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法定相続人とは
相続人について
人が亡くなると、その人が持っていた財産は相続人に引き継がれます。亡くなった人のことを被相続人(ひそうぞくにん)と呼び、財産を承継する権利義務のある人を相続人と呼びます。それでは次に、具体的な相続人についての説明をします。
配偶者の相続権
被相続人が亡くなった時点で、生存配偶者がいればその配偶者は他の相続人(子や親や兄弟姉妹等)とともに相続人になります。つまり、被相続人の配偶者には一部の例外を除いて、常に相続権があるということです。離婚した元配偶者には相続権がありません。また、内縁関係にある配偶者も、法律に基づく配偶者とは言えない者として相続権を否定されています。(判例)
子の相続権 ①
被相続人に子供がいれば、その子は相続人になります。被相続人に配偶者がいれば、子はその配偶者とともに相続人になります。被相続人と養子縁組している養子は、実子と全く同じ相続権を持ちます。
被相続人が過去に再婚しており、前配偶者との間に生まれた子も相続人です。離婚時に子の親権を離婚相手に与えていたとしても関係がありません。そのほか、被相続人と婚姻関係にない相手との間で子を設けていた場合(法律用語では非嫡出子「ひちゃくしゅつし」と呼ばれる)、被相続人がその子を生前に認知もしくは遺言によって認知していれば非嫡出子にも相続権が発生します。
あまりない例ですが、被相続人が死亡した時点で、配偶者(妻)が懐胎していた場合、その赤ん坊が生きて生まれてくれば、その赤ん坊にも相続権があります。
当事務所でよくある相談は、未亡人の方から、「亡くなった夫が再婚者で、前妻との間に子がいるのだけれども、どうしたらよいか」という相談がかなりあります。複雑な事情を抱える相続問題については、一度専門家に相談されることをお勧めします。
子の相続権 ②
前の記述で(子の相続権①)で、子の相続についてはだいたい理解できたと思います。では、その子が被相続人よりも先に死亡しており、その死亡した子にさらに子供がいた場合を考えます。もっと簡単に言うと、被相続人の孫にも相続が発生する場合を考えます。被相続人の孫に相続が発生する条件は、被相続人よりも先に、または、被相続人と同時に子が亡くなり、かつ、その亡くなった子に生きている子がいることが必要です。専門用語で、これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
被相続人甲 令和元年5月1日死亡
被相続人の妻乙 生存している
被相続人の子A及び子B 生存している
被相続人の子C 平成30年1月1日死亡
被相続人の孫D 生存している
この事例の場合、相続人は誰になるかわかりますか?甲の配偶者である乙は常に相続人になります。次に、被相続人の下の世代(直系卑属といいます。)を考えると、相続する権利のある人は、子Aと子Bはもちろん相続人になり、子Cは生きていれば本来相続人になれたのですが、被相続人よりも先に死亡しているため、そのCが相続できたはずの権利義務をCの子である(被相続人の孫)Dが代わって相続することになります。これが代襲相続のルールです。
ちなみに、代襲相続は被相続人の下の世代の場合、ずっと下の世代まで代襲されますので、この例で、子Cが被相続人よりも先に死亡し、孫Dも被相続人よりも先に死亡し、孫Dに仮に子がいた場合(ひ孫E)であっても、そのひ孫Eは相続人となります。この場合を再代襲(さいだいしゅう)といいます。再代襲は直系卑属のみに適用され、兄弟姉妹には適用がありません。
このように、代襲相続といわれる相続のルールを理解せずに相続手続きを進める方がおりますので注意が必要です。
親の相続権
それでは、次に、被相続人の親の代に相続が発生する場合を考えます。まず、重要なことは、被相続人に子供や孫がいる場合は、原則的に親の代に相続権が発生することはありません。相続のルールでは、相続人の地位に順位が定められており、親は子に次ぐ第2番目の順位になりますから、被相続人に子や孫がいる場合は、親の代には相続権が回ってきません。(子全員が家庭裁判所を通した相続放棄を申述して、その相続放棄が受理された場合は除きます。)
被相続人に子や孫(下の世代)がいなく、配偶者と親がいる場合は、その配偶者と親が相続する権利を持ちます。配偶者がいる場合、配偶者は他の相続人と同順位とされます。
子の相続権②で述べた代襲相続は親にはありませんが、被相続人に子がなく、かつ、両親とも死亡していて、父方もしくは母方のいずれかの祖父母が1人でもご健在の場合、その祖父母に相続権が回ってきます。なお、親が相続人となるケースで、たとえば父が死亡しているが、母は健在な場合、父方の親(被相続人からみて父方の祖父母)が健在であったとしても、この場合の相続人は母のみとなります。被相続人の上の世代(直系尊属といいます。)が相続人となる場合、親等の近い者のみが相続人となります。
兄弟姉妹の相続権
被相続人の財産を兄弟が相続する場合について考えましょう。被相続人の兄弟姉妹に相続が発生する要件は、被相続人に子や孫などの直系卑属や、親・祖父母などの直系尊属もいないことが必要です。兄弟姉妹の相続順位は、第3番目になります。被相続人自身が未婚であったり、結婚はしていたものの子に恵まれなかったケースは、兄弟姉妹に相続権が発生することが多くなります。
