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自分でできる?限定承認の煩雑な手続きに備えよう

相続とは、被相続人のプラスの財産・マイナスの財産ともに引き継ぐことを意味しますが、一定の返済義務を負うことでプラスの財産を手元に残しておける「限定承認」を選択することもできます。限定承認の手続きを自分ですることはできるのでしょうか

 

【この記事の要点】

  • 思い入れのある財産を残したい・マイナスの財産よりプラスの財産の方が多い、といった場合は限定承認がおすすめ
  • 限定承認の手続きにはすべての相続人による同意が不可欠である
  • 限定承認の手続きは煩雑であり大きな負担になり得る
  • 相続の専門家の力を借りることも大切である

 

ここでは、限定承認を自分で行うときに知っておきたい手続きの流れと注意点について説明していきます。被相続人の死後は落ち着かず負担も大きい時期ですが、大切なポイントを理解して手続きを進めていきましょう。

 

限定承認とは?

被相続人が亡くなり相続が発生した場合、相続人は次の3つの方法からいずれかを選択して手続きすることができます。

 

【単純承認】

被相続人のすべての財産を相続することを単純承認といいます。相続放棄や限定承認の手続きをしない限り、一定期間が経過すると自動的に単純承認したとして認められます。

 

【相続放棄】

被相続人のすべての財産を相続することを放棄することを相続放棄といいます。この手続きを行うことにより、はじめから相続人ではなかったものとして扱われますので、被相続人にプラスの財産があったとしても一切引き継ぐことはできなくなります。

 

【限定承認】

被相続人にプラスの財産とマイナスの財産の両方がある場合、プラスの財産の範囲内で返済すれば残りの債務が免除されるのが限定承認の特徴です。たとえば、プラスの財産が100万円・マイナスの財産が200万円あった場合、プラスの財産の範囲内である100万円のみ返済すれば残る100万円の債務は免除されます。逆にプラスの財産が200万円・マイナスの財産が100万円である場合は、100万円を返済したあとに残る100万円を相続することができます。

 

思い入れのある財産や自宅不動産など、どうしても手元に残しておきたいものがある場合、限定承認を選択することによってこれらを放棄せずに済むことも考えられます。また、遺産のうちプラスの財産の方がより多く遺されている場合も、限定承認が合っていると考えることができるでしょう。

 

限定承認が適しているシチュエーション

具体的にどのようなシチュエーションであれば限定承認を選択した方がいいのでしょうか。すでに述べた限定承認の特徴と合わせて理解しておきましょう。

 

被相続人の債務額が明確にならない場合

財産調査をしても存在が判明しない債務が存在することがあります。どこに対してどのような負債を抱えていたか、財産調査から漏れてしまっている可能性がある場合、正確な負債額を把握することができません

 

そのようなときは限定承認しておくといいでしょう。あとから負債が見つかったときでも、相続したプラスの財産の範囲内でのみ返済義務を負えばいいからです

 

どうしても手放したくない財産がある場合

自宅や事業用の各種資産など「思い入れがある財産」「他に替えが効かない財産」をどうしても手放したくない場合も、限定承認が向いています。大切な財産を残すことができれば、自宅にそのまま住み続けることができるかもしれませんし、事業を行っている場合は事業そのものを存続させられる可能性が出てくるでしょう。

 

限定承認の手続きの流れ

限定承認を選択した場合は、家庭裁判所に申述を行い審判を受ける必要があります。手続きの内容と流れについて説明していきます。

 

相続人調査

すべての相続方法に共通することですが、まずは「誰が相続人か」を明確にするために相続人調査を行う必要があります。相続に関するさまざまな手続きでは、相続人全員の合意が求められたり書類にサインしたりすることが求められるからです。限定承認の申述も、相続人全員が共同で行うことになっています。

 

被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、親族も知らなかったような婚姻歴や認知された子がいないかなど、相続人となる人物を丁寧に探していく必要があるでしょう。

 

財産調査

相続人がそれぞれ、単純承認・相続放棄・限定承認のいずれかを選択するためには、まず遺産の全容が明確になっていなければなりません。たとえば、以下のような手がかりから地道に「プラスの財産・マイナスの財産」すべてを洗い出していく必要があります

 

 

預貯金や有価証券の口座状況については、本人宛の郵便物やメール、アプリなどを確認して足がかりとしてみましょう。不動産に関しては、法務局で登記簿謄本を取得したり固定資産税課税証明書を確認したりすることで、どこにどれくらいの価値の不動産を保有していたかがわかります。

