fbpx

トップページ > 認知症になったときに家族が銀行預金を引き出せるように備えておきたい

認知症になったときに家族が銀行預金を引き出せるように備えておきたい

認知症の不安

 Xさんは、最近よく物忘れをするようになり、そのうち認知症になるのではないかと不安をもっています。Xさんは、友人から認知症になると銀行に預けているお金を自由に引き出せなくなり不便だと聞いていたことから、将来のために何か対策をしておかなければいけないと考えています。Xさんの家族には、妻のAさん、長女のBさん、長男のCさんがいます。AさんはXさんと同様に高齢で、財産の管理を任せるには不安があります。Bさんは結婚してから遠方に住んでおり、Xさんの身の回りのことを任せるのは難しい状況にあります。Cさんは近い場所に住んでいて、Xさんは普段から用事があるとCさんに頼んできました。そこで、Xさんは、XさんとAさんのどちらかが生きている間は、Cさんに自分の財産を管理してもらい、その手間の分だけ多く遺産をあげたいと考えています。

 

認知症に備えておくには?

 認知症になると判断能力が低下して、資産を使い込んだり、詐欺の被害を受けたりする可能性が高まります。また、本人が判断できないのをいいことにして家族が資産を使い込む可能性もあります。そこで、銀行などの金融機関は、預金者が認知症になった場合や著しく判断能力が低下した場合、預金者の資産を保護するため、預けている資産を凍結して引き出すことができなくします。資産が凍結されると、預金者の家族は、生活費介護費用に充てるといった目的があっても資産を引き出すことができません。また、資産が凍結された場合、預金者の家族は口座を解約することもできません

 

 認知症になる前に生活費や介護費用として資産を家族に渡しておくこと資産の凍結を避けることはできます。しかし、資産を渡した時点で、すぐに本人の生活費や介護費用に充てる予定がない場合は、「生前贈与」とみなされる可能性があります。この場合、1年間に110万円の基礎控除を超える生前贈与には、贈与税が課されます

 

 認知症に備えて取りうる対策として「成年後見制度」があります。「成年後見制度」には、まだ判断能力があるときに後見人と契約を結んでおく「任意後見制度」と、判断能力が低下したときに家庭裁判所が後見人等を選ぶ「法定後見制度」があります。あらかじめ将来の認知症に備えておきたいときは、「任意後見制度」を使い、家族などの信頼のおける人に「任意後見人」になってもらうことが考えられます。ただし、「任意後見人」が後見を始めるときは、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選任してもらう必要があります。一般的に「任意後見監督人」には、弁護士などの法律の専門家や社会福祉法人が選ばれ、後見が始まると定期的に報酬を支払わなければいけません。また、任意後見制度は本人が亡くなると終了してしまうため、本人が亡くなった後に配偶者のために財産を管理してもらうといった目的では使えません。

 

認知症になるとこのような問題があります。

・口座に預けているお金を自由に引き出せなくなります。

・口座を解約することができなくなります。

・預金者だけでなく家族も口座からお金を引き出せなくなります。

 

任意後見制度にはこのような問題があります。

・任意後見監督人の報酬を支払う必要があります。

・本人の死後の財産管理を任せることはできません。

 

家族信託を活用する

 将来認知症になったときでも家族が生活費や介護費用として資産を使えるようにしておくため、「家族信託」を活用することが考えられます。家族に資産の管理を任せる目的で家族信託を使うときは、次のような仕組みを作ることが考えられます。

 

1.資産の管理を目的とした家族信託では、本人の全資産が、管理を任せる財産である「信託財産」となります。なお、多くの金融機関は、認知症を理由に資産を凍結しても、本人の日常生活に必要となる年金の入出金については認めています。そのため、年金の受入口座は「信託財産」から外します

 

2.「信託財産」の管理を他者に任せる「委託者」には、認知症に備える本人を設定します。

 

3.「委託者」のために「信託財産」の管理を行う「受託者」には、家族などの信頼のおける人を設定します。また、「受託者」が信託財産を適切に管理しているのか監督してほしい場合は、別途「信託監督人」を設定します。一般的には、法律の専門家に依頼して「信託監督人」となってもらいます。

 

4.「受託者」が管理する「信託財産」から利益を受ける「受益者」には本人を、本人が亡くなった後に利益を受ける「第二受益者(二次受益者)」には配偶者を設定します。

 

5.本人と配偶者の両方が亡くなるなどして信託が終了したときに「信託財産」の清算を受ける「帰属権利者」には、受託者に選んだ家族などの特に資産を残したい人を設定します。

 

家族信託では対応できないこともあります。

家族信託の「受託者」には、身上監護権がありません。介護施設への入居契約のように、身上監護権が必要となるときは、成年後見制度を利用する必要があります。

 

家族信託はどのように働くのか

1.委託者が受託者と「信託契約」を結ぶことで家族信託が始まります。委託者は、信託契約で定めた信託財産に当たる金銭を受託者に引き渡し、受託者は信託財産の管理を開始します。

 

2.委託者である本人が生きている間は、受託者は信託財産から本人のために生活費や介護費用を支払います。

 

3.本人が亡くなっても、配偶者が生きている間は、受託者は信託財産から配偶者のために生活費や介護費用を支払います。

 

4.本人および配偶者の両方が亡くなったときは、帰属権利者である家族などに信託財産が帰属します。

 

まとめ

家族信託を活用することにより、認知症になった場合でも、資産の凍結を避けて、家族が財産を管理できるようになります。これにより、本人の資産を生活費や介護費用の支払いに充てられるようになり、家族がこれらの費用を負担しなければいけなくなる事態を防ぐことができます。

 

当事務所では、皆様のご事情にあわせて家族信託の仕組みをお作りしております。将来、自分が認知症になったときに、家族が財産を管理できるように備えておきたいという方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

無料相談の予約はこちら