親が亡くなったとき、「2人の子どもに対して自宅を共有持分の形で相続させる」旨が記載された遺言書が見つかったとしましょう。不動産を共有持分で相続することにはメリットとデメリットがあるといわれていますし、相続登記の手続きも複雑になるのではないかと不安になるかもしれません。
【この記事の要点】
- 共有持分とは複数の相続人が不動産の権利を有する状態
- 共有持分として相続するメリットとデメリット
- 相続登記の流れ
- 共有状態を解消するための方法
この記事では、遺言書により不動産を共有持分の形で相続した場合について、そのメリット・デメリットや共有解消方法について説明していきます。共有持分や相続登記は、理解することがやや難しいテーマでもありますので、概要を整理して手続きに備えていきましょう。
共有持分とは何か
所有権は「1人がすべての権利を持つ場合」と「複数人で権利を共有する場合」に分かれます。冒頭の例のように、もし親が遺言書に「自分が亡くなったら自分名義の自宅を長女Aと長男Bの共有持分の形で相続させる」と記載していた場合、自宅という財産についてその所有権を子2人が共有するということになります。
共有持分とは、所有権を共有する各相続人が持つ権利の割合です。子が2人の場合は通常「子1人あたり1/2ずつ」を共有持分として有します。ただし、不動産の所有権を共有している状態ですから、自宅を賃貸住宅として活用したり売却したりする際には、子2人(すべての相続人)がこれに同意することが求められます。
共有持分で相続するメリットとデメリット
遺言書に「不動産を共有持分で相続させる」などと記載されていた場合、相続人が子2人であれば共有持分は1/2ずつということになります。共有持分での相続にはメリットとデメリットがあるといわれていますので、実際にどのような影響を受けるか確認していきましょう。
共有持分で相続するメリット
不動産を共有持分で相続することには、次のようなメリットが考えられます。
遺産分割が公平になる
土地や建物を正しく分割することは物理的に困難ですが、共有持分として相続すれば均等に分けることができます。このため遺産分割時点でのトラブルの可能性は低くなるといえます。
各相続人がそれぞれ「3,000万円控除」を使える
マイホームを売却したときに使える税の特例として、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が挙げられます。一定の要件を満たせば、マイホームの売却益(譲渡所得)から3,000万円を控除できる制度です。
複数の相続人が共有持分で不動産を相続した場合、各相続人について控除を適用できますので、相続人が3人いる場合は売却益(譲渡所得)から合計9,000万円分を差し引くことが可能になります。控除額が大きいほど差し引き後の課税対象額は小さくなりますので、節税に大きく貢献します。
共有持分で相続するデメリット
共有持分として不動産を相続する場合、次のようなデメリットが生じる可能性を踏まえておく必要があるでしょう。
単独で不動産の活用や処分ができない
共有持分として相続した不動産を活用したり処分したりする場合、共有者全員による同意を得なければなりません。共有者が単独で当該不動産の活用や処分を行うことはできないため注意が必要です。
資産価値が下がる可能性がある
共有持分を購入しても当該不動産の活用や処分を自由に行うことはできません。このため不動産の評価額が下がってしまう可能性が出てきます。共有者全員による協力体制がなければ、不動産の資産価値を維持することは難しいといえます。
共有持分の相続登記
共有持分として相続された不動産も名義変更を行う必要があります(相続登記)。手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備(戸籍謄本・遺産分割協議書・登記申請書など)
- 管轄の法務局へ提出
- 登録免許税の納付(相続による所有権移転登記では「不動産評価額×4/1000」)
- 法務局から登記完了証・登記識別情報通知書の交付
1.必要書類の準備
手続きに必要な書類を用意します。
- 登記申請書
- 被相続人の出生時から死亡時までの一連の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本と住民票
- 当該不動産の登記事項証明書
- 遺言書(遺言がない場合は遺産分割協議書)
- 法定相続人の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
2.管轄の法務局へ提出
必要書類を揃えたら管轄の法務局に提出します。申請は、窓口申請・郵送申請・オンライン申請のいずれかによって行います。
3.登録免許税の納付
共有持分として不動産を相続した場合、共有者全員に固定資産税の納税義務が生じます。各共有人が持分割合に応じた固定資産税を納めることになります。(通知は代表者にしかいきません。)また、相続登記申請の際に登録免許税を納める必要もあります。
4.法務局から登記完了証・登記識別情報通知書の交付
1~3までの手続きを終えると、法務局から「登記完了証」「登記識別情報通知書」が交付されます。これら書面の受領により相続登記は完了します。
共有状態を解消する方法
遺言書で「不動産を共有状態で相続させる」旨が記載されていた場合、基本的には被相続人の意向を優先し、対象となる不動産を共有持分の形で相続する必要があります。しかし、共有状態で不動産を相続した場合、自由な活用や処分が難しくなるため、共有状態を解消したいと考えるケースも出てくるでしょう。
このような場合、現物分割・換価分割・代償分割のいずれかの対応を行うことで、共有状態を解消し単独名義で不動産を所有することが可能になります。
現物分割
不動産を分筆し、各分筆分をそれぞれの共有者が所有する方法を現物分割といいます。公平性はあるものの、実際には分筆が難しいことも多いため、活用できるケースは限られてくるといえるでしょう。
換価分割
不動産を売却して得た金銭を共有者の間で分割する方法を換価分割といいます。共有者全員の同意を得る必要がありますが、不動産を金銭に換えれば公平に分けることができます。
代償分割
共有者のうち1人が他の共有者に対して共有分を現金で支払い、自らすべての共有持分を相続する方法を代償分割といいます。これにより、共有名義から単独名義へと変わるため、不動産の活用や処分に際し他相続人の同意を得る必要性もなくなります。ただし、不動産を取得したい者には十分な資力が求められる点に注意しましょう。
まとめ
遺言書で不動産を共有持分として相続するよう指定されていた場合、
- どうすれば遺言書通りに不動産を引き継げるのか
- どのようなメリット・デメリットがあるのか
- 共有状態を解消し単独名義とするにはどうすればいいのか
など、不安や疑問が生じやすいといえます。
遺言書は被相続人の意思そのものですから、「共有状態で相続させる」と記載されていれば、基本的にはその通りに手続きを進めることになります。しかし、不動産を共有持分で所有することが共有者にとって望ましくない場合、何らかの対応を採る必要も出てくるでしょう。
遺言内容を実現したいが共有状態で不動産を相続することに不安がある、という場合は、ぜひ一度お問い合わせください。当行政書士事務所は相続全般について高い経験値を有しており、司法書士や税理士との連携によるトータルサポートも提供可能です。無料相談もご用意しておりますので、ご心配な事柄についてぜひお聞かせください。










