成年後見制度と令和7年審議における中間試案
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分ではない人を法律面から支援する仕組みです。財産管理や契約行為などを安全に行うため、家庭裁判所が後見人などを選任します。
成年後見制度は、平成12年の民法改正によって導入されました。高齢化の進行とともに重要性が高まり、現在では高齢者の財産管理や生活支援を支える制度として広く知られています。
しかし、制度が始まってから20年以上が経過する中で、次のような課題が指摘されるようになりました。
- 一度後見が始まると終了が難しい
- 本人の意思が十分に反映されない場合がある
- 制度が使いにくいという声がある
こうした状況を受けて、法務省の法制審議会では成年後見制度の見直しが検討され、令和7年6月には「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」が取りまとめられたのです。
成年後見制度の3つの類型
成年後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて支援の内容を変える仕組みになっています。ここでは現行制度の3つの類型について整理します。
成年後見制度には、判断能力の状態に応じて次の3つの類型があります。
- 後見
- 保佐
- 補助
それぞれ支援の強さが異なり、状況に応じて適切なものが選ばれます。
後見
後見は、判断能力がほとんどない場合に利用される制度です。
後見人には広い権限が与えられ、本人の代わりに契約を行ったり、財産を管理したりすることができます。生活全般を支える強い支援制度といえます。
保佐
保佐は、判断能力が著しく不十分な場合に利用される制度です。
不動産の売買や借入など、重要な法律行為については保佐人の同意が必要になります。本人の判断能力が一定程度残っている場合に利用される制度です。
補助
補助は、判断能力がやや不十分な場合に利用される制度です。
補助人の権限は家庭裁判所が個別に定めるため、必要な範囲だけ支援を行うことができます。
しかし、実際の運用では「後見」が選ばれるケースが多く、補助制度は十分に活用されていないという課題がありました。また、後見制度が開始されると原則として本人が亡くなるまで制度が続くため、途中で終了することが難しいという問題も指摘されています。
「補助」を中心とした制度見直しの方向
令和7年の審議では、成年後見制度をより柔軟で使いやすい制度にするため、補助制度の考え方を活かした改革が検討されています。中間試案では、成年後見制度を「必要な範囲だけ支援する制度」に変えていく方向が示されました。
必要な範囲だけ支援する制度へ
これまでの制度では、後見人に広い権限が与えられることが一般的でした。しかし見直し案では、次のような限定的な支援が可能になることが検討されています。
- 財産管理だけ支援する
- 特定の契約だけ支援する
このように支援内容を必要な範囲に限定することで、本人の自由をできるだけ尊重する制度へ変えることを目指しているのです。
必要な期間だけ制度を利用できる仕組み
現行制度では、一度後見が始まると原則として本人が亡くなるまで制度は継続します。しかし、特定の手続きが終われば制度終了可能なしくみも、改正要綱案に盛り込まれています。
例えば次のような場面です。
- 認知症の親の不動産を売却する
- 相続の遺産分割を行う
- 施設入所の契約を行う
このように、必要な手続きの期間だけ制度を利用する方法が将来的に可能になると考えられています。
本人の意思を重視する制度へ
従来の成年後見制度は、財産管理を中心とした制度として運用されてきました。しかし今後は、本人の希望や生活状況をより重視する制度へと変わることが検討されています。
例えば、
- どのような生活を送りたいか
- どの施設に入るか
- 財産をどのように使うか
といった本人の意思を尊重しながら支援する仕組みが重視されています。
成年後見制度利用促進基本計画との関係
成年後見制度の見直しは、国が進めている制度利用促進政策とも深く関係しています。現在は、「第二期成年後見制度利用促進基本計画(令和4年度~令和8年度)」が進められており、次のような取り組みが行われています。
- 地域の権利擁護支援体制の整備
- 相談支援体制の強化
- 制度の普及啓発
制度改正による私たちの暮らしへの影響
成年後見制度の見直しは、判断能力が低下した高齢者やその家族の生活にも大きな影響を与えると考えられています。
制度が柔軟になることで、成年後見制度をより利用しやすいものにすることが期待されています。
家族の負担の軽減
現行制度では、後見人の報酬や制度の継続が家族の負担になることがありました。制度改正により途中終了が可能になれば、家族の経済的負担や心理的負担が軽減される可能性があります。
特定目的での制度利用
制度改正により、特定の目的に限って成年後見制度を利用できる可能性もあります。例えば、
- 認知症による財産管理
- 施設入所に伴う不動産売却
- 判断能力に不安がある場合の遺産分割
といった手続きのために制度を利用するケースが想定されています。
ただし、制度の終了は家庭裁判所の判断によって行われるため、自由に後見人を解任できるわけではありません。
今後の法改正の見通し
令和7年に公表された中間試案は、パブリックコメントを経てさらに検討が進められています。
今後は法制審議会で改正要綱が取りまとめられ、その後、民法改正として国会に提出される見込みです。成年後見制度は導入から約25年が経過しており、今回の改正は制度創設以来の大きな見直しとなる可能性があります。
まとめ
令和7年の審議では、成年後見制度の大きな改革が検討されています。主なポイントは次のとおりです。
- 後見制度の終了要件の見直し
- 本人意思の尊重の強化
- 後見人の権限の柔軟化
- 任意後見制度の活用促進
これらの改革は、高齢化社会の中で誰もが安心して暮らせる社会を実現するための重要な制度改革といえるでしょう。
成年後見制度は、認知症対策や財産管理、相続対策とも密接に関係する制度です。今後の法改正の動向を確認しながら、制度への理解を深めておくことが大切です。










