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遺言執行者がカギ?遺言書があっても遺産分割協議は可能か
遺言書がある場合は原則としてこれにしたがい、遺言書がない場合は遺産分割協議により相続手続きを進めることが一般的です。ここでは、遺言書があっても遺産分割協議を行うことができるのかについて説明していきます。
遺言書と遺産分割協議はどちらが優先?
遺言書は故人による相続への意思表示ですから、相続人による遺産分割協議に優先して有効とされます。したがって、原則として遺産は遺言書で指定された通りに分割されることになるのです。ただし、遺言書があるという事実を相続人が知っていたかどうかで、遺言書の有効性は変わるとされていますので注意しましょう。
相続人が遺言書の存在を知っていた場合
すべての相続人が遺言書の存在を知ったうえで行う遺産分割協議は有効です。遺言書の内容について相続人全員が否定的であったり、遺産分割の方法についてあらためて話し合うことに全員が同意していたりする場合がこれに該当します。
ただし、遺言書において遺産分割協議を禁じている場合や、遺言執行者が指定されており遺言書の確実な実現がその責務となっている場合は、遺産分割協議を行うことができません(遺言執行者が遺産分割協議に同意した場合を除く)。
相続人が遺言書の存在を知らなかった場合
次に該当するようなケースでは、遺産分割協議は無効となり遺言書が優先されます。
- 相続人が遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議を行った場合
- 相続人の一部が遺言書の存在を把握していながら他の相続人にその事実を伝えず遺産分割協議を行った場合
上記例で遺産分割協議が無効となる理由は、
- 遺言書があることを知っていれば遺産分割協議にいたらなかったと考えられるため
- 遺言書の存在を知る者が一部の相続人に限られ、全員が「遺言書はあるが遺産分割協議を行う」ことに同意しているわけではないため
と考えることができそうです。
相続が開始すると、遺言書の確認から故人の財産調査、確定申告から相続税の納税まで、必要な各種手続きを10ヶ月以内に終わらせなければなりません。どのような手続きが必要になるかは、遺言書の有無によっても大きく変わりますので、家族が亡くなったときは、遺言書が遺されていないか探すところから始めることをおすすめします。
遺言執行者が選任されている場合
遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を確実に実現する責務を負った人のことを指しています。遺言書のなかで遺言執行者が指定されていた場合、遺産の管理や分割に関する業務は、相続人ではなく遺言執行者の義務となるのです。遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者による遺言執行を妨害することはできません。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
※e-Govより抜粋
なお、遺言執行者が行う業務として次のようなものが挙げられます。
- すべての相続人(および受贈者)に対し遺言執行者就任の旨を連絡
- 相続人を確定させるための戸籍などの取得
- 遺産調査と財産目録の作成
- 子の認知手続き
- 相続人廃除・排除の取消手続き
- 預貯金解約・不動産およびその他の財産の名義変更手続き
- すべての手続き完了にあたり相続人(および受贈者)全員に対し任務終了の旨を連絡
まとめ
遺言書が見つかっても相続人がその内容に納得いかないことがあるかもしれません。遺言執行者が選任されている場合は原則として遺産分割協議を行うことができませんが、全相続人および遺言執行者の同意が得られれば、遺産分割協議が実現することもあります。
遺言書の無効・有効の判断や遺産分割協議の可否、また遺留分侵害額請求などについては、個々の相続によって変わってくる可能性がありますので、まずは当事務所までお早めにご相談ください。