遺言者が自筆証書遺言保管制度を利用しており、申出があった場合、遺言者の死亡の事実が判明したときに、相続人等に対して通知が送られます。自筆証書遺言書の存在が相続人等に伝わらなければ、遺言書の内容を実現することができず、また相続人は何も知らないまま遺産分割協議を行ってしまうかもしれませんので、通知の仕組みは非常に役立つものとなっています。
【この記事の要点】
- 自筆証書遺言保管制度のしくみ
- 関係遺言書保管通知と指定者通知の概要
- 通知の記載事項
- 遺言書情報証明書の交付請求
ここでは、自筆証書遺言保管制度における通知の種類やしくみについて説明していきます。「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」の2種類がありますので、違いなども比較していきましょう。
遺言書の存在を知らせる「通知」とは
自筆証書遺言は自分で作成できる点がメリットであり、多くの人が利用している遺言作成方法です。しかし、自分自身で作成した遺言書に誤りがないか、偽造や変造がなされないか、自分が亡くなったときに遺言書を確実に発見してもらえるかなど、不安な点があるのも事実です。
法務局が自筆証書遺言を保管してくれる自筆証書遺言保管制度を利用すれば、遺言書の外形的なチェックを行ってくれますし、遺言書原本およびデータを保管してくれます。これにより、遺言書を紛失したり偽造・変造などを防いだりすることが可能です。
残る問題は、「適切なタイミングで遺言書の存在を相続人にどう知らせるか」ということになってくるでしょう。そこで活きてくるのが「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」という2種類の通知です。相続人等はこれら通知を受け取ることで、遺言書の存在を知り相続手続きを進めるきっかけを得ることになるのです。
「関係遺言書保管通知」と「指定者通知(死亡時通知)」
自筆証書遺言保管制度における2種類の「通知」について、それぞれの特徴を整理していきます。
関係遺言書保管通知
関係遺言書保管通知とは、遺言者が死亡したあと、相続人等が「保管されている遺言書を閲覧したとき」または「遺言書情報証明書の交付を受けたとき」に、遺言書保管所がすべての相続人等に対して、遺言書が存在する旨を通知するものです。
関係遺言書保管通知でわかる事柄は以下の通りです。
- 遺言者の名前
- 遺言者の出生の年月日
- 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称
- 保管番号
なお、通知に記載されているのは上記事項のみであるため、遺言の内容を確認することはできません。遺言内容を確認するためには、通知に記載されている遺言書保管所に出向いて遺言書を閲覧するか遺言書証明情報を交付してもらう必要があります。
指定者通知
指定者通知とは、遺言者が死亡した事実を遺言書保管官が確認したとき、遺言者が事前に指定していた者に対し「遺言書が遺言書保管所に存在する」旨を通知するものです(遺言者があらかじめ指定していなかった場合は指定者通知は行われません)。
遺言者が遺言書保管申請時に指定者通知を希望していれば、遺言者が「遺言書を遺していること」を明かさないまま亡くなった場合でも、指定した者に遺言書の存在事実が伝わります。その者が遺言書を閲覧等することにより、他のすべての相続人に対して関係遺言書保管通知が送られ、遺言書の存在は皆の知るところとなります。
指定者通知でわかる事柄は、以下の通り関係遺言書保管通知の場合と同じです。
- 遺言者の名前
- 遺言者の出生の年月日
- 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称
- 保管番号
関係遺言書保管通知と指定者通知の違い
関係者遺言書保管通知と指定者通知の違いを整理してみましょう。
| 関係遺言書保管通知 | 指定者通知 | |
|---|---|---|
| 通知のタイミング | 相続人等が遺言書情報証明書を請求したとき・相続人等が遺言書を閲覧したとき | 遺言者の死亡の事実を遺言書保管官が確認したとき |
| 通知する相手 | 相続人 · 受遺者 · 遺言執行者すべてに対して通知 | 遺言者があらかじめ指定していた者 |
通知内容
遺言書保管官の名前で届く通知には、遺言者の名前・遺言者の出生の年月日・遺言書が保管されている遺言書保管所の名称が記載されています。届いた通知が「関係遺言書保管通知」か「指定者通知」かは、通知の表題を見るとわかります。
「関係遺言書保管通知」には、注意事項として次の事柄が記載されています。
- 遺言書情報証明書の交付請求ができる旨
