり、一例としては親が子に自らの財産を託し、託された子はその親の利益になるように親のために財産の管理を行う仕組みをいいます。親族間や営利追及目的がない知人同士で行う信託のことを民事信託といい、信託会社や信託銀行などの託される側が営利を目的として行う信託を商事信託といいます。民事信託は家族間での契約が多いことから、家族間での信託を家族信託と言ったりもします。

 

 親が認知症になった場合の資産の凍結や成年後見制度の発動に伴う各種問題を解決できるのがこの民事信託です。財産凍結を防ぎ、資産の有効活用(委任契約や後見制度の代用、不動産の売却・管理・投資運用、預貯金等の金融資産の運用・管理)、相続問題の事前対策(遺言の代用、長期的な相続税対策の処理、遺言では解決できない2次相続、3次相続時の資産承継先指定、相続人間での共有不動産としての有効的な活用)として大変便利な制度ですので、是非とも民事信託について学んでいただき、民事信託の利用を考えている方は、私たち専門家にご相談してみてもよいかと思います。

 

 

3種類の信託行為について

 信託には3種類の信託行為(法律行為)があります。信託行為とは、信託を設定するための法律行為のこといいます。以下、その3種類の行為類型のご説明をします。

 

◆信託契約(契約による信託)

 委託者と受託者との間の契約により信託を設定することを信託契約といいます。3種類の信託行為の中で一番使われる類型と言えます。契約ですので、通常は信託契約書を作成して設定します。信託契約書は私文書(公務員が関与しない書面)でもよいのですが、公正証書にすることで契約自体の信用面、証拠面で私文書よりもより強固な書面となります。

 

◆遺言による信託

 信託契約とは異なり、遺言による信託は単独行為ですので、一人で行うことができます。この遺言による信託は民法の遺贈に関する規定が類推適用され、委託者の死亡により効力が発生することになります。なお、紛らわしいのですが、信託銀行で販売している遺言信託は、信託法に基づく遺言信託とは異なり、あくまで信託銀行において遺言書の作成や保管、遺言執行を行うというサービスを指しています。

 

◆自己信託(信託宣言)

 自己信託とは、委託者と受託者を同一人が兼ねて設定する信託行為をいいます。自己信託も遺言による信託と同じで委託者の単独行為となります。(一人で行うことができる。)委託者が自分の財産を自分で管理し、その利益を委託者以外の方に及ぼすことが一例として挙げられます。自己信託は、公正証書その他の書面または電磁的記録によって意思表示を行う必要があります。なお、自己信託と似たものとして、自益信託がありますが、自益信託は委託者と受益者が同じ場合の信託をいいます。

 

 

民事信託は画期的な法制度といえる(メリット面)

 判断能力の程度が低下した場合の財産管理の制度といえば、成年後見制度がありますが、民事信託は委託者が元気なうちに利用することで、委託者の判断能力がその後に低下したとしても、成年後見制度ではできなかった様々な機能をもたせることが可能となります。

 

 たとえば、成年後見制度では、本人の判断能力が低下し本人に成年後見人がついた場合、本人の財産管理は成年後見人が代理人となって行うことになりますが、いくら成年後見人という立場があっても、本人の不動産を売却したり、本人の資産を運用したりすることは制限がかかります。家庭裁判所が成年後見人の監督的立場を担うことになり、本人の不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要になりますし、資産の運用などを行うことは原則的に認められません(本人の金銭をつかって株式投資したり、不動産を活用した相続税対策などもできません。)

 

 これとは異なり、民事信託では委託者が元気なうちに信託を組むことにより、上記のような本人の資産活用・運用面での制限を排除することができます。受託者において、信託契約で依頼された信託事務を行う権限があり、これは委託者本人が後に判断能力の低下、死亡などの事由があっても信託契約の中で信託期間などを定めておけば、継続して信託の効果を発揮させることができます。

 

 また、信託には独自的な機能があります。たとえば、信託を組むと、その信託された財産(信託財産といいます。)は形式的に受託者の所有物となりますが、あくまで信託財産は受託者の固有財産(受託者のもともとの財産)とは異なるものですので、仮に受託者が破産をしたとしても信託財産は受託者の破産とは関係がなく、債権者に取られてしまうことがありません。

 

 その他、信託には委託者が受益権の発生、変更、消滅などを自由に定めることができたり(例えば、受益者を異なる人物に連続的に設定し、民法では実現のできなかった2代先・3代先の財産の承継者の指定までできることが一例として挙げれます。)、推定相続人同士による遺言者への遺言書き換え合戦(圧力)を実質的に防いだりする機能もあります。(遺言はいつでも遺言者が撤回できる。信託は一度設定すると、信託財産の所有権が形式的に受託者に移るので、遺言のような撤回リスクを減らすことができる。)

 

 

民事信託でのデメリット面について

 民事信託は画期的な法制度であると言えますが、何でもかんでも有用に使えるということでもありません。たとえば、成年後見制度では本人の成年後見人になると、成年後見人は本人の身上監護権(たとえば、本人のために介護施設との間で施設の入所契約をしたり、介護保険サービスの利用行為などの権限)を付与されます。しかし、民事信託では身上監護権という権利はありません。身上監護権を使って介護保険サービスの利用などを検討すべき状況であれば、民事信託(財産管理機能)と成年後見制度の併用も考える必要が出てきます。

 

 また、信託の設定の場面では、受託者の監督者は受益者や信託監督人(信託契約の際に委託者、受託者とは独立したもので、受託者の財産管理業務の監視役となるもの)となりますが、信託監督人がなく、受益者のみが監督的立場を有している状況において、受益者自身にその監督するための能力が欠如しているケース(受益者代理人がいない場合を想定)では、成年後見制度のような家庭裁判所による監督的機能を持たせることができないこともデメリットと言えます。信託監督人を選任するかどうかも自由なので、信託と成年後見制度を比較した際に、どちらかと言えば成年後見制度のほうがより監督的機能が強いと言えると思われます。

 

 民事信託は税務面でも注意点が必要で、専門家のアドバイスをもとに信託を組む必要性が高いこともデメリットの一つかもしれません。信託契約の仕方によっては、思いがけない税金(例えば贈与税)が発生するケースもあります。法律面と税務面の両方がある程度頭に入っていないと使い勝手はよくないものとなってしまいます。

 

 

信託契約における信託期間について

 信託契約においては、契約の中で自由に信託期間を定めることができます。信託契約のスタートは、委託者と受託者との間の信託契約締結時となります。(遺言による信託では、遺言者の死亡時に信託がスタートとなります。ただし、受託者がその遺言による信託を拒否した場合は信託はスタートしません。)信託がスタートすると、受託者は委託者の意思を尊重し、適切な財産管理を行う義務を生じることになります。

 

 前述のとおり、信託契約においては自由に信託期間を定めることができますので、委託者が亡くなった後においても、信託の契約の効力を継続させることができます。例えば、当初に指定された委託者兼受益者が死亡した後も、次の受益者を契約上指定しておき、その2次的な受益者が死亡して初めて信託を終了させるということも可能になります。

 

 上記のような合意による信託期間の設定の他、信託の終了事由は信託法に規定があり、信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったときや、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき、受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき、信託財産についての破産手続開始の決定があったときなども信託の終了事由となります。

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