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家族信託により財産を遺産分割協議の対象外とした事例

まだ健康なうちから将来を見据えて、遺言書の準備や生前贈与などを行う人が多くみられるようになってきました。昨今では、生前準備の一つの選択肢として、「指定した財産を誰に譲るか、譲られる相手はどのようなルールのもとに財産を管理・処分などしていくか」を事前に決める家族信託に注目する人も増えています。ここでは、遺産分割協議によらない相続手段としての家族信託について、事例を挙げて説明していきます。

家族信託は遺産分割協議によらず相続を可能にする

信託契約とは、自分の財産を信頼できる誰かに託し、自分や大切な家族などのために管理あるいは運用してもらうために交わす約束事です。このとき、委託者・受託者・受益者は以下のような関係性を持つことになります。

 

 

受益者が亡くなってしまった場合、もし次の受益者が決められていなければ、受益権だけが宙に浮いてしまうため、遺産分割協議の対象として相続財産として扱われます。相続人は遺産分割協議を経て受益権を含む財産の分け方を決定し、全ての相続人の合意をもって相続手続きを進めることになるのです。ただし、次の受益者がすでに決められていた場合は、遺産分割協議の有無にかかわらず受益権は次の受益者に移行します。

受益者が亡くなった場合の受益権の行方について

信託契約により指定された受益者が亡くなった場合、受益権は次の三つのいずれかの状態になります。

 

受益権を財産とみなして相続する

受益権は相続財産として見なされるため、遺産分割協議を経ていずれかの相続人が受益権を相続することになります。もし、生前に受益権を持っていた人が遺言書などにより相続指定を行っていた場合は、遺言書の内容が優先されるため指定された相続人が権利を受け継ぎます。

 

受益者が亡くなったことにより受益権が消滅した場合は相続できない

信託契約書などで、受益者が亡くなるのと同時に受益権も消滅すると取り決めている場合は、消滅するため相続の対象外となります。

 

受益者の死亡と同時に信託契約が終了し財産は帰属権利者が継ぐ

信託契約書などによって、受益者が亡くなるのと同時に信託契約も終了し、かつ残った財産を受け取るべき人が指定されている場合は相続の対象外となります。残った財産を継ぐ人のことを帰属権利者とよび相続とは関係なく有効であるためです。仮に信託契約書で、帰属権利者を誰にするかは遺産分割協議で協議し決定する、などと指定があった場合は相続財産扱いとして相続人のうち誰かが権利を取得することになります。

中小企業経営者が家族信託で事業承継した事例

70代の男性には認知症の妻がおり、将来自分に万が一のことがあった場合、妻の生活や財産をどう守ればいいのか方針を決めかねていました。妻は法定相続人にあたりますが、認知症であることから判断能力が十分でなく後見人をつける必要も出てきそうです。

 

遺言書を残すことも検討しましたが、遺言書はあくまでも自分の死後に効力を発揮するものです。男性は自分が元気な現時点から死後に渡る環境整備をしたかったことに加え、妻に十分な生活環境や財産を残したい思いが遺言書では反映されないかもしれない、と案じていたことから、家族信託という形をとって健康なうちに将来に備えることにしたのです。信託契約としては自らを委託者かつ受益者に、娘を受託者に指定しました。自分が亡くなった時点から受益者は妻になるよう指定もしました。

 

財産には金銭だけではなく不動産も含まれていたため、自分が亡くなっても妻が存命のうちは受益者としての権利を有するよう指定し、実家不動産の権利者も妻としました。ただし妻は認知症であり適切に管理ができないため、信頼のおける行政書士に後見人を依頼することで、不動産という難しい財産の取り扱いへのサポートを期待し、娘の負担を軽減しつつ間違いのない財産管理と運用ができるよう手配したのです。これにより、万が一のことがあっても安心な環境を作ることができ、男性は安心して余生を送っています。

家族信託の設計(スキーム)

本件における家族信託の設計は次のように整理することができます。認知症の妻の生活を守ることを第一に考えた設計であり、特に受託者と後見人を分けている点がポイントでもあります。完全にフェアな立場の人物を後見人とし受託者と分離させることで、財産管理を適正に行うことができます。

 

 

将来的に妻も亡くなった場合は、財産の帰属権利者を誰にするか遺産分割協議で協議し決定するよう信託契約書に書き加えています

 

まとめ

相続では第一に遺言書が最も効力を持つことになっており、次いで遺産分割協議、法定相続分の順に優先順位が付けられています。しかし、家族信託はまた別の性格を持っていることから、遺産分割における優先順位の影響を受けることなく実行されることになります。

 

家族信託契約の対象となった財産の名義は委託者から受託者に移りますが、財産自体は特定の誰かが所有するものではないとされます。つまり、委託者が亡くなったとき、その財産は「受託者が管理するが誰のものでもない」状態になり、遺産分割協議の対象から外れるのです。家族信託と相続問題の両方が絡むと、内容やメリット・デメリットなどの理解にフォローが必要になることから、当事務所まで一度ご相談いただくことをお勧めいたします。

 

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