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相続人あるいは被相続人が外国籍である場合の相続手続き
外国籍の人が相続人または被相続人の場合、日本国籍の人とは異なり手続きが複雑になることが想定されます。ここでは、外国籍の相続人がいる場合と被相続人が外国籍の人であった場合の手続きについて整理していきます。
国際相続の基本的なルール
次に挙げるようなケースを含め、手続き上、日本と外国両方の法律に基づいて行う相続を国際相続(渉外相続)といいます。
- 被相続人が外国籍である場合
- 相続人が外国籍である場合
- 被相続人や相続人が外国に住んでいる場合
- 遺産の一部または全部が外国にある場合 など
国際相続では、「相続統一主義」「相続分割主義」のいずれかのルールに基づいて相続手続きがなされますので、まずはそれぞれについて概要を整理していきましょう。
相続統一主義
相続統一主義とは、被相続人のすべての財産について、被相続人の出身国あるいは住所地の法律に基づいて相続手続きを行う考え方です。相続統一主義はさらに2種類に分けることができ、被相続人の本国法を準拠法とする本国法主義と被相続人の最後の住所地法を準拠法とする住所地法主義がこれにあたります。日本では本国法主義に基づいて相続手続きが行われます。
相続分割主義
相続分割主義とは、遺産のうち不動産に関しては土地建物の所在地の法律に基づいて手続きを行い、それ以外の遺産については本国法あるいは住所地法をベースとするものです。
外国籍の相続人に求められる書類
日本における相続手続きでは、相続人の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書などを必要とします。しかし、外国籍の相続人については、必ずしも本国に同種の書類が存在するとは限らず、代替書類をもって手続きを行うことがあります。
戸籍謄本がない場合
日本における戸籍謄本とは、戸籍に入る者すべてについてその氏名・生年月日・続柄などが記載されており、相続手続きには欠かせない書類の1つとなっています。
相続人が外国籍である場合、本国に戸籍の仕組みがあれば戸籍謄本に準ずる書類を取得し使用することができますが、身分制度を採用している国の場合は事情が変わってきます。戸籍制度が「家」を単位としているのに対し、身分制度は「個人」を単位としていますから、発行可能な証明書も出生証明書や婚姻証明書、死亡証明書など個人の身分を表すものになるのです。
この場合、どのような書類を取得すれば戸籍謄本の代わりとして認められるか混乱しやすいため、相続手続きの経験豊富な専門家に相談しながら書類の準備を行うことをおすすめします。
なお、被相続人が日本国籍でその配偶者が外国籍である場合、日本の戸籍謄本を取得すれば婚姻の事実を確認できる場合があります。
印鑑証明書がない場合
日本に在住している外国籍の相続人が印鑑登録を行っていない場合、印鑑証明書を入手することができません。こういったときの代替書類となり得るのが署名証明書とされています。日常のさまざまな場面で印鑑を使用する「ハンコ文化」は日本の特徴である一方、諸外国では印鑑の代わりに個人の署名が効力を発揮します。
しかし、日本において遺産分割協議を成立させるためには、すべての相続人の印鑑証明書が必要になるため、その代替書類である署名証明書の取得は欠かせません。どのようにして署名証明書を取得できるかは、外国籍の相続人の本国事情によって変わりますので、大使館などに問い合わせるか、十分な知識を備えた相続問題の専門家に相談するようにしましょう。
被相続人が外国籍だった場合の相続手続き
ここまで、外国籍の相続人がいた場合について説明してきましたが、被相続人が外国籍であるケースについても考えてみましょう。外国籍の被相続人に関わる相続手続きを日本式で行うことに問題はないのでしょうか。
被相続人の本国法に基づく手続きが必要
「法の適用に関する通則法」の第36条では、被相続人の本国法に基づいて相続を行うとしています。
(相続)
第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。
※法の適用に関する通則法より抜粋
被相続人が外国籍である場合は、その本国の法律にしたがい相続手続きを進めることになります。
本国法が日本の法律に基づく手続きを定めている場合
「被相続人の本国法にしたがって相続手続きを進めた結果、一部日本の法律を適用させることになるケース」もあります。このことは「法の適用に関する通則法」の第41条でも明らかにされています。
(反致)
第四十一条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。
※法の適用に関する通則法より抜粋
欧米など相続分割主義を採用している国々では、当該国籍の被相続人が日本に不動産を所有していた場合、その不動産については日本の法律のもとで相続手続きを行うことになります。
「被相続人の本国法にしたがって相続手続きを進めた結果、一部日本の法律を適用させることになるケース」とはこのような場合を指しているのです。
本国法が居住地の法律に基づく手続きを定めている場合
「被相続人の本国法にしたがって相続手続きを進めた結果、被相続人の居住地の法律を適用させることになるケース」も見られます。
このほか、相続人の範囲や遺留分制度の有無など、国によって変わる事柄もあるので注意しましょう。被相続人がどの国籍を持っているかにより、相続手続きの在り方が変わってきますので、本国法をよく調べたり専門家に相談したりしながら正しく対処していくことが求められます。
まとめ
国際相続は、相続人あるいは被相続人の本国法を丁寧に読み解き、正しい解釈にしたがい手続きする必要があります。日本と外国では言語や文化、法体制が異なるため、手続きは複雑化しやすく、書類を用意するだけでも大変な労力となるでしょう。
当事務所では、さまざまなケースにおける相続手続きを経験しておりますので、まずは無料相談をご利用いただき、現在の状況を整理することをお勧めします。