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障害者の子を守るための任意後見・法定後見のしくみ

障害を持つ子が未成年のうちは、親権者である親が子のために財産管理を行ったり身の回りの世話を行ったりすることができます。しかし、子が成年に達した後の財産管理や身上監護は誰がどのように行うのでしょうか。障害者の子を持つ親にとって大変深刻な問題だといえます。

 

【今日の要点】

  • 任意後見契約は本人による意思表示・理解・法律行為が明確に可能であることが必要
  • 親亡きあとの障害者の子の生活を保護するには成年後見制度の利用も検討
  • 成年後見制度は「後見」「保佐」「補助」の3種類に分類
  • 死後事務委任契約や家族信託契約など他の生前対策との組み合わせも大事

 

ここでは、障害者の子を守るための任意後見・法定後見について説明していきます。任意後見制度と法定後見制度には、それぞれメリットとデメリットがありますので、我が子の将来を守るためにもよく注意して選択することが大切です。

 

障害者の子を任意後見契約で守る方法

任意後見契約を締結することにより、任意後見受任者は委任者の財産管理と身上監護に係る業務を行うことができます。具体的には次のような業務が挙げられます。

 

任意後見契約を締結するためには、「本人がはっきりと意思表示できること」「契約内容を理解できること」など、障害者本人について契約行為に不可欠な機能が衰えていないことが前提となっています。また、意思表示が可能である場合でも、自筆署名ができない状態である場合は任意後見契約の締結ができません。

 

障害者の子が未成年である間は、親として子の生活をサポートしていくことができるでしょう。しかし、親の死亡後や子が成年に達して以後のサポート体制をどう準備すればいいか、一番の悩みどころになると想定されます。

 

このような場合、「子が意思能力を有している場合」「子が意思能力を有していない場合」「親を委任者とした任意後見契約を締結する場合」に分けて対策を考えることができます。

 

障害者の子が意思能力を有している場合

障害者の子が意思能力を有している場合は、子を委任者とした任意後見契約を締結することができます。ただし、子が未成年間は親が財産を管理したり身の回りの世話をしたりすることができるため、子が成年に達したのを機に任意後見契約を行うことを検討してもいいでしょう。

 

子を委任者とした任意後見契約

成年に達した子は自らを委任者、信頼できる第三者を受任者として任意後見契約を締結することができます。子が未成年であっても、親権者が同意すれば子を委任者とした任意後見契約を結ぶことが可能です。

 

親を委任者とした任意後見契約

親が自らを委任者とした任意後見契約を結んでおく方法もあります。この場合、契約内容に「委任者の死後または判断能力や身体能力が低下したときに、任意後見受任者が委任者である親の財産から障害者の子のために生活費などを支出すること」などと定めておくことで、子の生活を守ることができるでしょう。

 

障害者の子が意思能力を有していない場合

障害者の子が意思能力を有していない場合は、子は自らを委任者とした任意後見契約を結ぶことができません。この場合、現実的な選択肢として法定後見制度を利用して子を守ることを検討しましょう。

 

家族信託契約でも子の身上監護は保障されない

任意後見契約以外の選択肢として家族信託契約を利用した場合はどうでしょうか。親を委託者・障害者の子を受益者として、親の財産から障害者の子の生活費などをまかなうことは可能です。ただし、家族信託契約は委託者の財産管理などを目的としたしくみであり身上監護を保障するものではないため、家族信託契約のみで障害者の子の生活環境を保護するには不十分かもしれません。

 

後見監督人が選任されるケースも

また、場合により、家庭裁判所は後見監督人を合わせて選任することもあります。もともと後見監督人は、後見人による不正行為・不適切な行為が起こらないよう監督する役割を負っています。

 

一方、親族が後見人になった場合、不正もしていないのに監督人が就くことについて不満を感じることも多いようですが、監督人の選任はあくまでも本人の財産管理・身上監護を目的とした支援体制づくりを目指したものですので、感情的になりすぎることなく、後見人と後見監督人が協力し合って本人を支えるという姿勢が求められるでしょう。

 

