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元配偶者は財産承継できない?遺言書作成後に離婚した場合の解釈

婚姻中に「配偶者に遺産を相続させる」旨の遺言書を作成したものの、その後に離婚してしまった場合、遺言書の有効性は保たれるのでしょうか。ここでは、遺言書作成後に離婚した場合の解釈について説明していきます

 

遺言書を作成し直していた場合

離婚後、遺言者が遺言書を作成し直していることがあります。民法では、遺言書の撤回をいつでも行うことができるとしています。

 

(遺言の撤回)

第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

※e-Govより抜粋「民法」

 

離婚を機に遺言書が撤回され新しい遺言書が作成された場合、同じ項目について異なる内容が記載された部分については、古い遺言書の文言が撤回されたことになります

 

(前の遺言と後の遺言との抵触等)

第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

※e-Govより抜粋「民法」

 

以下の例について考えてみましょう。

 

 

古い遺言書と新しい遺言書では相続内容が抵触しているため、民法第1023条に基づき、新しい日付で作成された遺言書が優先して有効とされます。したがって、遺言者Aの財産である預貯金400万円は、子Cが相続することになるのです。

 

離婚した場合の遺言書の解釈

古い遺言書に記載の内容を撤回する旨を記載して新しい遺言書を作成した場合を除き、離婚後に策作成された遺言書は離婚をもって撤回されたと解釈するのが一般的です。

 

先ほどの例について考えてみましょう。夫Aは妻Bと添い遂げることを前提として当初の遺言書を作成したはずです。だからこそ、妻Bに300万円を相続させる旨を明記していたのです。しかし、離婚により相続関係は変わりますので、妻Bに関わる文言の箇所については撤回されたとみなされる傾向にあります。

 

遺言書の真意を探る

一方、夫婦としては離婚したものの、夫婦関係にかかわらず「Bという存在に対して自分の財産を承継させたい」という思いが込められている場合も皆無ではないでしょう。

 

通常は、離婚をもって夫婦関係は破たんし、配偶者は相続に関する権利も失うものと考えられますが、新しく遺言書が作成されておらず、離婚後も元夫婦の関係が良好であった場合などは、「元配偶者B」へ財産を承継させるべきか判断が難しいところです。

 

最高裁判所の判例では、遺言書に記載の内容だけではなく遺言外の背景事情なども考慮して判断することの重要性を示しています

 

遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈し得る本件においては,遺言書に表われていない前記1(5)のような事情をもって,遺言の意思解釈の根拠とすることは許されないといわなければならない。

※「前記1(5)」とは遺言者と当該人物との背景事情を指す

※最高裁判例平成13年3月13日より抜粋

 

したがって、本記事例における遺言者Aの遺言書についても、記載された文言だけに囚われるのではなく背景事情を十分に加味して判断すべきだということになるでしょう。

 

まとめ

遺言書のなかで、離婚した元配偶者への財産承継について明記されていない場合

  1. 遺言者は配偶者であるその人物に財産を相続させたかった
  2. 遺言者は夫婦関係に関係なくその人物に財産を譲りたかった

このどちらに該当するかを慎重に判断しなくてはなりません。

 

これから自分自身の遺言書を作成する場合、また離婚後の相続についてどう記すべきか考慮している場合は、新しい遺言書を作成し、次の対策を採ることをおすすめします。

 

遺言書が実際に閲覧されるとき、遺言者である自分は関与することができませんので、周囲が判断に迷うことのないようあらかじめ準備をしておくことが大切です。

 

当事務所ではトラブル予防を重視し、遺言書の原案作成サポートなどを行っておりますので、お困りの方はぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

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