相続税が払えない場合でも、「延納・物納・不動産売却」の3つの救済制度を活用することができます。ただし、申請期限は原則「相続開始から10か月以内」で、遅れると延滞税や加算税が発生します。資金不足に気づいた時点で、すぐに税理士など専門家へ相談することが最重要ポイントです。
相続税が払えないケースとは
相続税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に現金一括納付が原則です。しかし、相続財産の大半が不動産などの場合はすぐに現金化することができず、納税資金を準備できない相続人も多くみられます。
特に近年は、自宅や収益不動産だけを相続したり預貯金がほとんど残っていなかったりするケースが増えており、「相続税はかかるのに払えない」という事態が現実に起こっています。
ここでは、相続税が払えない主な原因について整理していきましょう。
相続財産が不動産メインだった場合
相続税が発生するほどの遺産を相続したものの、納税分の現金が不足してしまうケースが散見されます。「令和4年分 相続税の申告事績の概要」では、相続財産のうち不動産が占める割合が約32%、現金が占める割合が約35%となっている点にも注目すべきでしょう。
相続財産には次の2通りがありますが、特に不動産に関してはすぐに換価することが難しく、相続税が払えない状態になることも珍しくありません。相続財産の約1/3が不動産であることを踏まえれば、納税分の現金が不足しがちな現状に一定の理解ができそうです。
【相続財産の種類】
- 換価しやすいもの:現金、預貯金、株式など
- 換価に時間と手間がかかるもの:不動産など
もし相続財産が不動産メインであり売却に難儀した場合、相続税を譲渡利益から納めることができず、手持ちの預貯金などから支出しなければなりません。しかし、相続税額分の現金や預貯金が不足していた場合、「払えない」という事態に陥る可能性も出てくるのです。
被相続人の銀行口座が凍結されていた場合
被相続人の死亡により、金融機関への連絡をもって被相続人名義の口座はいったん凍結されます。
相続人はすべての相続財産について遺産分割協議を行い、相続内容と相続割合について合意を目指すことになります。すべての相続人による合意のもとで遺産分割協議書が作成され、ようやく「誰がどの財産を相続するか」が決まるのです。遺産分割協議書を作成したら、口座が凍結されている金融機関にも同書類を提出し、これにより凍結解除の手続きへと移行します。
もし、遺産分割協議書の作成が何らかの理由で遅くなってしまった場合、口座の凍結解除手続きもその分遅れますので、預貯金を使うことができず相続税を「払えない」状態になってしまうこともあり得るでしょう。
家の相続税を払えないときの対処法
すでに述べたようなケースを筆頭に、個々の事情から「どうしても相続税を払えない」という事態に陥ってしまったらどうすればいいのでしょうか。ここでは、具体的な対処法について整理していきます。
延納
「相続税の延納」とは分割払いのことを意味します。相続税の金額が10万円超であり、さまざまな事情から金銭納付が難しい場合、担保を提供し税務署に申告することによって年払いに対応してもらうことができます。
※延納する税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は担保不要
担保にできる財産の種類
担保にできる財産は、税務署側が相続税分として換価しやすいものであることが条件です。具体的には次のような財産が該当します。
- 国債や地方債
- その他の有価証券(税務署長により認められたもの)
- 土地
- 保険に附した建物や立木、登記済み船舶など
- 鉄道財団や工場財団など
- 税務署長が認める保証人による保証
延納にかかる利子
利子の計算式は次のとおりです。
延納利子税割合(年割合)×延納特例基準割合÷7.3%=延納にかかる利子
相続財産に占める不動産の価格割合により、国税庁が提供する利子一覧表を参考に概算することもできます。一覧表によれば、相続財産に占める不動産の割合により、延納期間は5年~20年、利子税は年利1.2%~6.0%かかることがわかります。
延納が許可または却下されるまでの期間
延納の申請が行われると、管轄の税務署長は当該申請について調査を行い、通常3ヶ月以内に許可または却下の判断を下します(延納担保の状況により最長6ヶ月まで延長する場合あり)。
物納
延納が認められなかった場合、相続した財産をもって納税する「物納」について検討することになります。ただし、物納する財産は何でもいいわけではなく、優先順位が定められています。
【第1順位】不動産など
- 不動産
- 船舶
- 一部の有価証券
- 不動産や上場株式のうち物納に充てられる順位が後れるもの(ほかに物納できる財産がない場合に限る)
【第2順位】非上場株式など
- 非上場株式など(短期社債などを除く)
- 非上場株式のうち物納に充てられる順位が後れるもの(ほかに物納できる財産がない場合に限る)
【第3順位】動産
- 動産
物納は事前相談の予約が必要
物納について検討している場合は、管轄の税務署において事前相談を行う必要があります。相談の場では、物納要件・留意事項・必要書類・申請期限など必要な事柄について説明を受けます。すぐに物納できるわけではなく、複雑な手続きを経なければなりませんので、その旨を理解したうえで利用するようにしましょう。
不動産売却(換価)
延納や物納ではなく、相続した家を売却してその譲渡利益で相続税を納める方法もあります。ただし、不動産売却は手続きが複雑で時間もかかるため、相続税申告・納税期限の10ヶ月以内に換価できるかどうか不安なところです。相場より低い金額になる傾向がありますが、不動産会社に相続した不動産を直接買い取ってもらい、速やかに現金を手にすることも1つの対処法になってくるでしょう。
相続税を延滞した場合のペナルティ
相続税を期限内に納められなかった場合、延滞のペナルティとして各種の税金が課されることになります。
延滞税
期限内に相続税を納められず遅れてしまった場合に課されるのが延滞税です。納付期限日の翌日から納付日までの日数に応じて、利息相当分が課税されます。
無申告加算税
正当な理由なく、期限までに相続税の申告を行わなかったときに課されるのが無申告加算税です。納税すべき相続税額を50万円以下の部分と50万円超の部分に分け、10%~20%の税率を加算した金額を納めなくてはなりません。
過少申告加算税
本来申告すべき相続税額よりも少ない金額で申告した場合に課されるのが過少申告加算税です。追加納税額を50万円以下の部分と50万円超の部分に分け、5%~15%の税率を加算した金額を納めなくてはなりません。
重加算税
相続税の無申告や過少申告など、意図的に仮装・隠ぺいした事実がある場合に課されるのが重加算税です。重加算税は最も重いペナルティであり、本来の相続税額に最大40%加算された金額を納めなければなりません。
まとめ
相続税を支払えない場合の主な選択肢は以下の3つです。
- 延納:分割で最大20年かけて支払う方法(利子税あり)
- 物納:現金の代わりに不動産などを国に納める方法
- 売却:不動産を売却して現金を確保し、特例を活用する方法
相続税の納付は、期限(相続開始から10か月)を過ぎると延滞税が発生します。支払いが難しいと感じたら、早めに税理士や専門家に相談し、最適な方法を選択しましょう。










