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どう扱えば良い?相続財産に「売れない土地」がある場合
土地を相続したのはいいものの、土地の状態や環境の問題から、売りたくても売れないという事態に直面することがあります。ここでは、売れない土地を相続したときの対処法について説明していきます。
土地が売れない理由
どのような土地でも資産価値を持つわけではありません。土地の利便性や形状、法的な制限など「売れない理由」を探っていきましょう。
土地の利便性が低い
利便性の高い土地は売れやすく、利便性の低い土地は売れにくいといえます。駅や大型商業施設などから近い土地は利便性が高く人気がありますが、各種施設から遠かったり墓地などが近かったりするような場合は売れにくくなる傾向が見られます。インフラが整っている土地かどうかも重要なポイントです。
法的な制限を受けている
例えば土地に家を建てる場合、その土地が道路に面している必要があります。
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
※建築基準法より抜粋
したがって、道路に接していない土地は利用価値が低く見積もられることになるのです。また、農地として転用する場合は農地法の定めをクリアしなければいけません。
土地の形状が悪い
土地活用を考えれば、その形状はできるだけ平坦かつ四角形である方が使い勝手が良いといえます。しがたって、細長い土地や道路面よりも低い位置にある土地、がけ地などの不整形地は買い手が見つかりにくく、売れない原因となってしまいます。また、隣地との境界線が曖昧な土地も敬遠されやすいでしょう。
地盤が軟弱である
盛土されている土地や埋立地などは、自然災害時に液状化現象や地滑りを起こす可能性があります。また、土中に残置物がある場合は土壌汚染も懸念されるでしょう。
売れない土地を相続放棄する際の問題点
相続とは、被相続人名義のすべての遺産(プラスの財産・マイナスの財産)を引き継ぐ手続きですから、売れない土地があったとしてもそれだけ相続放棄することはできません。相続人のうち誰かがその土地の相続を引き受けるか、もしくは全員で相続放棄する策が考えられます。
土地の管理義務を果たす必要がある
仮に全員が相続放棄したとしても、問題が解決するわけではありません。すべての相続人が相続放棄をした場合、被相続人名義の財産を相続財産管理人に引き渡すケースが多く見られます。裁判所への申し立てにより相続財産管理人を選任することができ、相続財産管理人は次の役目を果たすことになります。
相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の清算人を選任します。
相続財産清算人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
※裁判所ホームページより抜粋
ただし、相続財産が相続財産管理人に引き渡されるまでの間、もとの相続人には土地の管理義務が残りますので、たとえば土地に老朽化した建物がある場合などはこれに対応することが求められます。
相続登記は必ずしなければならない
売れない土地であっても、その土地を相続する人がいる以上、相続登記をしなければなりません。令和6年(2024年)4月1日から過去相続分にさかのぼり相続登記が義務化されますので、土地の資産価値の如何に関わらず必ず登記を行いましょう。
なお、相続人全員が相続放棄した場合は、先に述べた相続財産管理人が相続財産の管理・清算を行いますので、どのようなケースであっても相続登記はなされるものと理解しておきましょう。
相続土地国庫帰属制度を利用する
令和5年(2023年)4月27日に施行された相続土地国庫帰属制度により、相続した土地を国庫に帰属させることができるようになりました。ただし、どのような土地でも国に納めることができるわけではなく、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく却下事由や不承認事由が適用されることがありますので注意しましょう。
【引き取ることができない土地の要件の概要】
(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
※法務省ホームページより抜粋
また、制度利用には費用がかかります。
- 審査手数料:14,000円(土地一筆当たり)
- 管理費用一部負担金:10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額の負担金を納付
負担金の算定基準は法務省により以下のとおり示されています。
- 宅地:面積にかかわらず20万円(一部市街化区域または用途地域における宅地については面積に応じて算定)
- 田、畑:面積にかかわらず20万円(一部の市街化区域地や農用地区域等における農地については面積に応じて算定)
- 森林:面積に応じて算定
- その他:雑種地や原野等については面積にかかわらず20万円
まとめ
売れない土地は市場価値が低いものの、相続により以後当該土地の維持管理を行っていかなければなりません。当然ながら維持管理費用も発生しますので、相続した人物に大きな負担がかかることが想定されます。
いくつもの問題点を抱えた「売れない土地」が相続財産に含まれている場合は、できるだけ専門家による助言を得て、どう対応すべきか明らかにし適切に対処することが大切です。当事務所では豊富な相続手続きの経験を有していますので、ご不安がある場合はぜひ無料相談をご利用ください。