障害者の子を法定後見制度で守る方法

すでに述べた通り、障害者の子の意思能力が認められない場合は、子を委任者とした任意後見契約を結ぶことはできません。同時に、親もいずれは年を取りますので、身体の自由が効かなくなったり自らの意思能力が低下してしまったりすることも考えられます。

 

このような現実を踏まえたとき、意思能力が認められない障害者の子を保護するための手段として、法定後見制度(成年後見制度)の利用について具体的に想定しておくことも大切になってくるでしょう。

 

法定後見制度では、本人の障害などの程度に応じて、後見・保佐・補助のいずれかのサポートにより本人の生活を法律行為という側面から保護し支援します。

 

法定後見制度「後見」

精神上の障害を原因として判断能力が欠けていると認められた人について、「後見」という形で本人を保護・支援します。

 

家庭裁判所が選任した成年後見人は、生活上必要な契約行為に同意を与えたり不利益な法律行為を取り消したりすることができます。成年後見人に付与される代理権は、財産に関するすべての法律行為ですので、本人に意思能力がない場合でも、不当あるいは不利益な契約行為により生活が脅かされることがなくなります。

 

法定後見制度「保佐」

精神上の障害を原因として判断能力が著しく不十分であると認められた人について、「保佐」という形で本人を保護・支援します。民法に基づき、以下の行為について保佐人の同意が必要になります。もし同意なくこれらの行為にいたった場合は、取消が可能です。

 

法定後見制度「補助」

精神上の障害は軽度であるが判断能力は不十分であると認められた人について、「補助」という形で本人を保護・支援します。民法に基づき、以下の行為について補助人の同意が必要になります。もし同意なくこれらの行為にいたった場合は、取消が可能です。

 

成年後見人はどうやって選ばれるか

成年後見人は家庭裁判所により選任されますが、誰でも選ばれるわけではありません。一般的には、本人の状態や必要な支援の程度などに応じ、以下の条件に該当する人物が選任されています

なお、申立人が特定の人物を成年後見人に推薦したとしても、その希望通りの選任が行われるとは限りませんので注意しましょう

 

成年後見人の選任手続きの流れ

法律にしたがい、本人または四親等以内の親族が申立人となります。

 

必要書類

主に必要とされる書類として以下を挙げることができます。実際には、本人の財産状況によって提出すべき書類は変わりますので、十分確認のうえ準備を行いましょう。

 

家庭裁判所へ書類提出

本人の住所地を管轄する法務局に対し、申立人が書類を提出して申立てを行います。

 

家庭裁判所調査官による面談

家庭裁判所調査官が本人と面談を行い、本人の状態や置かれている状況などを確認します。

 

医師による本人の精神状態鑑定

調査官による面談でも本人の判断能力を確認しますが、別途、裁判所から依頼を受けた医師による精神状態の鑑定が行われます(明らかに鑑定不要と判断された場合を除く)。

 

後見人の選任

提出された書類や面談、精神状態の鑑定、成年後見人候補者と本人との利害関係などを考慮したうえで、家庭裁判所が成年後見人を選任します。必要に応じ、成年後見監督人が選任されるケースもあります。

 

まとめ

障害者の子の生活環境を守る方法として、任意後見契約や成年後見制度の利用が考えられます。それぞれのしくみの特徴をよく理解し、どのように障害者の子の生活を支えることができるか慎重に検討することが必要です。

 

また、親として最も心配なのは、「自分たちの死後、障害者の子はどうやって生きていけばいいのか」という点に尽きますので、適切な方法を組み合わせて子の将来に備えることがとても大切です。

 

※死亡届については故人の親族・同居者・家主・地主・家屋管理人・土地管理人等・後見人・保佐人・補助人・任意後見人・任意後見受任者が手続き可能(※法務省ホームページ参照)

 

任意後見契約や成年後見制度の利用、その他の生前対策との組み合わせなど、各仕組み・制度の適切な活用方法はケースにより異なってきます。当行政書士事務所は札幌県内でもトップクラスの受任経験がありますので、さまざまなシチュエーションに合わせた最適な方法をご提案させていただきます無料相談もご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

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