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自宅を担保に借入?リバースモーゲージの仕組みとは
自宅を担保にして資金を借り入れ、これを生活費として役立てる一方、借入人が亡くなった場合は担保である自宅を処分して借入金を返済する仕組みをリバースモーゲージといいます。ここでは、リバースモーゲージの仕組みやメリット・デメリット、注意点などについて説明していきます。
リバースモーゲージとリースバックの違い
自宅不動産を活用しまとまった資金を得る方法として、リバースモーゲージとリースバックを挙げることができます。いずれも資金調達方法として重宝されていますが、リバースモーゲージとリースバックでは仕組みや特徴に違いがありますので確認しておきましょう。
リバースモーゲージ とは
自宅に住み続けながら、自宅を担保に生活資金を借り入れることができるのがリバースモーゲージの仕組みです。各種金融機関や公的機関が取り扱うサービスで、利用対象年齢が55歳以上と高めに設定されている点も特徴的でしょう。
【対象年齢】
55歳以上、60歳以上など高い年齢層に向けたサービス
【融資のタイプ】
- 年金型:定期的に一定金額の融資を受けられる
- 一括融資型:限度額を一括で借りることができる
- 自由融資型:限度額の範囲内で自由に借入れできる
リースバックとは
リースバックの仕組みを利用すれば、自宅をリースバック取扱業者に売却した後も家賃を払って自宅に住み続けることができ、売却した金銭を一括で受け取ることができます。
【対象年齢】制限なし
【売却金額の受取】一括
※定期借家契約のため期間の制限がある点、自宅の所有権が業者に移る点に注意
リバースモーゲージの手続き
リバースモーゲージにはリコース型とノンリコース型の2種類があり、それぞれ異なる特徴がありますので理解しておきましょう。いずれかのタイプを選択したうえで申込み手続きに進みます。
【リコース型】
借入人が亡くなった場合、担保物件は売却され、さらに残債がある場合は相続人がこれを負担する
【ノンリコース型】
リコース型に比べ金利が高いものの、借入人が亡くなったあとで相続人が残債を負担する必要がない
住宅金融支援機構によれば、2022年度は99%の人がノンリコース型を選択しているようです。
申込み手続き
リバースモーゲージの手続きの流れについて確認していきます。
1.申込み
リバースモーゲージを扱う金融機関または公的機関に相談・申込みを行います。
2.審査
所定の審査が行われます。
※リバースモーゲージの利用には対象者制限や対象物件制限などがあるため、相談時にしっかり確認しておきましょう。
3.契約手続き
審査に通ったら契約手続きを行います。保証人は原則不要ですが、配偶者がいる場合は契約手続きに同席を求められる場合があります。
4.融資枠および担保の設定
金融機関が融資枠を定め、自宅に担保設定を行います。
5.借り入れ
融資枠の範囲内で自由に借入ができるようになります。融資枠は定期的に見直されますので、審査の結果減額となることも想定しておきましょう。
リバースモーゲージは生活保護でも利用できるか
生活保護を受けるほど困窮している場合でも、リバースモーゲージを利用することができるのでしょうか。この場合、国によるリバースモーゲージ「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」が助けになるかもしれません。
要保護世帯向け不動産担保型生活資金
北海道福祉協議会の資料を参照してみましょう。
貸付対象
- リバースモーゲージによる貸付を受けなかった場合、生活保護が必要になる世帯であること
- 土地・建物の所有者が原則として65歳以上であること
- 担保となる不動産に居住し申込者が単独で所有または同居の配偶者との共有であること
- 将来にわたり当該住居を所有し住み続けることを希望していること
- 土地・建物の評価額が500万円以上であること
- 土地・建物に賃借権や抵当権などが設定されていないこと
※北海道社会福祉協議会資料参照
貸付金額および貸付期間
- 貸付限度額:一戸建ては評価額の70%、マンションは評価額の50%
- 貸付月額:生活扶助基準額の5倍以内
- 貸付期間:貸付金と利子の合計額が貸付限度額に達するまでか、契約者の死亡時まで
- 据置期間:契約終了後3ヶ月以内
- 償還期間:据置期間終了までに一括償還
※居住用不動産に根抵当権を設定
※北海道社会福祉協議会資料より抜粋
留意事項
- まとまった資金を一括で借りるものではありません。
- 貸付期間中は生活保護世帯ではなくなるため、医療費・健康保険料・固定資産税などは自身で負担することになります。
- 自宅不動産を担保に資金を借りる制度であるため、契約者の死亡時には相続人が自宅を売却して返済を行う必要があります。このため、申込みに際しては親族の了承を得ておく必要があります。
※北海道社会福祉協議会資料参照
メリット・デメリット
