相続税がかかるのはどんな場合か
相続が発生した際、すべての人に相続税が課されるわけではありません。相続財産が一定の金額(基礎控除額)を超えた場合にのみ課税対象となります。
一般的な家庭では、ほとんどが基礎控除の範囲内に収まるため、相続税がかからないケースが多いですが、高額な不動産や保険金がある場合には課税の可能性があります。
相続税がかかるのは誰か
相続税がかかるのは、単に「相続人」だけではありません。以下のいずれかに該当する人は相続税の対象になり得ます。
① 相続によって財産を受け取った人
配偶者・子などの法定相続人だけでなく、相続分を受け取るすべての人。
② 遺贈によって財産を受け取った人(相続人以外も含む)
- 知人に遺言で財産を残したケース
- 相続放棄をした人が生命保険金を受け取ったケースなど
③ 相続時精算課税を利用して生前贈与を受けた人
相続時精算課税は、贈与時に最大2,500万円まで非課税となる制度です。しかし最終的には、相続時に「相続財産に加算」されて相続税の対象になります。
相続税の主な控除・特例一覧
相続税の控除や特例は、適用できるかどうかで税額が大きく変わる制度です。特に配偶者控除や小規模宅地等の特例は影響が大きく、要件確認や申告ミスを防ぐためにも、早めに専門家へ相談することが重要です。
① 基礎控除
相続税がかかるかどうかを判断する最も基本的な控除です。「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、この金額以内なら申告・納税は不要です。
② 配偶者控除(配偶者の税額軽減)
配偶者が取得した財産について、1億6,000万円または法定相続分まで相続税がかかりません。適用には期限内の相続税申告が必須です。
③ 未成年者控除
相続人が18歳未満の場合に適用される控除です。「(18歳−相続開始時の年齢)×10万円」が相続税額から差し引かれます。
④ 障害者控除
相続人が障害者である場合に受けられる控除です。85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)が相続税額から控除されます。
⑤ 相次相続控除
短期間に相続が連続した場合の税負担を軽減する制度です。前回の相続から10年以内に再度相続が発生した場合に適用されます。
⑥ 贈与税額控除
被相続人から生前贈与を受け、贈与税を納めていた場合に、その贈与税額を相続税から差し引くことができます。
⑦ 外国税額控除
海外にある財産について、現地で相続税や類似税を納めた場合、日本の相続税から二重課税分を控除できる制度です。
⑧ 小規模宅地等の特例
居住用・事業用の土地について、評価額を最大80%減額できる強力な特例です。適用には要件確認と相続税申告が必須となります。
⑨ 特定計画山林の特例
一定の計画に基づき管理されている山林について、相続税評価額を軽減できる制度で、林業従事者などが対象になります。
⑩ 生命保険金の非課税枠
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。超えた部分のみが相続税の課税対象となります。
相続税の基礎控除の計算方法
相続税には、相続財産から一定額を差し引ける「基礎控除額」が定められています。この控除内であれば課税は発生しません。
基礎控除の計算式
3,000万円+(600万円 × 法定相続人の人数)
たとえば、相続人が3名の場合は、「3,000万円+(600万円×3)=4,800万円」が控除額です。また、生命保険金や死亡退職金には、「500万円×法定相続人の人数分」の非課税枠が認められています。
正味の遺産額の求め方
課税額を算出するためには、まず「正味の遺産額」を計算します。
これは、被相続人の財産総額から借金や未払い債務、葬儀費用などを差し引いたものです。
■例(東京税理士会の例を参考)
|
項目 |
金額 |
備考 |
|
現金・預金・株式 |
8,700万円 |
— |
|
土地 |
1,600万円 |
小規模宅地特例適用後の評価額 |
|
建物 |
1,000万円 |
— |
|
生命保険金 |
4,500万円 |
— |
|
借入金 |
△700万円 |
— |
|
葬儀費用 |
△300万円 |
— |
合計(正味の遺産額)=1億4,800万円
【1】課税価格の計算
財産を受け取った人ごとに課税価格を計算します。
課税価格の計算式
プラスの財産 − マイナスの財産(債務・葬式費用)= 課税価格
プラスの財産例
- 預貯金
- 不動産
- 生命保険金(非課税枠超過分)
- 有価証券 など
マイナスの財産(債務控除)例
- 借金・ローン残債
- 未払い医療費
- 葬式費用 など
【2】課税総額の計算
課税遺産総額を算出します。
課税価格の総額ー基礎控除額=課税遺産総額
法定相続人が法律通りに相続したと仮定して、相続税の総額を求めます。相続人が3人(配偶者1名、子2人)だった場合、遺産1億円を以下のように分けると仮定してみましょう。
|
相続人 |
相続割合 |
相続額 |
税率 |
控除額 |
相続税額 |
|
配偶者 |
1/2 |
5,000万円 |
20% |
200万円 |
800万円 |
|
子A |
1/4 |
2,500万円 |
15% |
50万円 |
325万円 |
|
子B |
1/4 |
2,500万円 |
15% |
50万円 |
325万円 |
法定相続人が3名(配偶者+子2名)とすると、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3)=4,800万円」。よって、「1億4,800万円−4,800万円=課税遺産総額1億円」となります。
その後、法定相続人が法律通りに相続したと仮定して、相続税の総額を求めます。
【3】各相続人の税額を算出
最後に、【2】で求めた相続税の総額を、実際に財産を取得した割合で各人に割り振ります。
さらに次の調整を行い、最終的な納付額を確定させます。
- 配偶者控除
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
- 生前贈与加算 など
これによって、個々の相続人が納めるべき税額が確定します。
まとめ
相続税は基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人数)を超える場合のみ課税対象となります。
まずは、財産から借金・葬儀費用を差し引いた「正味の遺産額」を算出し、相続金額の大きさに応じて10%~55%まで段階的に設定された税率を適用して、最終的な相続税額を求めるのです。
正確な評価や特例の適用には、税理士など専門家の確認が安心ですので、早めに相談することが大切です。










