遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を自由に撤回することができます。そのため、遺言の無効が問題となるのは、通常、遺言者の死亡後になります。

 

遺言書は、相続トラブルを防ぐ有効な手段ですが、形式や内容に不備があると「無効」と判断される可能性がある点にも注意しましょう。せっかく作成した遺言書が無効となれば、法定相続に従って分割することになり、遺言者の意思は実現されません。

 

ここでは、遺言が無効になる原因と、無効を防ぐためのポイントを整理していきます。

 

遺言書の無効原因

 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を自由に撤回することができます。そのため、遺言の無効が問題となるのは、通常、遺言者の死亡後になります。遺言が無効になる原因としては以下のようなものがあげられます。

遺言に特有な無効原因
方式違背 法律に定める方式に従わなければ遺言は無効です。
遺言能力の欠如 満15歳以上にならなければ遺言能力がないので無効です。
共同遺言 2人以上のものが同一の証書でした遺言は無効です。

被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言

被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効です。(ただし、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用されません。

上記表について、詳しく解説します。

 

方式違背

法律に定める方式に従わなければ遺言は無効です。たとえば、自筆証書遺言(民法968条)は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と規定されています。

 

したがって自筆証書遺言では、

  1. 遺言書の中身全てを自分の自筆で書く事。
  2. 日付を書き忘れない事。
  3. 氏名を自書する事を忘れない事。
  4. 印を押し忘れない事。

これらを欠くと、遺言は無効になります。

 

財産目録については現在パソコン作成が認められていますが、署名押印の方法などに不備があれば効力が否定される可能性があります。また、自筆証書遺言は1つでも不備があれば、遺言書としての効力が発揮されず、意味の無い紙になってしまうので注意が必要です。一方、公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、方式違反により無効となるリスクは比較的低いといえます。

 

遺言能力の欠如

満15歳以上にならなければ遺言能力が認められないので、遺言書を作成しても無効とされます。また、年齢を満たしていても、遺言作成時に意思能力(判断能力)がなかった場合は無効となります。

 

高齢者の場合、認知症の進行状況が争点となり、医療記録や介護記録、当時の言動などが証拠として検討されます。遺言能力の有無は、実務上非常に争われやすいポイントです。

 

共同遺言

2人以上が同一の遺言書を作成した場合は無効とされます。たとえば、夫婦が一通の遺言書に連名で記載することは認められていません。各自が個別に遺言を作成する必要があります。

 

被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言

被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は無効です。これは、後見人による影響力の行使を防止する趣旨の規定です。

 

ただし、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用されません。

 

法律行為に係る無効原因

法律行為に関係する遺言書無効原因をみていきましょう。

法律行為一般の無効原因
公序良俗違反

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする遺言は、無効です。極端な例ですが、例えば、誰かを殺したらあなたに全財産を相続させるなどの誰が考えてもよくない遺言は無効です。

錯誤

意思表示の重要な部分について錯誤があった場合は、その遺言は原則無効です。錯誤がなければそのような遺言はしなかったであろうことが推測できる場合などです。

それぞれについて詳しく解説します。

 

公序良俗違反

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする遺言は無効です。極端な例ですが、例えば誰かを殺したらあなたに全財産を相続させるなどの誰が考えてもよくない遺言は無効です。社会通念に反する内容や違法行為を条件とする遺言は認められません。

 

錯誤

意思表示の重要な部分について錯誤があった場合は、その遺言は原則無効です。錯誤がなければそのような遺言はしなかったであろうことが推測できる場合などです。たとえば、特定の相続人が既に死亡していると誤信して内容を決めた場合などが問題となります。

 

遺言事項と効力

遺言書に記載する項目としては、法律的に効力を発揮させる為の「遺言事項」と言うものがあります。遺言事項とは、大きく分けて、相続および財産処分に関する事と、身分に関する事、またその他と言う項目に分けられます。これ以外の事を遺言書に記載しても構いませんが、遺言事項以外の事については、法律的に効力は発生しないと考えて下さい。

 

ただし、付言事項として家族への想いや理由を書くことは、紛争防止の観点から非常に有効です。

 

遺言の取消

遺言書は、生前はいつでも撤回ができるため、遺言の取消を認める意味はないように思えます。しかし、詐欺や強迫によって遺言書が作成され、その後、遺言者が何らかの理由で意識不明になり意思能力を失ったような場合には、遺言者は自ら撤回・取消をすることはできませんので、遺言者の代わりに遺言者の成年後見人などが取消権を行使する必要があります。なお、取消権は相続人に相続されます。

 

まとめ

遺言書は相続トラブルを防ぐ有効な手段ですが、方式違反や遺言能力の問題などにより無効となるケースは少なくありません。せっかくの遺言を無効にしないためには、形式の厳守と専門家の関与が重要です。

 

確実に意思を実現するためにも、作成時には十分な検討を行い、法的に有効な遺言書を準備しておきましょう。

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