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遺言書の種類

遺言の種類について

 遺言は本文を全て自筆で書く自筆証書遺言だけではありません。ほかにどのようなものがあるかご説明します。有名な遺言としては、公証人が遺言者に代わって遺言を作成する公正証書遺言があります。ほか、秘密証書遺言、一般危急時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言という遺言がありますが、95%以上の方が自筆証書遺言、公正証書遺言にて遺言を作りますので、こちらでは自筆証書遺言と公正証書遺言の相違について表でご説明します。

 

自筆証書遺言と公正証書遺言の相違

  自筆証書遺言 公正証書遺言
作成者 遺言者のみ 公証人
証人の要否 不要 2人以上必要
作成費用 不要 公証役場の費用が必要
遺言検認の要否 必要
(2020年7月10日施行の遺言保管制度を使えば不要になります)
不要
遺言書の保管 遺言者の責任においてする
(2020年7月10日施行の遺言保管制度を使えば法務局にて保管)
公証役場が原本を半永久的に保管

 

 遺言検認とは、遺言の存在を家庭裁判所に「検」査して「認」めてもらう手続きです。遺言の有効無効の判断はしませんのでご注意ください。自筆証書遺言の場合、検認手続きなしでは各種相続手続きはできないため、相続する側は少し手間がかかります。

 

 なお、2020年7月10日より施行された遺言書保管法に基づく自筆証書遺言の保管を管轄の法務局に申請した方は、この検認は不要となります。遺言書保管法についてはこちらの記事参考

 

 この検認手続きは、公正証書遺言の場合不要になるため、検認手続きなしで相続させたいときは、遺言者は自筆証書遺言の場合は新法施行後、法務局に遺言の保管を申請するか、公証役場にて公正証書遺言にて遺言を作成するかということになります。

 

 遺言書の保管の点について、自筆証書遺言の場合、新法による遺言保管申請をしない場合、基本的に自分で保管することが原則ですので、管理上の問題があります。公正証書遺言の場合は、その遺言書の原本が公証役場に保管されますので、自筆証書遺言ほどの管理上のリスクはないですし、紛失のリスクもありません。

 

 誰にも遺言書の内容を知られずに遺言を書きたい場合は、自筆証書遺言または秘密証書遺言にすることになります。ただしこの場合でも、遺言の内容は伏せておいても、遺言を書いている事実は相続人になる方にはあらかじめ伝えておいたほうがよいでしょう。遺言書があることを知らずに、遺言者死亡後、相続人間で遺産分割協議をしてしまうリスクがあるからです。

 

 公正証書遺言は、遺言書の保管管理の点、検認が不要である点などメリットも多いですが、費用がかかる点、完全に秘密にできない点等のデメリットも一部あります。ご自分でどのような遺言にするべきか迷ったときは専門家までご相談下さい。  

 

 

自筆証書遺言の方式について

自筆証書遺言の特徴 

自筆証書遺言とは、遺言者が、全文、日付、氏名を自書し、押印して作成する遺言です。自筆証書遺言の特徴としては以下のものがあげられます。

 

<メリット>

①自分で書けばよいので費用もかからず気軽にいつでも書ける

②遺言の存在、遺言内容自体を秘密にできる

 

<デメリット>

①紛失・偽造・変造の危険性がある

②内容に不備などがあれば無効になる可能性がある

③遺言に基づく相続手続きに家庭裁判所の検認手続が必要とされる(遺言保管法による遺言保管申請した方を除く)

 

 


自書の意味

遺言者の自書が要求されるのは、遺言の偽造・変造を困難にし、遺言内容が遺言者の真意によるものである事を担保するためです。 自筆証書遺言の作成には証人が必要とされないため、遺言者の自書によって遺言者の意思に基づくことを明らかにするのです。そのため、パソコンやタイプライターなどによって作成したものは無効であり、筆も認められません。(ただし、遺言書の中の相続財産目録はパソコンでの作成ができるようになりました。)

 

自書は自筆で筆記する能力(自書能力を前提とします。ただし、視力の喪失や病気のために手が震えるなどの理由で、運筆に他人の助けを借りても、それだけでは自書能力は否定されないとした判例があります。(最判昭和62年10月8日民集41-7-1471)。もっとも、他人が、病気で単独で文字を書けない遺言者の手をとって、遺言者の声に従って誘導しつつ作成された遺言に関しては、自書の要件が欠けます。

 

なお、カーボン複写の方法によって作成された遺言については、判例上有効とされています。(ただし、おススメはしません。遺言の効力に疑義が出る恐れがあるので普通の紙に書くようにしてください。)

 


