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債務を抱えた会社を事業承継する際のポイント
事業者は、自身の高齢化や後継者育成などを理由として、その事業を次の世代に継がせることがあります。これを事業承継といいますが、会社に債務がある場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは、債務を抱えた会社を事業承継する際のポイントについて説明していきます。
会社が債務超過の場合
どのような会社にも何らかの債務があるものですが、借入金や買掛金などの額が膨らみ債務超過となってしまうケースもみられます。赤字と債務超過は似ているものの、次のような違いがあるので理解しておきましょう。
赤字とは
当該期の損益計算書において、収入より支出が上回った状態を赤字といいます。あくまでも一定期間の収支状況をみるための指標であるため、経営努力によって後から黒字に転換できる可能性も十分あるといえます。
債務超過とは
買掛金や借入金などが膨らむ(例:赤字が続くなど)と、会社の収支状況は慢性的にマイナス状態となってしまいます。
会社は資産と負債のバランスを取ることによって健全形を目指すものですが、財務状況が悪化していくと徐々にバランスが崩れていき、負債額が資産額を上回ってしまうことがあります。この状態が「債務超過」であり、理論上、会社の資産全てを返済に充ててもなお負債が残ることになるため、経営の健全性が大きく損なわれているとわかります。
後継者が負うリスク
一般的に、会社名義で借入などを行う場合、経営者個人による連帯保証が必要になることが多くあります。事業承継する場合、負債だけではなく連帯保証義務も受け継ぐことになるため、後継者は大きなリスクを負うことになるでしょう。
会社の経営状態が悪化していることだけではなく、後継者にも大きな負担がかかることを踏まえれば、債務超過の会社を事業承継することは決して簡単ではないといえるのです。
全銀協によるガイドライン
一般社団法人全国銀行協会が公開している「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」によれば、次のように述べられています。
ただし、事業承継に際しては、経営者保証を理由に後継者候補が承継を拒否するケースが一定程度あることが指摘されるなど、課題が残されている。
(略)
経営者保証が事業承継の阻害要因とならないよう、原則として前経営者、後継者の双方からの二重徴求を行わないことなどを盛り込んだガイドラインの特則策定が明記された。
(略)
具体的には、経営者保証を求めることにより事業承継が頓挫する可能性や、これによる地域経済の持続的な発展、金融機関自身の経営基盤への影響などを考慮し、ガイドライン第4項(2)の要件の多くを満たしていない場合でも、総合的な判断として経営者保証を求めない対応ができないか真摯かつ柔軟に検討することが求められる。
※「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」参照・抜粋
このように、金融機関側としても、経営者保証が円滑な事業承継の妨げにならないよう積極的な取り組みを行うことを明言しています。したがって、債務超過に該当する会社を事業承継する場合は、あらかじめ取引銀行などに相談し、具体的な助言を得ることがとても大切になってくるでしょう。
債務超過の会社を事業承継する前に
債務が膨らんでしまったが、次のような理由から何とか事業を残したいと考えるケースは少なくありません。
- 会社のブランドをなくしたくない
- 社会に浸透している商品やサービスを持っている
- 社員を解雇したくない など
このような場合に採ることができる最も重要な策は、会社の業績を上げ利益を確保することだといえます。会社としての収入が増えれば、現在抱えている債務を減らすことができますので、徐々に健全経営に戻していくことができるでしょう。
ただし、業績を上げてより多くの利益を確保することは、決して簡単なことではありません。債務超過の状態から着実な回復を目指すためには、専門家のサポートを受けることも大切です。会社全体における財務上の問題点を見極めて収支バランスを整えていけば、社会的信用の着実な向上も不可能ではないといえます。
まとめ
債務を抱えた会社の事業承継は容易なものではありませんが、専門家によるサポートや公的な相談窓口を利用して専門的見解を得ることで、会社の体質や業績を改善する見通しを立てることもできるでしょう。
当事務所では、事業承継に関するご相談・ご依頼を承っており、提携する司法書士や税理士と協力しながらトータルサポートを提供しています。債務の問題は少しでも早く取りかかることが大切ですので、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。