相続争いはなぜ起こるのか
相続の場面で最も多いトラブルの一つが、家族・親族間の相続争い(遺産トラブル)です。相続人が一人だけであれば争う相手はいませんが、共同相続人が複数いる場合には、
「兄ばかりが多くもらって不公平だ」
「介護をしたのに評価されていない」
といった不満が原因で、感情的な対立に発展することがあります。
特に、遺産に不動産(実家や土地)が含まれる場合や、遺言書がない場合には、分け方の判断が難しくなり、争いに発展しやすい傾向にあります。
相続争いの末路とは
相続争いの末路は、「お金が増える」ことではなく、家族関係の断絶・財産価値の減少・長期的な精神的負担に行き着くケースがほとんどです。争いが激化すると、調停や訴訟に発展し、結果として「誰も得をしない相続」になることも珍しくありません。
家族関係が完全に壊れる
相続争いで最も深刻な影響は、家族・親族関係の断絶です。兄弟姉妹が互いに不信感を募らせ、相続後は一切連絡を取らなくなる、冠婚葬祭にも出席しなくなるといったケースは多く見られます。一度壊れた関係は、相続が終わっても修復が難しく、一生のしこりとして残ることも少なくありません。
調停・裁判に発展し、解決まで何年もかかる
話し合いでまとまらない場合、家庭裁判所での遺産分割調停や、さらに遺産分割審判・訴訟へ進むことになります。
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調停だけで半年~1年以上
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裁判になると数年単位
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その間、不動産は売れず、預金も自由に使えない
「早く終わらせたい」という気持ちとは裏腹に、時間だけが過ぎていくのが現実です。
弁護士費用・手続費用で財産が目減りする
相続争いが法的手続きに移行すると、弁護士費用・鑑定費用・裁判費用などが発生します。
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着手金・成功報酬
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不動産鑑定費用
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収入印紙・郵券代
これらは最終的に相続財産から支払われることも多く、「争った結果、取り分が減る」という皮肉な結果になりがちです。
不動産が共有のまま塩漬けになる
相続争いの典型的な末路が、不動産の共有状態が解消されないまま放置されることです。
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売却には共有者全員の同意が必要
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誰も住まないのに固定資産税だけが発生
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修繕や管理の責任を巡ってさらに対立
結果として、不動産は活用も売却もできず、負担だけが残ることになってしまいます。
相続争いが次の世代へ引き継がれる
相続争いが長期化すると、当事者が亡くなり、数次相続が発生することもあります。
すると、
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相続人の数がさらに増える
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利害関係が複雑化する
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話し合いがほぼ不可能になる
という悪循環に陥り、争いが子や孫の世代まで続くケースも現実に存在します。
相続争いを避けるためにできること
相続争いの多くは「事前の準備不足」が原因です。具体的には、遺言書を作成していなかったり、財産内容が不明確だったり、生前贈与や特別受益の整理がされていなかったりして、争いに発展することが多いのです。
早めに遺言書を作成し、専門家を交えて整理することが最大の予防策といえるでしょう。
【トラブル回避策】被相続人による「遺言書の作成」
相続争いを防ぐ最も確実な方法は、被相続人(亡くなった方)本人が遺言書を作成しておくことです。遺言書を作ることで、誰に何をどの割合で相続させるかを明確にでき、残された家族が遺産分割でもめるリスクを大きく減らせます。
遺言書で意識すべきポイント
- 各相続人の生活状況・貢献度を考慮して公平に分ける
- 内容を家族に伝えておく(突然の遺言による衝撃を防ぐ)
- 公正証書遺言にして法的効力を確実にする
たとえば、「兄は介護を担ってきたので自宅を継ぐ、弟は預貯金を受け取る」といった形で、あらかじめ分け方を明記しておくと、納得を得やすくなります。
【トラブル回避策】生前の「家族間の話し合い」
「死後の話をするのは縁起が悪い」と感じる方も多いですが、被相続人が生前に家族と率直に話しておくことが、争いを防ぐ最大の予防策です。
相続に関する話し合いを避けた結果、被相続人の真意がわからないまま相続が進み、兄弟姉妹間の不信感や不公平感が生まれるケースは非常に多く見られます。
生前に、
- 誰が何を相続するのか
- どのような理由でその分け方にするのか
を一度でも話しておくことが、家族関係を壊さないための最善策です。
相続争いに巻き込まれた場合の対処法
それでも、遺産分割をめぐって争いに発展してしまった場合には、次のような法的手段を検討しましょう。
① 相続放棄で争いから完全に離脱する
相続争いに関わりたくない、またはマイナス財産(借金など)が多い場合には、相続放棄をすることで、最初から相続人でなかったことにできます。
相続放棄をすれば、
- 遺産分割協議に参加する必要がなくなる
- 財産も債務(借金)も一切引き継がない
という状態になります。家庭裁判所に申立てを行うことで手続きが可能です。
② 遺留分侵害額請求で最低限の権利を守る
「遺言書に自分の取り分が少なすぎる」「まったく相続分が記載されていなかった」という場合には、遺留分侵害額請求が可能です。
遺留分とは、法定相続人に認められた最低限の取り分を保証する権利です。たとえ遺言書に「長男に全財産を相続させる」と書かれていても、他の相続人(配偶者や子ども)は一定の割合を請求できます。
この制度を利用することで、完全に不公平な分割を防ぐことができます。
相続争いを防ぐには被相続人と相続人の意識が重要
相続トラブルの多くは、「知らなかった」「聞いていなかった」が原因です。被相続人が事前に意思を示し、相続人がその考えを理解しておくことが、相続争いを回避する最も効果的な方法です。
また、どうしても対立が避けられない場合は、専門家を間に入れ、冷静な第三者の視点で話し合いを進めることをおすすめします。
まとめ
相続は、財産の承継であると同時に、家族の関係を映す鏡です。
悲しみの中で争うことがないよう、
- 被相続人は遺言書で意思を明確に残す
- 家族は生前からオープンに話し合う
- トラブルになったら早めに法的手続きを検討する
といった準備をしておくことが大切です。










