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事業承継税制の特例措置「経営者・後継者・会社」の要件
事業承継税制には特例措置と一般措置の2種類が設けられています。ここでは、中小企業庁の資料に基づき、特に節税効果が高いとされている事業承継税制の特例措置を受けるための要件について説明していきます。
事業承継税制「特例措置」と「一般措置」の違い
事業承継税制とは、相続や贈与などにより経営承継円滑化法の認定企業の株式を得た場合について、一定の要件を満たすことを前提として贈与税や相続税を免除する制度です。中小企業庁ホームページには、事業承継税制の土台となる経営承継円滑化法の認定内容が記載されています。
経営承継円滑化法においては以下の支援を措置しています。
(1) 税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定
(2) 金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定
(3) 遺留分に関する民法の特例
(4) 所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定
※中小企業庁ホームページより抜粋
平成30年度の税制改正により、事業承継税制は特例措置と一般措置に分かれることになりました。それぞれ具体的に次のような違いがあることがわかります。
【事前の計画策定】
- 特例措置:6年以内の特例承継計画の提出
- 一般措置:不要
【適用期限】
- 特例措置:10年以内の贈与・相続など
- 一般措置:なし
【対象株数】
- 特例措置:全株式
- 一般措置:贈与は100%、相続は80%
【納税猶予割合】
- 特例措置:100%
- 一般措置:贈与は100%、相続は80%
【承継パターン】
- 特例措置:複数の株主から最大3人の後継者
- 一般措置:複数の株主から1人の後継者
【雇用確保要件】
- 特例措置:弾力化
- 一般措置:承継後5年間にわたり平均8割の雇用維持が必要
【経営環境変化に対応した免除】
- 特例措置:あり
- 一般措置:なし
【相続時精算課税の適用】
- 特例措置:60歳以上の者から18歳以上の者への贈与
- 一般措置:60歳以上の者から18歳以上の推定相続人や孫への贈与
※中小企業庁ホームページ「申請マニュアル・第1章 事業承継税制(特例措置)の概要」より抜粋
事業承継税制の特例措置を受けるための要件
特例措置と一般措置では大きな違いがあることがわかりましたが、特例措置を受けるためには都道府県知事による認定が必要です。
2018年4月1日から2024年3月31日までに、都道府県庁に対して特例承継計画を提出し確認を受けなければなりません。記載事項は次の通りです。
- 後継者氏名
- 事業承継の予定時期
- 承継時点までの経営の見通しや承継後5年間の事業計画書
これらについて整理できたら、国が認める認定経営革新等支援機関に対し指導・助言を求めます。
※認定経営革新等支援機関:商工会議所や金融機関、税理士など国が認める専門機関
経営者・後継者・会社の要件
特例措置の認定を受けるためには、経営者・後継者・会社のそれぞれについて要件を満たしている必要があります。
経営者
【贈与・相続】
- 贈与または相続が行われる時点で経営者が会社の代表者であること
- 後継者を除き筆頭株主であること
- 一族で議決権50%を超える株式を保有していること
【贈与】
- 贈与をもって代表辞任するかすでに退任していること
後継者
【贈与・相続】
- 贈与または相続があった直後に会社の代表者であること
- 一族において筆頭株主であること
- 一族において議決権50%を超える株式を保有していること
【相続】
- 前経営者が60歳未満で亡くなった場合を除き、相続直前にすでに役員であったこと
【贈与】
- 役員就任して3年以上が経過しており20歳以上であること
会社
会社にも適用要件があります。
- 会社が中小企業であること
- 1名以上の従業員がいること
- 風俗営業会社・資産管理会社に該当しないこと
前経営者・後継者に加えて会社も要件を満たしていなければなりません。
まとめ
事業承継税制の特例措置認定を受けることによって、贈与税や相続税の大幅な節税が実現可能です。ただし、特例措置の認定を受けるためには、さまざまな書類を用意したりいくつもの要件を満たしたりしていなければならず、準備は慎重かつ時間的余裕を持って行うべきでしょう。
当事務所では贈与や相続全般のご相談・ご依頼を承っており、行政書士を窓口として提携する司法書士や税理士の協力のもとトータルサポートを行っています。事業承継税制に関する疑問や取り組み方など、無料相談をご利用のうえお気軽にお問い合わせください。