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障害者の子を持つ家庭で家族信託を利用するメリット
障害のある子を持つ親は、自分自身が認知症になったり亡くなったりした後、子の生活がどうなってしまうのか心配されていることでしょう。そのようなときに活用したいのが、親の財産を障害のある子に遺しその生活をサポートできる家族信託です。ここでは、障害者の子を持つ家庭で家族信託を利用するメリットについて説明していきます。
障害者の子を受益者とする家族信託契約
家族信託を利用するメリットの1つは、自分が認知症などになり財産管理ができなくなった場合でも、自分自身の生活環境を守ることができる点にあります。一方、障害を持つ子がいる場合は、受益者を子に設定し、親に何かあっても子の生活を保護することが可能です。
親が認知症になってしまった場合、親自身の生活にも介助が必要になり子の監護を正しく行うことができなくなることが考えられます。万が一、親が先に亡くなってしまった場合は、障害のある子が1人残されることになり、その生活環境を守ることができません。
このような場合に備えて、子の生活を守るために家族信託契約を成立させておくことで、先々の不安要素を軽減できるでしょう。
障害者の子を含めた家族信託のあり方
家族信託契約では、財産を託す委託者・財産管理や運用を託される受託者・財産およびその運用利益を得る受益者の3名を決定し、三者間でどのように財産を維持管理していくかを定めていきます。障害を持つ子がいて、その子の将来の監護状況を少しでも安定させたいと考える場合は、受益者を子に設定することで子が経済的に困る可能性は低くなります。
たとえば、委託者を親・受託者を子の兄弟姉妹や専門家などの第三者・受益者を障害のある子とした場合、親が認知症になったり亡くなったりした場合でも、受託者が正しく親の財産管理を行いますから、障害を持つ子は今まで通りの生活を送ることができると考えられます。
障害者の子の保護目的で家族信託を利用するメリット
障害があるためにその生活に補助が必要な子がいる場合は、家族信託を利用することで次のようなメリットを得ることができます。
親の認知症リスクに備えることができる
親である自分が認知症になり判断能力が低下してしまった場合、自分名義の銀行口座が凍結されたり資産売却ができなくなったりしてしまいます。そのような場合に備え、元気なうちに家族信託契約を成立させておけば、自分自身に何かあったとしても、障害を持つ子に対する経済的なサポートは継続するのでとても安心です。
受託者指定による途切れないサポートが可能である
家族信託では、契約事項として、仮に受託者が亡くなった場合の第2受託者や第3受託者まで指定しておくことができます。そうすることにより、長期にわたり障害を持つ子の人生におけるサポートが叶う点も大きなメリットの1つだといえるでしょう。
ただし、家族信託では、信託契約成立時点から30年経過後に受託者となった者が亡くなった場合、信託契約自体が終了することになっているため注意する必要があります。この仕組みは30年ルールと呼ばれており、長期に渡る子のサポートを検討するうえで非常に重要な要素となってくるため、信託契約の開始時期や受託者の選択などについては慎重に検討することが求められます。
二次相続先などを指定することができる
家族信託は、二次相続先や三次相続先まで指定することができます。何も対策せずにいた場合、障害を持つ子が独り身のまま亡くなると財産承継先が失われ、最終的に財産を国庫に帰属させるほかなくなることが想定されます。家族信託契約で二次相続先や三次相続先を指定しておけば、そのような事態を回避することができるでしょう。
障害者の子の身上監護は家族信託でできないデメリット
すでに述べた通り、障害を持つ子の将来を守る手段として家族信託は非常に有効ですが、メリットばかりではなくデメリットも存在します。それは、家族信託があくまでも財産管理のための手段であり、受益者の身上監護を保障するものではないところにあります。
身上監護とは、十分な判断能力を持たない本人に代わり、本人の生活を維持するための仕事および療養看護に関する契約等(裁判所Q&Aより)のことを意味します。住居に関する契約や入退院手続きなど、健康的な環境の元で生活していくうえで必要な法律行為を行うものです。
身上監護は信託契約ではカバーできない部分になりますので、障害を持つ子と年齢が近い兄弟姉妹などを受託者に指定しておき、財産管理を任せながら障害を持つ子の生活補助を依頼することも検討する必要があります。
ただし、1人の受託者に対する依頼事項が責任重大すぎたり件数が多すぎたりすることは、受託者の負担を大きくしますし、不公平感の原因にもなりかねませんので、受託者を専門家に依頼しつつ身の回りの世話は兄弟姉妹に依頼するなど、関係者が納得する形を模索することが大切です。
まとめ
親のサポートを必要とする子にとって、親の死は自らの生活環境や経済的背景が激変する可能性を含んでいます。親の死と同時に経済的なサポートが途切れてしまうことは望ましくありませんので、親としては元気なうちに家族信託をどう活用すべきか準備を始めることも大切です。
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