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付言事項を活用!遺言書による臓器提供の意思表示は可能か
自分が亡くなったら、最後の社会貢献として臓器提供を行いたいと考える人もいます。ここでは、遺言書による臓器提供が可能かどうか説明していきます。
臓器提供の意思表示と移植の流れ
従来、臓器移植法では、本人による臓器提供意思表示が認められ、遺族がこれに同意した場合に限り臓器の提供を行うことができました。しかし、平成21年の法改正により、本人による意思表示が不明であっても、遺族が臓器移植を承諾した場合は臓器の提供ができるようになったのです。
改正法である「臓器の移植に関する法律」の第2条では、「死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。」としています。これに基づき、日本臓器移植ネットワークでは、臓器提供の主な意思表示方法を次の通り示しています。
臓器提供の主な意思表示方法
日本臓器移植ネットワークでは、臓器提供の意思表示をする方法は主に以下の3つとしています。
運転免許証などの意思表示欄への記入
運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードは非常に多くの人が所持しています。常に携帯していることが多いこれら書類には臓器提供の意思表示欄が設けられており、自分の死後その身体をどのように扱って欲しいか、あらかじめ記入しておくことができます。
意思表示欄には、以下いずれかの選択肢を選べるようになっています。(※厚生労働省ホームページ参照)
- 脳死後および心臓停止による死後のいずれにおいても、移植のために臓器を提供する
- 心臓停止による死後に限って、移植のために臓器を提供する
- 臓器を提供しない
日本臓器移植ネットワークホームページからの登録
運転免許証などの書類を持っていない場合でも、インターネットを使って意思表示をすることができます。ホームページ上で以下の情報を入力します。その後10日ほど経過すると、入力内容が記載された臓器提供意思登録カードが送られてきます。
【入力事項】
- 個人情報やID・パスワードなどの入力
- 死後の臓器提供の意思表示について(運転免許証などの書類記載事項と同じ)
- 親族に優先して臓器提供するかどうか など
【登録カード到着後】※本登録が必要です。
意思登録カードが届いたら、再びインターネットで本登録を行います。登録画面にIDとパスワードを入力し、「本登録」をクリックすれば登録は完了します。
意思表示カードの携帯
役所や病院、一部企業や店舗など、意思表示カードを設置しているところが多くあります。これらの場所でカードを入手したら、必要事項を記入して常に携帯するようにしましょう。
臓器提供の流れ
脳死下での臓器提供は次の流れを辿ります。
主治医からの説明
病院で患者の主治医から、本人が脳死と考え得る状態であることを告げます。このとき家族から臓器提供の意思表示があれば、臓器移植コーディネーターが派遣されて詳しい説明がなされますので、家族は納得のうえで手続きを進めます。
脳死判定
主治医は、法に基づく厳格な脳死判定を2度に渡って行い、2回目の判定により脳死が確定します。心停止後に臓器提供する場合は脳死判定を受けることはありません。
移植を受ける患者の選択
日本臓器移植ネットワークに登録済みの移植希望者のなかから、医学的に最も適しているとされる人が公平に選ばれます。
臓器摘出手術と戻し
脳死判定後に移植候補者が選ばれると、摘出手術が行われます。臓器を提供した人の身体はきれいに縫い合わされ、清潔なガーゼなどを当てて手術創がわからないように処置し、家族のもとに戻されます。
遺言書による意思表示は付言事項を活用
自分の死後の臓器提供については、遺言書を通して意思表示することも可能とされています。ただし、遺言書は被相続人の財産相続に関する意思表示の手段であるため、付言事項を活用して臓器提供の意思があることを伝えましょう。
付言事項とは遺言書の追加記載事項であり、法的拘束力はありませんが、財産以外のさまざまな事柄に対する思いや願いを伝えるのに適しています。
なお、遺言書の内容確認と葬儀終了のタイミングが合わなかった場合、遺言書による臓器提供の意思表示が実現できなくなる可能性も考えられます。したがって、家族にはあらかじめ遺言書の有無や臓器提供の意思について話しておく必要がありそうです。
付言事項で臓器提供の意思表示をする例
遺言書のなかで、相続人(家族)に対して「自分の死後は臓器提供したい」旨を伝えたい場合、例として次のような文面を付言事項として書き加えるといいでしょう。あくまでも参考例ですので、実際に遺言書を作成する際は専門家と十分相談することをお勧めします。
【付言事項による臓器提供の意思表示例】
『私は、脳死および心臓が停止した死後、臓器提供を必要としている方のために、自らの臓器を提供する意思を表明します。すでに日本臓器移植ネットワークへの登録は済ませており、また妻○○の同意も得ています。1人でも多くの人を救うために、どうぞ協力してください。』
相続人(家族)の心情をおもんばかりつつ、自分の意思を明確に表明し、すでに配偶者などに了解を得ていることや家族への感謝の言葉などを書き添えるといいかもしれません。
まとめ
遺言書の付言事項を活用することによって、自身の臓器提供の意思表示を家族に伝えることができます。ただし、家族が複雑な思いに悩まされないよう、専門家と相談しながら丁寧に文面を考え、記しておくことが大切です。
当事務所では、ご相談者様・ご依頼者様のお話をじっくりとうかがい、各々の背景事情を鑑みたうえで最適と思われるアドバイスを行っています。無料相談もご用意しておりますので、遺言書原案作成についてなど、ぜひお気軽にお問い合わせください。