リバースモーゲージは高齢者でも生活資金を借りることができるため、非常に魅力的なサービスですが、メリットとデメリットそれぞれについて理解しておくことが必要です。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージを利用するメリットについてみていきましょう。
高齢者でも融資を受けることができる
自己所有する自宅不動産があれば、契約者が高齢であっても一定の条件のもとに生活資金を借りることが可能です。契約者が亡くなった後は自宅を売却して一括返済する必要はありますが、それまでの間は自宅に住み続けることができるので、存命中は安心して生活することができるでしょう。
毎月の返済は利息のみ
元金は契約者が亡くなった後に自宅を売却して一括返済しますので、月々の返済は利息分のみで住みます。一般的な住宅ローンに比べると返済の負担が軽減される点は魅力的でしょう。
自由度の高い資金用途
政府系金融機関である住宅金融支援機構が提供するリバースモーゲージの場合は、借り入れた金銭をサービス付き高齢者住宅への入居資金などに充てることもできます。一般的な金融機関が提供するリバースモーゲージによる借入金の使途はより自由度が高く、生活資金として使うことも可能です。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージのデメリットについても理解しておきましょう。
相続人の同意が必要
リバースモーゲージは自宅を担保に金銭を借りる仕組みであるため、相続人が借入金を一括返済しない限り、自宅を相続財産として遺すことはできません。このため、あらかじめ相続人全員から、リバースモーゲージを利用することへの承諾を得ておく必要があります。契約者が亡くなり自宅を売却した場合は、相続財産から自宅不動産が除外されます。
自宅を売却しただけでは完済できない場合に備えて、リバースモーゲージの契約時にノンリコース型を選択することも検討しておくといいでしょう。
契約者が長生きするリスク
もし契約者が予想以上に長生きした場合、リバースモーゲージの融資限度額を使い切ってしまうことも考えられます。超高齢になってからの生活資金確保に備えて、リバースモーゲージだけを当てにするのではなく、別途貯金をしておくことも大変重要です。
リバースモーゲージで後悔しないための心構え
メリットとデメリットを理解することはもちろん、返済や相続に関するトラブルを防ぐことができるよう、あらかじめ備えておかなければなりません。リースバックの利用が後悔に繋がらないよう、以下に挙げるような課題をあらかじめ認識しておくことが必要です。
配偶者がいる場合のリバースモーゲージの返済
すでに述べた通り、契約者が死亡したら、自宅を売却してリバースモーゲージの借入分を完済するか、相続人が自らの資金で一括返済するか、いずれかの方法を採らなければなりません。
注意したいのが、契約者に配偶者がいる場合です。配偶者がいる場合、連帯債務型の契約になっていることも多く、契約者の死後は配偶者について借入の返済や自宅売却などの責任が発生するため、非常に大きな負担になってしまいます。
配偶者が1人でこれらの問題を抱えることは荷が重く、契約者としても本意ではありませんから、契約時にはその内容をしっかりと確認することが大切です。
リバースモーゲージと相続トラブル
相続対策としてリバースモーゲージを活用するケースもあります。たとえば以下のような条件が揃っている場合などが当てはまります。
- 主な相続財産は自宅不動産のみ
- 現金・預貯金が少ない
リバースモーゲージ返済のために自宅を売却した場合、完済後に手元に残った金銭を相続財産とすることができるため、相続人は公平に財産を分け合うことができるでしょう。相続財産が不動産と現金である場合に比べると、額面上の不公平感がなくなります。
ただし、相続人が「自宅を売却せず遺して欲しい」と望んでいることも考えられます。あらかじめ相続人にリバースモーゲージ利用の旨を相談し承諾を得ておかなければ、相続開始とともに自宅が売却されてしまうことになるため、相続人としては非常に不本意な思いをすることになりかねません。この点に十分留意しましょう。
まとめ
自宅に住み続けながら自宅を担保に金銭を借り入れることができるリバースモーゲージは、昨今高い注目を集めています。住宅金融支援機構によれば、2019年度からら2022年度にかけて累計6,000件の申込み実績があるとされているのです。
また、住宅金融支援機構のリバースモーゲージ商品に比べると、民間金融機関によるリバースモーゲージ商品の方が資金使途の自由度がより高く、生活資金に充てることもできる点は大きな魅力だといえるでしょう。
自宅リフォームや生活資金など、老後の生活状況に不安がある場合は、リバースモーゲージを活用した家計の見直しをすることも1つの方法になってくるかもしれません。まずは相続人となる親族に承諾を得たうえで、金融機関とよく相談し、リバースモーゲージの仕組みや資金使途、返済の仕方などについてきちんと理解するところから始めてみましょう。