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相続登記義務化において数次相続がおよぼす影響
数次相続とは、被相続人が亡くなった後、遺産分割協議前に相続人が亡くなり次々と相続が発生していく状態をいいます。ここでは、相続登記義務化において数次相続がおよぼす影響について説明していきます。
数次相続においても相続登記は原則必要
土地建物の所有者が亡くなって一次相続が発生したものの、相続人による相続登記が行われる前に相続人も亡くなり、さらにその相続人が二次相続として土地建物を受け継ぐことがあります。これを数次相続といいますが、一次相続および二次相続のいずれについても原則として相続登記が必要になることを理解しておきましょう。
【数次相続の具体例】
※土地建物の所有者A・Aの相続人BおよびCの場合
- Aが亡くなり相続が開始すると、BとCの間で遺産分割協議を行い、相続登記を行う必要がある
- 相続人Bが相続登記前に亡くなった場合、次の相続人であるDが土地建物を相続する
※このとき相続登記が必要なのは「1.BとCについての相続登記」「2.Dについての相続登記」の両方となります。
令和6年(2024年)4月1日より相続登記が義務化され罰則も設けられていますが、法務省資料によれば、数次相続については正当な理由があるとして罰則の適用外となるようです。
1 相続登記の申請義務化の概要
⑴ 相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない(法第 76 条の2第1項)。
3 「正当な理由」があると認められる場合
- (略)当該登記の申請をしないことに「正当な理由」があると認められるときには、過料通知は行わない。
(略)
⑵ 一般的に、例えば、次のアからオまでのような事情がある場合には、相続登記の申請をしていないことにつき「正当な理由」があると考えられる。もっとも、「正当な理由」があると認められるのは、これらの場合に限定されるものではないため、「正当な理由」についての判断は、登記官において、相続登記の申請義務を負う者の具体的事情を丁寧に確認した上で行うものとする。
ア 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
イ 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
ウ 相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
エ 相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
オ 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
※法務省「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」参照
法務省の資料によれば、「数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合」は正当な理由に該当するため、相続開始後3年以内の登記が行われなかったとしても罰則は適用されないことになります。
相続登記の中間省略が可能な例
すでに述べた通り、被相続人が亡くなってから3年以内の相続登記は原則必要な手続きになります。ただし、数次相続が起こった場合に限り「中間省略登記」が認められているため、手間と労力を省ける可能性があります。
以下の数次相続について考えてみましょう。
※土地建物の所有者A・Aの相続人BおよびCの場合
- Aが亡くなり相続が開始すると、BとCの間で遺産分割協議を行い、相続登記を行う必要がある
- 相続人Bが相続登記前に亡くなった場合、次の相続人であるDが土地建物を相続する
土地建物の所有権を持っていた最初の人物は被相続人Aであり、相続登記はAからBCへの相続について1回、Bが亡くなったあとはBからDへの相続について1回、それぞれ必要になります。
この場合、AからBCへの相続登記とBからDへの相続登記を省き、AからDへの登記手続きを行えばいいことになります。
まとめ
数次相続が起こると、それぞれの被相続人・相続人の関係性を証明したり各相続の登記手続きを行ったりするなど、大変な手間と労力がかかることが予想されます。
相続登記が義務化されると3年以内の登記手続きが求められますが、数次相続については「3年以内の相続登記ができない正当な理由」に該当しますので、時間がかかっても状況をよく整理し、最終的に相続登記を正しく完了できるようにすることが望ましいといえます。
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