「扶養」とは何を意味するのか
日常生活でよく使われる「扶養」とは、主な稼ぎ手がその収入で生活を支えている家族を指す言葉です。
例えば、夫が会社勤めで妻が専業主婦、または子どもがアルバイト程度の収入しかない場合、その妻や子どもは「扶養家族」に該当します。
この「扶養」という言葉は、法律上・税務上・社会保険上で意味が異なる点に注意が必要です。
税法上の扶養と所得控除の仕組み
最も一般的に使われるのは税金の場面です。
会社員は年初に「扶養控除等申告書」を提出し、年末調整で家族の収入状況を確認します。
所得税法上、扶養親族の合計所得金額が38万円以下(給与収入103万円以下)であれば、「扶養親族」として所得控除が受けられます。
年金受給者の場合も、65歳以上で158万円以下、65歳未満で108万円以下であれば対象になります。
扶養家族1人あたり38万円(特定扶養親族の場合は63万円など)が控除され、所得税や住民税が軽減される仕組みです。
健康保険上の扶養との違い
健康保険組合では、年金や不動産収入なども考慮するため、税法上の「扶養」と一致しないことが多くあります。
たとえば、税金上では扶養家族として認められても、健康保険では年収130万円を超えると対象外になるケースがあります。
また、「生計を一にする」ことが要件とされていますが、必ずしも同居している必要はなく、
勤務・修学・療養などの理由で別居していても、生活費や学費を定期的に送金していれば扶養関係が認められる場合があります。
相続税法上の「扶養義務者」とは
相続税法にも「扶養」という考え方が登場します。
特に注目すべきは、相続税法第19条の2および施行令第7条に定められた「扶養義務者」の扱いです。
相続税法上の扶養義務者とは、民法上の規定(民法第877条)に基づき、配偶者、直系血族、兄弟姉妹など相互に扶養義務を負う者を指します。
これは税法上の「扶養控除」とは異なり、相続税を計算する際に、扶養義務者間での金銭の授受が「贈与」とみなされないなど、課税関係に影響を与えます。
相続税法上の主な取扱い
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扶養義務者から生活費や教育費を受け取った場合、贈与税の課税対象にはならない(相続税法第21条の3第1項)
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扶養義務者が被相続人に生活費や医療費を支出していた場合、相続財産の中でその返済を求める権利は原則生じない
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相続税の申告時、同居の親族が扶養義務者であれば、小規模宅地の特例などで有利になるケースがある
このように、相続税法上の扶養義務者は、相続税や贈与税の課税判断に直接関係する存在です。
民法上の扶養義務との関係
民法第877条は、「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と定めています。
つまり、親子・祖父母・孫・兄弟姉妹などがこれに該当します。
相続税法上の扶養義務者の範囲は、この民法上の規定を基礎としており、配偶者や親子関係だけでなく、兄弟姉妹間にも適用されます。
ただし、婚姻関係にない内縁の配偶者は含まれません。
まとめ
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「扶養」は税法・社会保険・民法・相続税法で定義が異なる
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相続税法上の「扶養義務者」は、相続税や贈与税の課税判断に影響する重要な概念
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民法第877条に基づき、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養義務を負う
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扶養義務者間での生活費・教育費の授受は、贈与税非課税の取扱い
日常的に「扶養」という言葉を耳にしますが、税法上の控除や健康保険の認定、相続税上の扱いでは意味が異なります。
特に相続税法上の扶養義務者は、贈与税の課税除外や相続税の軽減措置に関係するため、相続や贈与の対策を行う際には正確な理解が欠かせません。










