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障害者の子に不動産を生前贈与するなら特定贈与信託の活用を

家族に障害者がいるため、自分に万が一のことがあったときに備えて財産を残しておこうと考えるご家庭は多くあるといえます。相続税対策を考慮したとき、不動産を生前贈与する方法も選択肢に挙がるかもしれません。このような場合、受贈者が障害者であることで受けられる税制面の特例などはあるのでしょうか

 

 

【この記事の要点】

  • 障害を持つ家族に生前贈与する場合は非課税枠を活用する
  • 非課税枠活用のためには特定贈与信託の利用が必須
  • 対象となる障害者の区分
  • 特定贈与信託の手続きの流れ
  • 不動産の生前贈与に伴うその他の税金

 

ここでは、障害者の家族に不動産を生前贈与するときに知っておきたい特定贈与信託について説明します。法律の定めや財産状況の報告などに関する理解が求められるため、できるだけ専門家への相談を前提として利用を検討することをお勧めします。

 

障害者を対象とした特定贈与信託のしくみ

まだ元気なうちに、自分名義の財産を子や孫などに譲るしくみを生前贈与といい、財産を譲る方を贈与者、受け取る方を受贈者とよびます。生前贈与に係る税金の税率は相続税よりも高いといわれていますが、非課税枠や優遇措置を上手に利用することで節税効果を期待できるとして、多くの人が生前贈与を行っているのです。

 

では、生前贈与で活用できる非課税枠や優遇措置にはどのようなものがあるのでしょうか。よく知られているものとして3つの節税効果を挙げてみましょう。

 

【暦年贈与による非課税枠の活用】

そのとしの1月1日から12月31日までの間に行われた贈与について、受贈者1人あたり年11万円までは贈与税が非課税になります。

 

【相続時精算課税制度の活用】

財産が生前贈与された際に最大2,500万円までの非課税枠を適用することができます。しかし、贈与者が死亡したときには、生前贈与された財産を相続時に相続財産に含めて相続税を納税しなければなりません。あくまでも生前贈与時の一時的な非課税枠の適用となります。

 

【障害者への贈与に対する非課税枠の活用】

たとえば子が障害を持っており、この子に財産を贈与する場合、最大6,000万円まで非課税とされます(子が特別障害者である場合は6,000万円まで、特定障害者の場合は3,000万円まで)。この非課税枠を活用するためには、贈与財産を信託会社などに信託し障害者を受益者とする契約を締結しなければなりません。これを特定贈与信託といいます。

 

特定贈与信託のしくみ

特定の障害者を受益者とする「特定障害者扶養信託契約」を締結することで、障害を持つ人に定期的な金銭給付を行うことが可能になります

 

特別障害者とは(非課税額最大6,000万円)

  1. 重度の知的障害が認められる人
  2. 1級の精神障害者保健福祉手帳を持つ人
  3. 1級または2級の身体障害者手帳を持つ人
  4. 戦傷病者手帳の特別項症から第3項症までの人
  5. 原子爆弾被爆者として厚生労働大臣による認定を受けている人
  6. その年の12月31日時点ですでに6ヶ月以上にわたり寝たきりであり複雑な介護を必要とする人
  7. 満65歳以上の人で1または3に準ずるものとして自治体などから認定を受けている人

 

特定障害者とは(非課税額最大3,000万円)

  1. 知的障害が認められる人
  2. 精神障害者保健福祉手帳を持つ人
  3. 満65歳以上の人で1に準ずるものとして自治体などから認定を受けている人

※特別障害者以外の特定障害者であること

 

信託できる財産の種類

特定障害者扶養信託契約は、障害を持つ受益者に対して定期的な金銭給付を行うものですので、信託できる財産は以下に該当するものとされています。

  1. 金銭
  2. 有価証券
  3. 金銭債権
  4. 立木及び立木の生立する土地
  5. 継続的な収入を得て他人に使用させる不動産(賃貸不動産)
  6. 受益者である特定障害者が住む自宅不動産

 

特定贈与信託契約の流れ

これら特別障害者・特定障害者に係る非課税枠の適用を受けるためには、特定贈与信託契約に際し、信託会社を経由して管轄の税務署長に「障害者非課税信託申告書」を提出する必要があります。ここでは、特定贈与信託契約締結の流れを追っていきましょう。

 

特定贈与信託契約の締結

委託者:特定障害者の親など(親族)

受託者:信託銀行など

受益者:特定障害者

 

