会社そのものは相続放棄できませんが、会社の株式・連帯保証・借金など「経営者個人の財産と債務」は相続放棄できます。事業を継がない場合は、廃業して相続するか、完全に相続放棄するかの二択となり、判断は相続開始から3か月以内に行う必要があります。
会社は相続放棄できる?基本的な考え方
被相続人が会社を経営していた場合、「会社をそのまま相続放棄できるのか」と疑問に思う方は多いですが、会社そのもの(法人)は相続の対象ではありません。相続の対象となるのは、あくまで経営者個人の財産と債務です。
相続の対象になる会社関係の財産とは
会社経営者が亡くなった場合、次のものが相続の対象になります。
- 会社の株式(非上場株式)
- 経営者名義の預貯金・不動産
- 会社の借入に対する連帯保証債務
- 経営者から会社への貸付金
これらはすべてプラスの財産・マイナスの財産として相続または相続放棄の対象となります。
事業を継がない場合の2つの選択肢
相続人に事業承継の意思がない場合、選択肢は次の2つです。
【1】廃業して相続する場合
この場合は次の流れになります。
- 会社を解散・清算
- 債務を返済
- 残った財産(あれば)を相続
借金が多い場合は、相続人が返済義務を引き継ぐことになるため、慎重な判断が必要です。
【2】完全に相続放棄する場合
この場合は、
- 株式を相続しない
- 連帯保証債務も相続しない
- 預貯金・不動産なども一切相続しない
という形で、経営者の財産と債務をすべて放棄することになります。
会社の借金と相続放棄の関係
中小企業の場合、経営者が会社の借入の連帯保証人になっていることがほとんどです。この連帯保証債務は、経営者が死亡すると相続人にそのまま引き継がれます。
- 相続すれば → 借金も相続
- 相続放棄すれば → 借金も相続しない
会社の借金から完全に逃れる唯一の方法が相続放棄ともいえます。
相続放棄の期限と手続き
相続放棄は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。この期間内に、会社の借金や連帯保証の有無、株式の評価などを調査し、判断しなければなりません。
放棄する財産は選べない
「借金だけ放棄して、株式だけ相続する」といったことはできません。すべて放棄するか、すべて相続するかの二択です。
相続放棄前に財産を使うと無効になる
相続放棄を検討中に、次の行為をすると単純承認とみなされ放棄できなくなることがあります。
- 被相続人の預金で借金を返す
- 株式を処分する
- 不動産を勝手に売却する
相続放棄は原則として撤回できない
「後からプラスの財産が見つかった」という場合でも、相続放棄は原則取り消せません。
相続放棄すると次の相続人に権利が移る
相続放棄をすると、次は被相続人の兄弟姉妹へ、兄弟姉妹が先に亡くなった場合はさらにその子(甥・姪)へと相続権が移ります。借金の問題が親族全体へ波及する可能性があるため、事前の説明も重要です。
限定承認との違い
限定承認とは、「相続したプラスの財産の範囲内で、借金を返済する」方法です。
- 借金 > 財産 → 差額は負担しない
- 借金 < 財産 → 残りは相続できる
ただし、相続人全員の同意が必要で、実務では利用が難しい制度です。
まとめ
被相続人が亡くなると同時に、葬儀を執り行う一方で事業に関する詳細を調査する必要があります。相続放棄の可能性を考えれば、3ヵ月以内に調査を完了して相続人が意思決定しなければなりません。
たとえば被相続人に莫大な借金があり相続人に大きな負担がかかるといった場合、相続放棄は非常に有効な手段となりますが、時間的制約があるなかで正確な手続きを進めたい場合は、法律の専門家に相談・依頼することを検討するのもいいでしょう。
当事務所でもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。