- 遺言書の閲覧または遺言書情報証明書の交付請求(送付による請求を除く)を行う場合は、事前に遺言書保管所に対する予約が必要である旨
「指定者通知」には、注意事項として次の事柄が記載されています。
- 当該通知が、遺言者からの申出に基づき事前に通知対象者を指定して行われるものである旨
- 通知を受けた者が遺言者の相続人・遺言書に記載されている受遺者・遺言執行者等に該当する場合、遺言書の閲覧または遺言書情報証明書の交付請求ができる旨
- 遺言書の閲覧または遺言書情報証明書の交付請求(送付による請求を除く)を行う場合は、事前に遺言書保管所に対する予約が必要である旨
遺言書情報証明書の交付請求の流れ
相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けるために、あらかじめ交付請求の手続きの流れを理解しておきましょう。
最寄りの遺言書保管所を探す
通知を受け取ったら、速やかに最寄りの遺言書保管所を調べて出向き、遺言内容を確認するか遺言書情報証明書の交付請求を行いましょう。札幌市の場合は札幌法務局が該当します。
札幌法務局(本局)
札幌市北区北8条西2丁目1番1 (札幌第1合同庁舎1階・2階)
また、交付請求ができる人物は通知に記載されているとおりです(相続人・受遺者等・遺言執行者等)。
遺言書情報証明書交付請求の必要書類を用意する
遺言書情報証明書の交付請求を行う場合は、次の書類を用意して窓口または郵送で提出します。
【関係遺言書保管通知を受領した場合】
- 遺言書情報証明書の交付請求書(1通あたり1,400円分の収入印紙を用意)
- 請求人の住民票
- 請求人の有効期限内の顔写真付き公的身分証明書(窓口受取の場合)
- 請求人の住所氏名を記載した切手貼付済みの返信用封筒(郵便受取の場合)
- 法人の登記事項証明書(法人が請求人である場合)
- 親権者はその戸籍謄本・後見人等はその登記事項証明書(法定代理人が請求人である場合)
【関係遺言書保管通知を受領していない場合】
- 遺言書情報証明書の交付請求書(1通あたり1,400円分の収入印紙を用意)
- 法定相続情報一覧図の写し(ない場合は次のすべての書類:遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・全相続人の戸籍謄本・全相続人の住民票)
- 請求人の有効期限内の顔写真付き公的身分証明書(窓口受取の場合)
- 請求人の住所氏名を記載した切手貼付済みの返信用封筒(郵便受取の場合)
- 請求人の住民票(受遺者や遺言執行者が請求人となる場合)
- 法人の登記事項証明書(法人が請求人である場合)
- 親権者はその戸籍謄本・後見人等はその登記事項証明書(法定代理人が請求人である場合)
遺言書情報証明書の交付請求申請の予約を行う
窓口で遺言書情報証明書を受け取りたい場合は、事前の予約が必要です。管轄の法務局(遺言書保管所)の窓口または電話で予約を取りましょう。
遺言書情報証明書の交付
無事に遺言書情報証明書の交付を受けたら、記載内容を確認していきます。同書類の記載事項は以下の通りです。
◆遺言書の画像情報
◆遺言書に記載されている作成の年月日
◆遺言書の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
◆遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
・受遺者
・遺言執行者(民法第1006条第1項の規定により指定された者)
◆遺言書の保管を開始した年月日
◆遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
◆遺言書に記載された法第9条第1項に掲げる関係相続人等(遺言者の相続人、受遺書及び遺言執行者を除く。)の氏名又は名称及び住所
◆申請書に記載された事項のうち受遺者等又は遺言執行者等の出生年月日及び会社法人等番号
※法務局ホームページから引用
まとめ
自筆証書遺言保管制度における関係遺言書保管通知・指定者通知は、いずれも「遺言者が遺言書保管所に遺言書を遺している」ことを知らせるための仕組みです。遺言書の存在事実を知らせることが目的ですから、いずれの通知でも遺言内容まではわかりません。通知が届いたら後回しにせずすぐに遺言書保管所で遺言内容を確認することが大切です。
このように、自筆証書遺言には法務局による比較的充実した支援が用意されていますが、法務局では遺言書の外形的なチェックと保管を行うに留まります。法的に有効な遺言書を作成するためにも、自筆証書遺言を検討している場合はぜひ当行政書士事務所の無料相談をご利用ください。










