会社を経営していた被相続人が亡くなった場合、自社株や事業用不動産などの評価額が高くなり、相続税が高額で支払えない事態に陥ることがあります。本記事では、相続税が払えない典型例と、実務で取られる5つの対処法についてわかりやすく解説します。
会社経営者の相続で相続税が払えない理由
会社経営者の相続では、次の財産が相続税の課税対象になります。
- 自社株(非上場株式)
- 事業用不動産・設備
- 経営者から会社への貸付金
- 現預金や有価証券
特に非上場株式は会社の業績や資産内容によって評価額が高額になることが多く、現金がほとんど残っていないのに高額な相続税だけが発生するというケースが少なくありません。
次に、相続税が払えない典型的なケースについてみていきましょう。
自宅不動産しか相続財産がない場合
被相続人が十分な現金や預貯金、換価可能な財産を残していれば、相続税の支払いは可能であることが想定できます。しかし、主な相続財産が「同居していた被相続人名義の自宅不動産」である場合、売却して金銭に換えることができず難しい状態になります。
自社株が相続財産の大半を占める場合
被相続人が経営していた会社の株式が主な相続財産であり、かつ会社をそのまま存続させたい場合は、株式を売却するわけにはいきませんので相続人が自腹を切って相続税を納める必要があります。
なお、被相続人が経営していた会社に一定程度評価されており、その株を相続した場合、相続税の額も高額になる可能性があります。そのような場合は、事業存続と相続税の支払いについて慎重に比較検討しながら答えを出さなければなりません。
相続税が払えないときの5つの対処法
もし、相続税の納税が難しいと判断した場合、どのように対処すればいいのでしょうか。ここでは5つの方法について紹介します。
【1】相続税を延納する
相続税はある程度大きな金額になることが想定されますので、もし一括で納めることが難しい場合は延納制度を利用するといいかもしれません。
相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。 これを延納といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。
※国税庁ホームページより抜粋
延納の条件
延納を認めてもらうためには、次に挙げる条件を満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超えること。
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。)
- 延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
※国税庁ホームページ参照
【2】相続税の物納を行う
現金で納付できない場合、相続した不動産などを国に引き渡して納税に代える「物納」が認められることがあります。ただし、評価額が低く算定される場合もあり、必ずしも有利とは限りません。
条件は大きく以下の2つになります。
- 物納する財産が相続したものであること(相続人がもとから所有する財産は不可)
- 物納する財産は相続税評価額で換算されること
物納財産の評価方法に注意
注意したいのは、物納する財産が相続税評価額で換算される点です。前経営者である被相続人が小規模宅地等の特例を利用して得た不動産を相続した場合、その評価額は特例により評価額が下がった後の金額をもとにして相続税評価額が導き出されます。最終的に、思っていたよりも金銭的価値がつかず物納に向かないことがわかった、というケースが散見されるのです。
売却して金銭に換えた方が、メリットが大きい場合もあるので、あらかじめ専門家に相談することをおすすめします。
【3】他の相続人から借りて納税する
他の相続人からお金を借り、相続税の納税に充てる方法もあります。肩代わりしてもらった場合、今度はその金銭について贈与税がかかる可能性も出てくるため、借用書を用意し、あくまでも一時的な立て替えであることを証明しましょう。
【4】相続不動産などを売却して納税資金を確保する
先に述べたように、物納をするよりも財産を売却して金銭に換えた方がいい場合も多々見受けられます。
ただし、相続税の申告期限は「被相続人が死亡し相続が開始したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。不動産の売却を想定すると、非常に短い期間で売却を成功させなければなりません。このため、不動産業者と連携をとりできるだけ早いタイミングで売却活動を開始する必要が出てきます。
また、不動産売却の際は譲渡所得税や手数料などがかかることから、実際に手元にいくら残るのか正確に計算することも忘れてはいけません。なお、売却するかどうかにかかわらず、不動産の相続登記が必要になります。
【5】相続放棄を選択する
どう工夫しても相続税を納税できる見込みがない場合、相続放棄することも選択肢に入ってくるでしょう。事業を継ぐ意思がない場合は、あえて財産を手放すことで複雑な問題から解放されるという手段も残されています。
ただし、プラスの財産もすべて失うため、事業承継を考えている場合は慎重な判断が必要です。
まとめ
会社の経営者が亡くなり相続開始となったとき、被相続人の財産調査や相続するかの決定、相続手続の実施、相続税の計算と納付など、相続人にはやるべきことが一気にのしかかってきます。事業を引き継ぐかどうかの判断もさることながら、相続という馴染みのない手続きは決して単純ではなく、また大きなお金が動きますので心理的プレッシャーも大きくなることでしょう。
このようなときこそ、相続や事業承継などについて詳しい専門家の力を借り、できるだけスムーズな相続を実現させましょう。当事務所では、相続や事業承継、会社立ち上げなどのご依頼を数多く承っており、必要に応じて税理士など連携する専門家を紹介することもできますので、ぜひ安心してご相談ください。