押印について

 押印も自書同様、遺言者の同一性及び真意を確認するための手段ですが、使用すべき印章(印鑑)には制限はありません。そのため、三文判(認印)でも有効です。朱肉を付けないシャチハタも印鑑としてダメということではありませんが、朱肉を付ける印鑑のほうがよいでしょう。なお、遺言書作成当時に印鑑証明書を市町村役場で取り、遺言書にその印鑑証明書の印鑑(実印)にて押印した遺言書のほうが三文判で押印した遺言書より遺言の証拠力は相対的に高くなりますので、後のトラブル防止のためにも実印の方がより安心できるとも言えます。

 


日付について

日付の記載が要求されるのは、作成時の遺言能力の有無の確認や内容の抵触する複数の遺言が発見された場合に、どの遺言が遺言者の最終の意思を記載したものであるかを確定するのに必要なためであり、これを欠くと無効になります。また、日付を確定できるような書き方をする必要があり、「○年○月の吉日」などの 書き方は日付を特定できないため無効となる恐れがあります

 

公正証書遺言の方式

公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は以下の方式に従い作成します。

 

①証人2人以上の立会いがあること。

②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。

※ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を附記して、署名に代えることができます。

⑤公証人が、その証書は以上の方式に従って作ったものである旨を附記して、これに署名し、印をおすこと。  

 

また、公正証書遺言のメリット、デメリットとしては以下のことが挙げられます。 

 

メリット>

①公証人や証人の面前で作成し、原本は公証役場で保管するため、偽造、変造の危険性がない。

②公証人が関与するため無効になる可能性が低い。

③家庭裁判所の検認が不要。

 

デメリット>

①利害関係の無い証人が2人以上必要

費用がかかる

③公証人と証人には内容が知られてしまう

 

口頭主義の緩和

公正証書遺言は、遺言者は自ら全文を書く必要は無いことから、以前は、口授・読み聞かせが厳格に要求され、手話通訳や筆談による事は出来ないとされていました (口頭主義)。そのため、聴覚や言語機能に障害を持つ者は、公正証書遺言をすることができませんでしたが、平成11年の民法改正により、手話通訳または筆談で公正証書遺言をすることが可能になりました。

 

 (公正証書遺言の方式の特則)民法第969条の2

口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又はして、口授に代えなければならない。    

②遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、筆記した内容を通訳人の通訳または閲覧により遺言者又は証人に伝えて、読み聞かせに代えることができる。

 

なお、この改正にあわせて、秘密証書遺言、死亡危急者遺言等の方式についても、厳格な口頭主義を緩和するための改正がなされ、言語機能障害者が通訳人の通訳によりこれらの方式の遺言をすることが可能になりました。

 

秘密証書遺言の方式

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言とは、公証人や証人の前に封印した遺言を提出し、遺言の存在は明確にしつつも、その内容については秘密にできる遺言のことをいい、以下の方式に従ってなされます。

 

①遺言者がその遺言書に署名押印すること。

②遺言者がその遺言書を封じ、遺言書に用いたのと同じ印章を以ってこれを封印すること。

③遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提示して、自己の遺言書である旨並びに自らの氏名及び住所を申述すること。

公証人がその遺言書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印すること。

 

また、秘密証書遺言には、以下のようなメリット、デメリットがあります。

 

メリット>

①遺言書の内容を秘密にすることができる。(ただし、遺言をしたという事実は秘密にできません。)

ワープロや代筆での作成が可能。(ただし、遺言者の署名押印は必ず必要)

 

デメリット>

利害関係のない証人が2名必要

②公証役場での費用がかかる

③公証人が内容をチェックできないため、内容に不備があった場合無効になる可能性がある

④家庭裁判所の検認が必要(遺言書保管法による遺言の保管は、自筆証書遺言は可能ですが、秘密証書遺言は不可となります。つまり、秘密証書遺言の場合、遺言の検認手続きが必ず必要になります。)

 

なお、秘密証書遺言としての要件を欠いていたとしても、自筆証書遺言としての要件を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になると解されています。(無効行為の転換)

 

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)の方式

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)の特徴

一般危急時遺言とは、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言しようとするときに用いられる特別方式による遺言です。なお、特別方式による遺言は一般危急時遺言の他にも、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言などがあります。

 

一般危急時遺言は以下の方式 に従いなされます。

 

証人3人以上の立会いがあること。

②遺言者が証人の1人に内容を口述すること。

③口述を受けた証人が内容を筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

④各証人がその筆記した内容が正確なことを承認した後、それぞれ署名押印すること。(遺言者の署名は不要)

 

なお、以上の方式でなされた遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求し、家庭裁判所の確認を得なければ効力を失います。この手続きによって、家庭裁判所は遺言が遺言者の真意にでたものかどうかを判断することになります。また、相続開始後には、検認手続も必要になります。

 

なお、特別方式による遺言全般(一般危急時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言)に言えますが、これらは普通方式の遺言(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)よりも簡易にすることができる反面、遺言者に危難などが迫っている場合などに例外的に認められるものなので、危難が去り遺言者が普通方式の遺言ができるようになったときから6か月以上生存したときは、効力を失うことになります。

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