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家族信託も検討を!遺言書で2世代先に財産承継できない理由
財産承継先を遺言書で指定できるのは次の世代に対してのみであり、2世代先まではカバーすることができません。ここでは、遺言書で2世代先に財産承継できない理由について説明していきます。
遺言書で指定できるのは「遺言者の相続」に限られる
現在住んでいる自分名義の自宅について、「自分の死後は息子に自宅を相続させ、息子が亡くなった後は息子の子(孫)に相続させる」といったように、2世代先まで相続人を指定することはできるのでしょうか。
結論からいえば、遺言書で財産承継先を指定できるのは子までに限られ、孫世代を含むことはできません。その仕組みは次の通りです。
【遺言者の相続】
- 自分に関わる相続についてのみ遺言書に記載できる
- 法定相続人は配偶者および子である
- 孫が相続人となるのは子がすでに亡くなっている場合である
【子の相続】
- 子に関わる相続についてのみ遺言書に記載できる
- 法定相続人には子の配偶者およびその子である
遺言者の子が財産を承継したあと、その財産をさらに子(遺言者の孫)に承継させるか売却して現金に換えるかは、遺言者の意思ではなく財産を相続した子の判断によります。
2世代先までの財産承継には家族信託が適している
遺言書では2世代先までの財産承継ができないことがわかりました。しかし、遺言者としては、大切な財産が孫にも渡るように手配したいと考えることもあるでしょう。そのようなときに役立つのが、家族信託という方法なのです。
家族信託で孫を受益者の1人にする
自分名義の財産の管理や処分を家族に託し、望み通りの財産承継を実現する方法として家族信託を挙げることができます。
- 委託者:財産の名義人
- 受託者:財産管理や処分の方法について受任
- 受益者:財産から発生する利益を享受
先ほどの例を当てはめてみましょう。遺言者が委託者となって信頼できる家族(たとえば委託者の子)と信託契約を結び、受託者は信託契約に基づく財産管理や処分を行います。このとき、2世代先の孫を受益者とすれば、遺言者の希望通り財産を2世代先に承継することが可能です。
信託の目的を明確にする
家族信託の仕組みを活用するにあたり、あらかじめその目的を明確にしておくことをおすすめします。
信託財産の指定
委託者名義の財産の一部あるいは全部について、具体的にどの財産を信託の対象とするかを決める必要があります。
受託者と受益者の指定
家族信託に関する知識を持つ専門家を受託者としてもいいですし、委託者の思いを十分理解できる家族を受託者に指定してもいいでしょう。大切なのは、信託契約が確実に実行されるかどうかという点にあります。
また、受益者の指定も不可欠です。たとえば、委託者が亡くなるまでの間は委託者を受益者としておき、その死後は特定の信託財産を孫に承継させる、といった流れを作っておきます。
信託目的の明確化
なぜその財産を受益者に承継させるのか、そうすることでどのような将来を期待しているのかなど、信託契約を活用する目的を明確化しておくことも大切です。そうすることで、受託者は委託者の思いを受け取ることができ、信託契約の忠実な実行に繋がります。
まとめ
遺言書の特徴と家族信託の特徴をそれぞれ正しく理解したうえで、2世代先への財産承継を実現しましょう。遺言書を活用する場合も家族信託を活用する場合も、「なぜ相手にその財産を譲るのか」を付記しておくことをおすすめします。そうすることで、相続財産の分割や信託財産の承継がよりスムーズになることが期待できるでしょう。
なお、遺言書による遺産分割の指定も家族信託による財産承継も、法律を根拠として正しく行われる必要があります。あらかじめ専門家に相談しながら、どのような方法を採るか慎重に判断することが大事です。当事務所でもご相談をお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。