相続人の一部が行方不明の場合、遺産分割協議は原則として成立せず、相続手続きを進めることができません。

 

対応方法は「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」の2つがあり、生存の可能性や失踪期間に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。いずれも家庭裁判所の関与が必要で書類準備や審判までに一定の期間がかかるため、早期の着手が重要です。

 

相続人が行方不明|遺産分割協議ができない理由

遺産分割協議は共同相続人全員が当事者となる必要があるため、行方不明者がいる場合その者を除いて協議を成立させることができません

 

兄弟姉妹と長年連絡が取れない場合や、相続人の住所が戸籍・住民票上で追えない場合でも、そのままでは協議を進めることはできません。金融機関や法務局でも相続人全員の関与が確認できなければ手続きを受け付けてもらえないため、実務上も大きな支障が生じます。

 

まず確認すべきは、連絡の取れない相続人が「不在者」に該当するのか、それとも「失踪宣告」が可能な状態なのかという点です。

 

行方不明の相続人への対応方法

行方不明の相続人がいる場合の対応方法は、主に「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」の2つです。

 

不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人の選任は、相続人が生存している可能性はあるが住所不明・連絡不能である場合に活用します。家庭裁判所が選任した代理人が、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。

 

失踪宣告

失踪宣告は、長期間にわたり生死不明である場合に申し立てる方法です。法律上死亡したものとみなし、その人を相続人から外して次順位の相続人や代襲相続人を確定させます。

 

Q.不在者財産管理人と失踪宣告、どちらを選べばよいか判断するポイントは何ですか?

A.失踪期間・生存の可能性・戸籍上の整理の必要性・手続きにかかる期間の4点を総合的に判断します。

生存の可能性が高く早期解決を望む場合は不在者財産管理人、長期間の生死不明で戸籍上の整理が必要な場合は失踪宣告が適していることが多いです。ケースごとに状況が異なるため、専門家に相談しながら判断することをお勧めします。

 

不在者財産管理人の権限と限界

不在者財産管理人を選任すれば手続きを進められますが、不在者財産管理人が自由に遺産分割に同意できるわけではなく、遺産分割協議への同意など重要な行為には家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要です。

 

不在者財産管理人になれるのは利益相反のない者

不在者財産管理人とは、従来の住所または居所を去り容易に戻る見込みがない者(不在者)の財産を管理するために家庭裁判所が選任する代理人です。選任の申立ては他の相続人や利害関係人(債権者など)が行います。選任されるのは親族・弁護士・司法書士・行政書士などが一般的ですが、利益相反がある場合には第三者(専門職)が選ばれることが多い傾向にあります

 

Q.不在者財産管理人を立てれば、自由に遺産を分割できますか?

A.自由に分割することはできません。

遺産分割には家庭裁判所の許可が必要です。不在者財産管理人は不在者の利益保護を優先する立場にあるため、不利な内容には同意しません。不在者については、最低でも法定相続分は相続することになります。

 

不在者財産管理人の選任が適しているケース

以下のような場合は不在者財産管理人の選任が適しています。

 

  • 失踪期間が7年未満:普通失踪の要件に満たない期間であれば失踪宣告は利用できません
  • 生存の可能性がある:行方不明であっても生存している可能性が高い場合
  • 早期に手続きを進めたい:失踪宣告より短期間での解決を目指す場合

 

たとえば、連絡を取ったことのない相続人の所在が不明であることが判明した場合や、数年程度連絡を取らなくなった兄弟姉妹などであれば、不在者財産管理人の選任が適しているといえます。

 

失踪宣告の仕組みと相続の手続き・注意点

失踪宣告は一定期間の生死不明状態を前提に法律上死亡とみなす制度です。失踪宣告の時期によって代襲相続や数次相続が発生するなど、相続関係に大きな影響を及ぼすため慎重な判断が必要です。

 

普通失踪と特別失踪の違い

種別 必要な期間
普通失踪 原則7年間の生死不明
特別失踪 事故・災害など危難後1年間の生死不明

※どちらに該当するかで手続きや立証の方法が変わります。

 

失踪宣告の時期によって相続関係が変わる

失踪宣告がいつ確定するかにより、相続関係への影響が異なります。

 

  • 被相続人より前に死亡扱い代襲相続が発生する可能性があります
  • 被相続人より後に死亡扱い数次相続となる可能性があります

 

たとえば、兄が失踪しその後に父が死亡したケースで、兄が父より先に死亡したと扱われれば兄の子が代襲相続人になります。逆に父より後に死亡した扱いになると、兄にも一度相続が発生しその後さらに兄の相続が開始します。この違いで必要書類や相続人の人数が大きく変わります。

 

失踪宣告の手続きの流れ

利害関係人(相続人・配偶者など)が行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

 

  1. 必要書類の準備:戸籍・附票・失踪に関する資料などを準備
  2. 家庭裁判所への申立て
  3. 公告:裁判所が公告を行い、生存情報の届出を募集
  4. 審判(失踪宣告):公告期間満了後、裁判所が審判を下す
  5. 役所への届出:審判確定後、役所へ届出を行い戸籍に反映

 

申立てから審判が下されるまで数か月から1年以上かかることもあり、印紙代・郵便切手・公告費用などの費用も必要です。

 

Q.失踪宣告後に本人が見つかった場合はどうなりますか?

A.失踪宣告の取り消しは可能ですが、財産は現存分のみ返還されます。

すでに処分された財産は原則として戻りません。たとえば相続した不動産を売却し換価金を受け取っている場合、その換価金を不動産に戻すことはできない点に注意が必要です。

 

相続人が行方不明のときは早期対応と専門家への相談を

行方不明の相続人がいる場合、状況に応じた家庭裁判所の手続きを正しく選ぶことが相続をスムーズに進める鍵となります。不在者財産管理人の選任か失踪宣告かの判断を誤ると、手続きの長期化・相続関係の複雑化を招きかねません

 

不在者財産管理人の選任申立てや失踪宣告の手続きは、要件の確認から必要書類の準備まで専門的な判断が求められます。手続きの長期化・複雑化を防ぐためにも、早い段階での専門家への相談が重要です。

 

当事務所では、相続に関するご相談を承っており、不在者財産管理人の選任や失踪宣告が必要な場合は司法書士・弁護士と連携したワンストップのサポート体制を整えております。「行方不明の相続人がいて手続きが進まない」という方は、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

 

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