委託者・受託者・受益者を定めて特定障害者扶養信託契約を結びます。たとえば父親名義の賃貸不動産を受益者である障害を持つ子に譲りたい場合、信託銀行などが受託者として間に入り、賃貸不動産の管理を行って、そこから得た資金を受益者に定期給付していくことになります。

 

自宅不動産を受益者である障害を持つ子に譲りたい場合、収益は生じないため、信託銀行によっては取り扱いを行っていないケースもあるようです。取り扱ってくれる場合も、他の金銭や有価証券などもあわせて信託財産とする必要があるといわれています。

 

障害者非課税信託申告書の提出

特定贈与信託契約に際し、受託者である信託会社などを介して「障害者非課税信託申告書」を税務署に提出することになります。これは、特定障害者に係る贈与税非課税特例の適用を受けるために必要な手続きであり、実際に財産が信託される日までに管轄の税務署長宛に書類を提出しなければなりません。

 

添付書類として、次のものを合わせて提出します。

 

特定贈与信託の注意点

特定贈与信託を利用するうえで理解しておくべき注意点について説明します。

 

金利変動などによる元本割れのリスク

どのような金融商品を選択するかによって変わりますが、信託銀行に財産の管理・運用を任せる以上は金利変動などを原因とする元本割れリスクが存在することを理解しておきましょう。障害者である子などの生活を守ることを目的として特定贈与信託を利用しますので、運用リスクについては慎重に判断すべきものといえます。

 

信託期間の変更不可・契約解除など不可

信託契約では、受贈者である障害者本人が亡くなるまでの間は有効とされますので、信託期間を途中で変更したり契約解除したりすることはできません。特定贈与信託は、贈与税が非課税となる特別なしくみを持ちますので、その契約内容には一定程度の縛りがあることを知っておきましょう。

 

その他のリスク

このほかにも、以下のようなリスクがありますので、すべての条件を承諾したうえで特定贈与信託を利用することが大切です。

 

 

どのような財産を信託するか、どの金融機関が扱うどういった信託商品を利用するかによって、手数料も変わってきますし、障害者の子に対する財産給付が希望通りの形で実現するかどうかも変わる可能性があります。あらかじめ金融機関に詳細を確認し、納得のうえで特定贈与信託を利用するようにしましょう。

 

贈与税のほかにかかる税金

不動産を生前贈与することにより贈与税が発生しますが、非課税枠を使うことができれば負担は大幅に軽減できます。しかし、不動産に係る税金はほかにも存在しますので、全体像を把握しておきましょう。

 

不動産取得税

たとえば、親名義の不動産を障害者の子に売却するという形を採った場合、土地建物を購入した障害者の子は不動産取得税を納税しなければなりません。税額は【不動産評価額×4%】で算出しますが、2024年4月現在、総務省ホームページによれば、土地と住宅については計減税率として3%が適用されています。

 

登録免許税

不動産を取得した場合、所有権移転登記を行い登録免許税を納める必要があります税額は、売買および贈与いずれの場合についても【不動産評価額×2%】で算出します。ただし、売買に関しては「令和8年3月31日までの間に登記する場合は1.5%」に軽減されるようです

 

譲渡所得税

不動産の贈与を行った場合、贈与された側に贈与税が課税されますが、譲渡(金銭授受を伴う)を行った場合は譲渡した側に譲渡取得税が課税されます税額は【収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額】で算出します。

※特別控除額はケースによって異なりますが、自宅を譲渡した場合は3,000万円とされています。

 

まとめ

障害者の家族の将来に向けた生前贈与を行う場合、特定贈与信託による非課税枠の適用を受けることも検討してみましょう。ただし、特定贈与信託を正しく利用するためには、金融商品としての性質を理解し、法的要件を遵守し、各家庭に合わせた新宅設計を行う必要があります。法律面および財産管理面での専門知識も必要になりますので、できるだけ専門家へ事前相談を行うことをお勧めします

 

当行政書士事務所では、生前贈与や家族信託を含む生前対策に注力しており、札幌圏ではトップクラスのご依頼件数を誇っています。さまざまな生前贈与の形を知る立場として、ご相談者様に合った助言を行い、最適な方法をご提案いたします。

 

また、不動産に関わることについては司法書士の協力が、相続税に関わることについては税理士の協力が欠かせません。当行政書士事務所ではこれら専門家が力を合わせてトータルサポートさせていただきますので、生前贈与や信託などについてご不安・ご心配などがありましたら、ぜひ無料相談をお気軽にご利用ください。

 

 

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