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自筆証書遺言書でも安心!法務局による遺言書保管制度
自分自身の手で手軽に作成できる自筆証書遺言はもっとも敷居の低い方法だといえますが、作成した遺言書が死後確実に発見されるか、改ざんされないかといった不安も付きまといます。ここでは、そのような不安を払拭してくれる法務局の遺言書保管制度について説明していきます。
遺言書保管制度の内容
公証役場での作成が必要な公正証書遺言とは異なり、法的基準を満たせば自分一人で手軽に作れる自筆証書遺言も一定の支持を得ています。法務省が公開する資料では「平成28年度司法統計 家事事件編 第2表」による調査データが引用されており、次のように述べられています。
自筆証書遺言については必ずしも作成数はわからないものの、家庭裁判所での遺言書の検認事件数については以下のとおりである。
平成19年 13,309件
平成20年 13,632件
平成21年 13,963件
平成22年 14,996件
平成23年 15,113件
平成24年 16,014件
平成25年 16,708件
平成26年 16,813件
平成27年 16,888件
平成28年 17,205件
※法務省資料より抜粋
公正証書遺言と比べれば5分の1から6分の1ほどの割合ではあるものの、一定数の自筆証書遺言検認数が確認できます。
自筆証書遺言に対する法務局の関与
自筆証書遺言が毎年一定数いることを鑑みて、2020年7月10日から法務局で遺言書を保管する「遺言書保管制度」が始まりました。自筆証書遺言を画像データとして法務局が保管するもので、制度の具体的な内容は以下の通りです。
自筆証書遺言の預かり
自筆証書遺言をデータ化し、その原本とともに法務局の遺言書保管所で預かります。なお、保存期間は、原本について遺言者が亡くなってから50年間・データについては死後150年間です。
遺言書の確認
保管に際して、法務局の職員が自筆証書遺言の作成方式を確認します。ただし、これにより自筆証書遺言の有効性を保証するものではありませんので、変わらず細心の注意を払って正しく作成する必要があります。
相続開始後の対応
遺言者が亡くなり相続が開始したとき、相続人に対し遺言書の内容について閲覧可能としたり証明書を交付したりします。
検認の不要
遺言書保管制度により保管されている遺言書は、開封に際し家庭裁判所の検認を必要としません。
相続人への通知
いずれかの相続人が遺言書保管所で遺言書の閲覧あるいは遺言者情報証明書を交付を受けた場合、その他すべての相続人に対し「遺言書保管所に遺言書が保管されていること」の通知が行われます。
遺言書保管制度利用の流れ
遺言書保管制度を利用するためには、次の流れに沿って手続きを行います。
法務局の選定
次のいずれかを管轄する法務局を選び申請を行います。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産所在地
※法務省資料より抜粋
申請書の作成
法務局の窓口で申請書を受け取るか法務省ホームページからダウンロードが可能です。申請書の主な記載事項として次の項目が挙げられます。
- 遺言者の氏名
- 遺言書の生年月日
- 遺言者の住所
- 相続人への通知希望 など
申請手続き
管轄の法務局に対し、電話もしくはウェブサイトから手続きの予約を行います。予約当日は、次のものを持参して手続きしましょう。
- 自筆証書遺言書
- 申請書
- 本人確認書類(官公庁から発行された顔写真付きの身分証明書)
- 本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
- 遺言書が外国語により記載されているときは日本語による翻訳文
- 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)
※法務省資料より抜粋
必要書類に不足や漏れがなければ、遺言書はデータ化され原本とともに保管されます。保管に際し、保管証が交付されますので亡くさないよう気を付けましょう。
まとめ
法務局における遺言書の確認作業は、あくまでも形式的に有効かどうかを見るためのもので、遺言書そのものの内容まで関与しません。だからこそ遺言者は、相続人に対して公平な遺産分割ができているか、遺留分は発生しないかなど、十分に注意して遺言書を作成する必要があるのです。
自筆証書遺言書は本人の自署であることが求められますが、作成にあたっては当事務所がご相談をお受けいたします。法的に正しいかどうか、望ましい遺産分割内容になっているかなど、遺言者としての思いと相続人の公平を両立させることができるよう助言を行いますので、ぜひ無料相談をご利用ください。