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無効になることも!遺言書偽造を証明する方法と予防策
亡くなった親が遺言書を遺したが、その内容を確認するとどうも親本人が書いたものと思えない、といったようなケースがあります。偽造かもしれないと考えたとき、相続人の心中としては「誰がやったのか」「どうやって正常な状態に戻せばいいのか」不安と困惑に駆られるのも仕方のないことです。ここでは、遺言書偽造の証明と予防策について説明していきます。
遺言書偽造の証明の仕方
遺言書を偽造した人物が確定すると、当該人物は民事・刑事両方の責任を追及されることになります。民事上は欠格事由の適用により相続権がはく奪、刑事上は懲役刑の対象者とされます。
【民事上の欠格事由に該当】
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
※e-Govより抜粋「民法」
【刑事上の刑罰の対象】
(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(偽造私文書等行使)
第百六十一条 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
※e-Govより抜粋「刑法」
筆跡鑑定による偽造証明
自筆証書遺言が偽造されたことを証明する方法として、最も広く行われているのが筆跡鑑定です。筆跡は人それぞれ特徴を持っていることから、筆跡をよく調べることで書いた人を特定できる可能性があります。
自筆証書遺言の偽造又は変造を証明するためには、筆跡やその他の事情から、遺言者本人が書いたものではないことを示す必要があります。裁判所による判例でも筆跡鑑定が決め手となり、遺言書の自書と認めるには足りないとのことから、争いの対象となった遺言書が無効と判断されたことがありました(成25年7月16日高松高裁による判決など参照)。筆跡を調べるには専門鑑定人に依頼することが必要です。
その他の要素から判断する偽造の可能性
筆跡鑑定は偽造の重要な証拠となりますが、それ以外にも次に挙げるような状況が確認された場合、偽造の可能性があるとみなされる傾向にあります。
- 遺言書作成時点における遺言者の遺言能力が低下していたにもかかわらず、遺言内容が詳細かつ複雑である場合
- ほとんど面識のなかった親族が遺言書を発見した場合や、遺族がまったく想像もしなかった場所から遺言書が見つかった場合
- 遺言書の文字についてその色や筆跡の濃度が異なっていたり、遺言者が通常使用していたような言葉遣いではなかったりした場合
上記は偽造と判断するための要素の1つであり、他におかしな点があれば複合的に判断することもあります。
公正証書遺言書で偽造を予防
自筆証書遺言の場合、遺言者が自書し自ら保管するという形式を採るため、偽造など万が一のことが起こる可能性を否定できません。公正証書遺言であれば、偽造のリスクもなく安心して遺言を遺すことができます。
公正証書遺言は、遺言者が公証人と証人の前で遺言案を読み上げ、公証人がこれを書面に書き起こすことで作成されます。原本は公証役場に保管されますので、遺言者以外の人物による偽造のリスクがありません。当事務所としても、安心・安全な遺言環境を確保するために、公正証書遺言の作成をおすすめしています。
あるいは、自筆証書遺言を作成したのち法務局に預ける「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、遺言書原本が法務局で保管されますので、同じくおすすめの選択肢の1つになります。
まとめ
遺言書は自分の意思を遺族に伝えるための大切な文書です。偽造などにより無効とされてしまわないよう、予防策を採ることがとても大切です。
当事務所では、遺言書原案作成サポートをはじめ、相続全般に関するご相談・ご依頼を承っております。無料相談もご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。