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相続人が混乱!?遺言書が後から出てきた場合の対処法
被相続人の死後、相続人同士の話し合いも進み、ようやく遺産分割協議の合意にいたったタイミングで遺言書が見つかることがあります。ここでは、遺言書が後から出てきた場合の対処について説明していきます。
遺言書は遺産分割協議書に優先する
生前に被相続人が遺言書を遺していたとしても、死後の通知がうまく手配されていなければ、相続人は遺言書の存在に気付かず遺産分割協議を進めてしまうことでしょう。結果として、相続人の話し合いが合意にいたる段階で遺言書が見つかり慌ててしまう、というケースが起こり得るのです。
遺産分割協議はすべての相続人が遺産分割の在り方に合意することがゴールですが、実は遺言書の優先度の方が高いとされています。遺産とはもともと遺言者が所有していた財産であり、その所有権は遺言者(被相続人)に属します。したがって、所有財産の処分について意思表示を行った遺言書が優先されることになるのです。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
※e-Govより抜粋「民法」
つまり、すでに遺産分割協議が終了するタイミングだとしても、遺言書が見つかった時点で遺言者(被相続人)の意思が優先され、記載の内容通りに遺産分割を行わなければなりません。
遺産分割の在り方は状況により変わる
原則として遺言書は遺産分割協議に優先しますが、状況によっては遺言書によらない遺産分割が可能な場合もありますし、逆に遺産分割をやり直さなければならないこともあります。
遺産分割のやり直しが必要ないケース
最優先される遺言書の存在がありながら、遺言書によらず遺産分割協議により相続することがあります。
たとえば、遺産分割協議の結果、すべての相続人がその内容に合意した場合はそのまま遺産分割を行うことが可能とされています。遺言書は遺言者名義の財産に関する本人の意思表示ではありますが、実際にこれを承継する相続人全員が話し合いで同意を形成した場合、そこから無理に遺言書の内容を実現する必要はないといわれています。
遺言書があった場合でも、相続人の誰かがその内容に不満を持てば遺留分侵害額請求にいたる可能性はあるのですし、それほど「相続人による合意」は重要なものなのです。
ただし、後述するようなケースでは、遺言書に基づく遺産分割のやり直しが求められますので注しましょう。
遺産分割のやり直しが必要なケース
前述の通り、全相続人の合意があることを前提として、遺言書の内容とは異なる相続を行うことは可能です。しかし、以下のケースに該当する場合は、相続人以外の関係者が関与することになるため、相続人だけの合意で遺産分割することは叶いません。
- 遺言執行者が選任されている:遺言執行者が一切の権限を有しているため遺言執行者の同意が必要
- 遺言認知がされている:認知されたことにより相続人となった人物を含めて遺産分割をやり直す
- 第三者への遺贈が指定されている:受遺者を含めて遺産分割をやり直す
- 相続人廃除が行われている:排除された相続人を除外して遺産分割をやり直す
まとめ
すべての相続人が遺産分割内容に同意するだけでも大変な道のりであるのに、後から遺言書が見つかったときの遺産分割のやり直しにはさらなるエネルギーを要するでしょう。最初の遺産分割から遺言書発見時までに相当の時間が経過している場合は、遺産の価値自体も大きく変わっていることがあるため、話し合いがややこしくなりがちです。
これから遺言書を作成しようとする人は、発見されるべきときに遺言書が発見されるよう、公正証書遺言書では遺言執行者を選任しておくか、自筆証書遺言書では法務局の遺言書保管制度を利用するなどして対策に努めることが大切です。