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死後に財産を譲りたい!遺贈と死因贈与の違いと注意点
自分の死亡を機に所有していた財産は相続人に承継されます。一方、相続人ではない人物に対して財産を遺すこともできるのです。ここでは、相続人以外にも財産を譲ることができる遺贈と死因贈与について、その違いを説明していきます。
遺贈と死因贈与の違い
相続人以外の人物へ財産を渡す方法は2つあります。1つは遺言書による遺贈であり、もう1つは健在なうちに当該人物と結ぶ死因贈与の契約です。
遺贈
遺言書では、遺言者が希望する財産分割の意思を伝えることができますが、その相手が相続人以外の人物であっても財産を譲ることが可能です。これを遺贈といい、遺言書に「○○に△△を遺贈する」などと記すことで、本人の意思を明確にすることができるのです。
なお、遺贈には2種類ありますので、どちらの形式を選択するかあらかじめ決めておきましょう。
【包括遺贈】「すべての財産を遺贈する」「3分の1を遺贈する」など、割合に基づく遺贈
【特定遺贈】「○○の土地○○㎡を遺贈する」「○○銀行口座の預貯金○○円を遺贈する」など、個別財産を具体的に指定した遺贈
死因贈与
遺贈は、遺言者が遺言書に記すことでその意思を一方的に表するものです。これに対し死因贈与とは、贈与者と受贈者があらかじめ合意のうえで贈与契約を交わし、贈与者の死亡によって指定された財産が受贈者に承継されるものとなります。包括的贈与が行われる場合もありますが、特定財産について贈与することが一般的です。
遺贈と死因贈与の違い
遺贈と死因贈与では具体的にどのような違いがあるのか比較してみましょう。
【方法】
- 遺贈:遺言書の記載事項に基づく
- 死因贈与:一般的には死因贈与契約書を作成する(口頭でも契約は成立する)
【放棄】
- 遺贈:遺言書による一方的な意思表示のため、遺贈を放棄することも可能
- 死因贈与:双方の合意に基づく契約であるため、放棄は不可能
【年齢】
- 遺贈:遺贈は遺言書に記載する事項であるため、15歳以上であることが求められる
- 死因贈与:未成年が契約を行う場合は法定代理人の同意が必要
【相手方の負担】
- 遺贈:遺言書の記載事項であるため、「自分の介護と引き換えに財産を渡す」といった条件は設定できない
- 死因贈与:「自分の介護と引き換えに財産を渡す」といった内容に双方が合意し契約が成立すれば、相手方に負担を求めることが可能
このように、遺贈と死因贈与は「第三者に財産を譲る方法」としては似ていますが、「死亡により有効になる遺言書」か「生前に行う契約」か、という点で大きく異なっています。
遺贈と死因贈与のメリット・デメリット
遺贈と死因贈与にはそれぞれ特徴があることがわかりました。各手段のメリットやデメリットについてもみていきましょう。
遺贈のメリット
遺贈は遺言書の記載事項の1つであるため、相手の同意を必要としません。自分の意思だけで、相手に財産を承継させたい希望を死後に伝えることができます。
遺贈のデメリット
遺贈の意思表示を有効なものとするには、まず遺言書を正しく作成しなければなりません。法に定められた厳格な形式に違反する遺言書は無効とされますので、注意が必要です。
また、遺贈(遺言)は一方的な意思表示であることから、受遺者がその申し出を断ることも可能です。希望通り遺贈が実現しないケースもあることを理解しておきましょう。
死因贈与のメリット
死因贈与は当事者双方の合意により成立する契約であるため、遺贈のように「断られる」ということがありません。契約に定めたとおり、財産を受贈者に譲ることができます。「負担付死因贈与契約」を交わしていた場合は、たとえば「贈与者の介護を行うことと引き換えに、死後財産○○を譲る」といった、受贈者の負担を伴う贈与を実現することが可能です。
死因贈与のデメリット
当事者間の合意に基づく契約であるため、相手方と条件の調整が必要になるかもしれません。もし不動産を贈与する場合、不動産取得税や登録免許税の納税義務を受贈者が負うことになるため、これが大きな負担となることも考えられます。
まとめ
遺贈は遺言書に記載される事柄のひとつになるため、遺言書は法に定められた形式に則って慎重に作成する必要があります。また、死因贈与契約を交わすときは、相手方との話し合いを十分に行い、双方が納得する内容に仕上げることが大切です。
いずれも、遺言者/贈与者の死後にその財産を相手方に譲るための手段ですから、他相続人の相続分との兼ね合いもよく考慮する必要があるでしょう。込み入った案件となる可能性もありますので、ぜひ無料相談をご利用いただき、当事務所までお気軽にお問い合わせください。