遺言書の種類と基本的な違い
遺言書にはいくつかの種類があり、方式ごとに効力や手続きの手間が大きく異なります。まずは代表的な遺言書の種類と特徴を理解することが重要です。
普通方式の遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、実務上多く利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。いずれの遺言書も、作成方式に不備があると無効になってしまうため、事前に手順や記載事項、注意点を必ず確認しておきましょう。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自書し、日付・署名・押印を行う方式です。不備があると無効になるおそれがあるため形式面での注意が必要です。
自筆証書遺言は本人の自書で作成されていることが前提ですが、2019年の法改正により、財産目録についてはパソコン作成や通帳コピーの添付が認められました。ただし、各ページへの署名押印が必要です。
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要で、相続人が勝手に開封することはできません。検認を経ずに開封した場合、過料の対象となることがあります。
なお、自筆証書遺言には、紛失や改ざんといったリスクが伴いますので、どう保管するかとても重要です。そこで利用をお勧めしたいのが、2020年7月開始の「自筆証書遺言書保管制度」。同制度を利用すれば、自筆証書遺言を法務局で保管でき、また検認が不要になります。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、法律上の不備が生じにくく、確実性の高い遺言方式です。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。また、証拠力が高く、遺言の有効性が争われにくい点が特徴です。
公正証書遺言のメリット
検認が不要で相続開始後すぐに内容を確認できるほか、体が不自由な方や入院中の方でも作成が可能です。方式不備による無効リスクが極めて低いだけでなく、遺言執行者を指定することで、相続手続きがスムーズに進みます。
公証人の出張による作成
公証人が自宅や病院へ出張し、その場で遺言書を作成することもでき、移動が困難な場合でも安心です。ただし、公証人が出張する場合、別途日当や交通費が必要になりますので、あらかじめ確認しましょう。
病院で公正証書遺言を作成する場合は、遺言能力に疑義が生じないよう医師の診断書を求められることがあります。
公正証書遺言をおすすめする理由
遺言の確実性や相続人の負担軽減を考えると、公正証書遺言はトラブル防止の観点から非常に有効な手段といえます。特に「財産が多い」「相続人関係が複雑」「遺留分トラブルが予想される」ケースでは公正証書遺言が適しています。
公正証書遺言の作成手続き
公正証書遺言は、事前準備から完成まで一定の流れに沿って進められます。
遺言内容の整理と証人の確保
遺言内容を明確にし、2名以上の証人を事前に選定する必要があります。証人にはなれない人がいるため注意が必要です。遺言内容には、不動産の正確な表示、預貯金口座の特定など具体性が求められます。
また、戸籍謄本、印鑑証明書、不動産の登記事項証明書などの提出が必要になります。
証人になれない人
未成年者、推定相続人、受遺者、その配偶者・直系血族、公証人や公証役場関係者、4親等内の親族などは証人になれません。
公証役場との事前打ち合わせ
打ち合わせは電話やFAXで進めることができ、遺言文案を確定させたうえで作成日を迎えます。
遺言当日の流れ
遺言者は公証人に対して遺言内容を「口授」する必要があります。口授された遺言内容は公証人が書き取り、公証人が書き取った遺言内容を読み上げ、遺言者・証人・公証人が署名押印することで、公正証書遺言が完成します。完成後、正本・謄本が交付されますが、原本は公証役場に保管されます。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較まとめ
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較してみましょう。
費用面
- 自筆証書遺言はほぼ無料
- 公正証書遺言は公証人手数料が必要
安全性
- 公正証書遺言のほうが無効リスクが低く保管面でも安全
手続き負担
- 自筆証書遺言は検認が必要
- 公正証書遺言は不要
作成の手軽さ
- 自筆証書遺言は一人で作成可能
- 公正証書遺言は証人と公証人が必要
まとめ
遺言の方式選択は、ご自身の財産状況や家族関係、将来の紛争リスクを踏まえて慎重に判断することが重要です。できるだけ専門家の助言を受け、間違いのない遺言書作りを行うことがとても大切になってきます。