 

すべての相続人による話し合い

財産調査を終えたら、すべての相続人が集まり話し合いをする機会を設けます。相続の仕方によっては他の相続人に影響を及ぼす可能性があるからです。また、限定承認を選択したい場合は、すべての相続人が共同で家庭裁判所に申述する必要があるため、まずは話し合って全員の同意を得なければなりません。

 

限定承認申述書・財産目録の作成

限定承認に係る申述書および財産目録を作成します。裁判所ホームページに設置されているURLから必要な書式をダウンロードして記入しましょう。裁判所ホームページでは以下の書式が公開されていますので、申立書および財産状況に応じた目録書式を使用し管轄の家庭裁判所に提出します。

 

 

上記書式に加えて、以下の書類の提出も求められます。

 

 

書類の提出と家庭裁判所による審判

必要な書類を揃えて家庭裁判所に対する申述を行うと、家庭裁判所から照会書が送られてきますので、記載されている質問に回答するとともに、追加で提出が求められた書類がある場合はこれに対応します。

 

その後、家庭裁判所における審判が開始され、限定承認の申述が受理されるとその旨を知らせる通知書が郵送されます

 

限定承認の注意点

限定承認の申述を行う際、注意しておかなければいけないことがありますので確認していきましょう。

 

期限内に手続きすること

相続人がどのような相続の形を選択するかを決めるためには、ある程度の時間を要します。厳密には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(※裁判所ホームページ参照)」を熟慮期間といい、この間に単純承認するか、相続放棄するか、あるいは限定承認の申述を行うかを決定しなければいけません。

 

期限内に手続きを行わなかった場合、単純承認したものとして扱われますので、被相続人の相続人調査と財産調査はできるだけ早いタイミングで済ませる必要があるでしょう

 

なお、3ヶ月の熟慮期間内にどの相続の形を選択するか決定できない場合は、期間内に申し立てることにより熟慮期間を延長することも可能です。ただし、延長した場合も定められた期間内の手続きが求められますので、準備・検討は速やかに行わなければなりません。

 

すべての相続人が共同で手続きすること

民法923条によれば、限定承認を行うにはすべての相続人による同意が必要とされています。相続人のうち1人でも反対する者がいた場合や1人でも単純承認した者がいた場合などは、他の相続人が同意していたとしても限定承認は認められないことになります。

 

被相続人の配偶者と子1~2人の計3人程度であれば、全員が顔を合わせて相続の形について話し合うこともできるでしょう。しかし、相続人の人数が多い場合や相続人が遠方に住んでおりなかなか会うことができない場合などは、話し合いや共同での手続きに手間と時間を要するかもしれないことを理解しておきましょう

 

手続きの煩雑さを理解しておくこと

限定承認を選択した場合、上述のとおりすべての相続人により共同で申述を行う必要があったり、提出書類を収集するために時間や費用がかかったりすることが想定されます。

 

必要書類の準備ができて家庭裁判所に受理されたあとも、以下のように段階を踏んで手続きを進めていかなければなりません。

  1. 相続財産管理人の選任
  2. 債権者に対する官報公告の実施
  3. 名乗り出た債権者に対する弁済の実施
  4. 弁済完了後の遺産分割の実施

 

馴染みのない手続きを行うためには、相続の仕組みをきちんと理解しているだけではなく、相応の法的知識も求められます。家族を亡くしたことだけでも大きな精神的ショックを受けているのに、実務は確実に進めていかなければならず、相続人の負担は決して軽くはありません。専門家の力も上手に借りながら、効率良く手続きを進めていくことが大切です

 

まとめ

遺産の状況によっては限定承認が適していることもありますが、限られた期間内に手続きを完了させなければいけない点で、相続人には大きな負担となることが想定されます。ケースによっては内情や手続きが複雑化することもあるため、相続手続きに詳しい専門家に相談したり代行を依頼したりすることも考えてみるといいでしょう

 

当行政書士事務所は相続手続きに力を注いでおり、2,000件以上の代行実績を有しています。司法書士や税理士とも連携しているため、遺産に不動産が含まれていたり相続税の納付に備えたりしたい場合でも、各分野の専門家によるトータルサポートが可能です。相続手続きは時間との勝負という一面もありますので、まずは無料相談をご利用いただき、ご不安な点などについてぜひお聞かせください。

 

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