民法総則とは?相続を支える法律の「土台」

民法は「私たちの日常生活に関わる法律の集まり」であり、契約・不動産・家族・相続など幅広い分野を規定しています。

 

その中で、民法総則(第1条〜第174条の2)は、民法全体の基本原則を定めた部分で、まさに「民法の土台」と言える存在です。民法は大きく5つの編に分かれています。

民法の構成

内容

1編 総則

民法全体の共通ルール(権利能力・時効など)

2編 物権

所有権や土地・建物の扱い

3編 債権

契約や金銭のやり取り

4編 親族

結婚・離婚・親子関係など

5編 相続

財産承継や遺産分割のルール

相続に関する条文は第5編にまとめられていますが、実際の相続トラブルでは、総則の原則(権利濫用の禁止や時効など)が深く関係することがあります。

 

民法総則に含まれる主な内容

民法総則には次のような章が設けられています。

  1. 通則(第1条〜)
  2. 人(権利能力や行為能力)
  3. 法人
  4. 法律行為
  5. 期限の計算
  6. 時効

 

このうち、相続と特に関わりが深いのは以下の2つです。

  • 1条:権利濫用の禁止
  • 7章:時効の規定

これらは、遺産分割や相続人同士のトラブルを解決するうえで重要な考え方となります。

 

「権利濫用の禁止」とは?相続にも関わる重要な原則

民法第1条第3項には、次のように定められています。

「権利の濫用は、これを許さない。」

これは、「自分の権利だからといって、社会的に不当な使い方をしてはいけない」という原則です。相続の場面でも、他の相続人を困らせるような行為がこの「権利濫用」に該当することがあります。

 

権利濫用の代表的な裁判例:「宇奈月温泉事件」

この原則を象徴する有名な判例が「宇奈月温泉事件」です。

 

富山県の温泉街で、温泉を引く管が他人の土地を通っていました。その土地を新たに購入したAが、温泉経営者Bに対して「不法占拠だから管を撤去せよ」と主張し、さらに「買い取るなら相場の何百倍の値段で」と迫りました。

 

しかし、裁判所はこの行為を権利の濫用と判断。「土地所有者としての権利があっても、社会通念上不当な行使は許されない」としてAの主張を退けました。

 

相続における「権利濫用」の具体例

この「権利濫用の禁止」は、相続の場面でもしばしば問題になります。

 

遺産分割協議での強引な主張

ある相続人が「自分の取り分を多くしないと協議に応じない」と言い張る場合、その態度が他の相続人の正当な権利行使を妨げると判断されれば、権利濫用となる可能性があります。

 

遺留分侵害額請求の濫用

遺言書で特定の相続人に多くの財産が渡った場合、他の相続人が「遺留分侵害額請求」をすることができます。しかし、感情的な報復目的で不当な金額を請求するような行為も、社会的妥当性を欠くとされれば権利濫用にあたることがあります。

 

相続放棄を悪用した不当な手続き

他の相続人を欺いて放棄届を出させたり、財産隠しを行ったりすることも「権利行使の濫用」として否定される場合があります。

 

「時効」相続権にも期限がある

民法総則の第7章には「時効」が定められています。これは、一定期間権利を行使しないと、権利が消滅したり取得されるという仕組みです。相続にも次のように「期限」が関係します。

手続き

期限(時効)

根拠

相続放棄・限定承認

3か月

民法915

遺留分侵害額請求

1年

民法1048

相続回復請求

5年(または20年)

民法884

これらの期限を過ぎると、権利が消滅する可能性があるため、「民法総則における時効の考え方」が相続手続きにも直接影響します。

 

民法総則の理解が相続トラブルを防ぐ

相続は、家族間での感情的な対立が起こりやすいものです。しかし、民法総則の理念である「権利濫用の禁止」や「時効の原則」を理解しておくことで、冷静かつ法的根拠に基づいた対応が可能になります。たとえば、

  • 一方的な主張や財産隠しを防ぐ
  • 手続きの期限を守る
  • 法律の趣旨を踏まえた公平な協議を行う

といった形で、相続トラブルの多くは未然に防ぐことができます。

 

まとめ

相続を法律的に正しく進めるためには、民法第5編(相続)だけでなく、その前提となる民法総則の考え方を理解しておくことが不可欠です。

 

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