遺言を補うための要素として「付言事項」を活用してみましょう。遺言者の心情や財産分割の背景事情について書き残すことができるため、相続トラブル回避にも役立ちます。ここでは、遺言書に加える付言事項の意味や書き方について説明していきます。
相続トラブル防止策にもなる「付言事項」
遺言者は遺言書をもって自ら所有する財産分割の方法を希望することができます。次男に多く相続させたい、公的団体に寄付したい、お世話になった方に遺贈したいなど、遺言者の人生に深くかかわった人たちに対する感謝のしるしとして、どのように財産分割して欲しいかを遺言書に書き残すことができるのです。
遺言者が財産分割の在り方について決定するとき、相手がいかに自分に尽くしてくれたか、どういう理由で特定団体を応援したいかなど、遺言者の体験や感情に強く紐づいていることが想定されます。遺言書は財産分割の方法を伝える書面ですが、そこに「付言事項」として「なぜそのような財産分割を希望するか」を伝えることで、相続人への理解を促したり相続人によるトラブルを抑止したりすることができるでしょう。
法定遺言事項は法的効力を持つ
法律では、遺言書でどの事柄に法的効力を与えられるかが決まっており、これを法的遺言事項といいます。具体的には次のような事柄を挙げることができます。
- 財産に関する事柄(相続財産の分割方法の指定など)
- 身分に関する事柄(遺言認知・未成年後見人の指定・相続人廃除など)
- その他の事柄(生命保険金の受取人指定・祭祀主宰者の指定など)
これらの事柄について遺言書に記載した場合、遺言者の死亡とともに各事項は法的効力を持つことになります。
付言事項は法的効力を持たない
遺言書には、法的遺言事項以外にも遺言者の心情や背景事情などを付言事項として記載することが可能です。例えば以下のようなメッセージが付言事項に当たります。
- 家族や知人、友人などへの感謝の言葉
- 財産分割に関する背景事情の説明
- 遺留分が発生する場合の遺留分侵害額請求の防止
相続人として特に気になるのは、特定の相続人が多く遺産を相続する場合や相続人ではない人物・団体に遺贈または寄附をするケースでしょう。なぜ遺言者がそのような遺産分割内容にしたのかを付言事項で述べておくことで、相続人同士のトラブルを回避する一助になるはずです。
付言事項の記載例
遺産分割の在り方によって、付言事項で述べる言葉の選び方も変わってきます。たとえば、特定の相続人に多く財産相続させたい場合について考えてみましょう。
遺言者を長く介護してきた次男に多く相続させたい場合
遺言の文言と付言事項は次のように記載するといいでしょう。遺言事項や付言事項については、専門家によるチェックを受けることをおすすめします。
- (例1)遺言者は、遺言者が有する財産のうち〇〇について、遺言者の二男である●山●男(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
- (例2)遺言者は、遺言者が有する財産のうち3分の2を、遺言者の二男である●山●男(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。
- (付言事項例)
遺言者〇〇は妻〇〇に先立たれた後、長年1人で暮らしてきました。途中、重病を患い介護が必要になってからは、二男●山●男は遺言者〇〇の世話を長期的かつ献身的に行ってくれたことに大変感謝しています。遺言者〇〇は二男●山●男への感謝に報いたく、財産の3分の2を相続させたいと希望します。長男●山●介はぜひこのことを理解し、遺留分侵害額請求を行うことなく、今後も2人仲良く助け合っていってほしいと願います。
このように付言事項を書き添えることで、一見不平等にみえる遺産分割内容の背景事情や遺言者の心情を理解することができ、相続人同士の揉め事を未然に防げる可能性が期待できます。
まとめ
付言事項を記載したからといって、すべての遺言内容が希望通りに実行されるとは限りませんが、遺言者としての思いや考えを記すことで、相続人の心に強い影響を与えることができるでしょう。
遺言書は、遺産分割内容を伝えるためだけではなく、相続人同士のトラブルを防ぐ役割も持ちますので、付言事項を有効活用し円満な相続の実現を目指して遺言書を作成することをおすすめします。