なお、被相続人のすでに死亡している親が再婚等で、その親が離婚前の配偶者との間に子を設けていた場合(異父母兄弟)、その子も被相続人の兄弟姉妹として相続権を持ちます。つまり、半血の兄弟にも相続権があります。
甥・姪の相続権
兄弟姉妹に相続権が発生する方には注意して読んでいただきたく思いますが、被相続人に子や孫(下の世代)、親(上の世代)がいない場合は、兄弟姉妹に相続する権利が与えられますが、それと同時に被相続人の甥や姪に当たる方が相続するケースも多く見受けられます。
甥・姪が相続する要件は、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースで、その兄弟姉妹のうち、被相続人よりも先に亡くなっている兄弟姉妹がおり、なおかつ、その亡くなっている兄弟姉妹に子がいる場合です。つまり、兄弟姉妹が相続人になるケースでも代襲相続のルールが適用されるということです。
被相続人が亡くなる頃には、その兄弟姉妹もある程度の年齢を重ねていることが多く、兄弟姉妹の方でも被相続人よりも先にお亡くなりになるケースは現実的に多くなります。そして、すでに亡くなった兄弟姉妹の方に子がいれば、その子も相続人になるというわけです。
被相続人A 令和元年6月死亡
被相続人の父 平成19年死亡(父方の祖父母も亡くなっているものとする)
被相続人の母 平成20年死亡(母方の祖父母も亡くなっているものとする)
被相続人の兄弟姉妹B 生存している
被相続人の兄弟姉妹C 平成30年死亡
被相続人の甥姪D 生存している
このような相続人の組み合わせで相続が起こる方もいらっしゃいます。被相続人Aには子や孫などの直系卑属がおらず、両親ともに死亡しており(直系尊属が全員死亡)、健在な兄弟姉妹Bの他にも被相続人よりも先に死亡している兄弟姉妹Cがいて、そのCに子D(被相続人からみて甥姪)がいますので、相続人の組み合わせとしては、健在な兄弟姉妹Bと健在な甥姪Dが被相続人Aの相続人となります。(被相続人に配偶者がいた場合は、その配偶者と兄弟姉妹B及び甥姪Dが相続人となります。)
甥姪にしてみれば、突然、叔父もしくは叔母の財産を相続する権利があると言われればびっくりするでしょうが、これも相続におけるルールです。生きている兄弟姉妹だけが相続人になるわけではないので注意が必要です。
受遺者への遺贈(遺言による贈与)
被相続人が自分の死後の財産をだれだれに相続させる(遺贈する)という遺言書を遺していた場合、その遺言書に書かれた人は被相続人の財産を取得できます。一般的に、遺言によって財産の引継ぎを受ける人を受遺者(じゅいしゃ)と呼びますが、これは本来の法定相続人以外の者に財産を相続させる場合に使われる言葉です。本来の相続人に対して、遺言により財産を相続させる場合は受遺者とは呼びません。
ここで覚えておきたいことは、遺言があればどんな人に対しても財産を譲ることができるということです。公益法人などの法人に対しても財産を遺すことができます。
このことは、配偶者・子・親・兄弟姉妹のような法律によって定められている相続人(法定相続人といいます。)が相続できる権利を奪ってしまう効力がありますので、本来財産をもらう相続人も、被相続人の死後、きちんと故人が遺言を遺していないかの確認をする必要があることを意味します。
遺言による贈与(遺贈)があったとしても、法定相続人にはもともとの相続権自体は残されていますから、被相続人の遺言によって、相続人以外の第三者に全て財産移転をされてしまったときにでも、遺留分(いりゅうぶん)という権利を使い、相続財産の一部を相続する権利は残されます。その権利のことを遺留分権(いりゅうぶんけん)といい、その権利を行使できる人を遺留分権利者(いりゅうぶんけんりしゃ)といいます。
遺留分権利者は、法定相続人のうち、被相続人の下の世代(子・孫など)と上の世代(親・祖父母)および配偶者にあります。兄弟姉妹には遺留分がありませんので注意してください。甥・姪にも遺留分はありません。
特別縁故者への財産分与
きわめてレアケースではありますが、特別縁故者(とくべつえんこしゃ)への財産分与という、まったく相続権自体のない者への財産分与制度があります。法律用語で、被相続人と生前特別な縁故があった者のことを「特別縁故者」といいます。
特別縁故者への財産分与を利用する場合、まず、被相続人に相続人が一人も存在しない(法定相続人不存在、遺言書による受遺者なし)ことが必要です。相続人の存在を一人も確認できないことを認めてもらうため、家庭裁判所にその旨を申し立てます。(相続財産清算人の選任)
特別縁故者への財産分与申立ての前提として、ただ単に相続人が一人もいないことだけでは足りず、特別縁故者の候補者には、被相続人と生前特別な縁故があった者(被相続人と生計をともにしていた・被相続人の療養看護をしていたなど)という要件が必要であるので、自分で「私は生前あの人に尽くしていた」と思っても、家庭裁判所によって認めてもらわなければ特別縁故者にはなりません。
特別縁故者になりうる人の事例として多いのが、事実上の配偶者(内縁の妻など)や事実上の養子(養子縁組をしていないが、生前一緒に生計を立てていた)でしょう。病院や市町村が特別縁故者になるケースもあるようです。