会社を相続したら税金がかかる?
親が経営していた会社を子が引き継ぐ場合、「会社そのものを相続する」と誤解されがちですが、実際に相続税がかかる対象は法人か個人事業主かによって大きく異なります。相続の形を正しく理解しないと、想定外の高額な税負担が発生することもあります。
法人(株式会社・合同会社など)を相続する場合の税金
法人は法律上、経営者とは別の人格を持つ存在です。そのため、社長が死亡しても会社自体は相続の対象になりません。相続税の課税対象となるのは、次のような経営者個人に帰属していた財産です。
- 自社株式
- 経営者名義の事業用不動産
- 事業用預貯金
- 会社への貸付金 など
つまり、「会社を相続する=株式や個人資産を相続する」という意味になります。
個人事業主を相続する場合の税金
個人事業主には法人格がないため、事業も財産もすべて個人の相続財産に含まれます。
- 事業用資産
- 売掛金・在庫
- 借入金
- 取引契約 など
すべてが相続対象となり、相続と同時に後継者が契約・債務も引き継ぐことになります。名義変更・再契約が必要になる場面も多く、法人より実務負担は大きくなります。
会社を相続する場合の相続税の手続き
会社を相続する場合、相続税の手続きはどのように進めればいいのでしょうか。
① 事業資産・負債の把握(3か月以内)
相続開始後3か月以内に、相続放棄・限定承認・単純承認の判断が必要です。そのため、次の点を早急に確認します。
- 株式の保有数
- 事業用不動産
- 借入金・連帯保証
- 会社への貸付金 など
遺言があれば、原則として遺言内容に従って承継が進みます。
② 相続放棄をするか事業承継するかの判断
後継者がいない、または、借金が多い・株式評価が高すぎる・相続税を払えない、といった場合は、相続放棄を選択することで会社との関係を断つことも可能です。判断は必ず専門家と相談すべきです。
③ 株式の評価が相続税額を左右する
自社株は以下のいずれかで評価されます。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 併用方式
評価額が高いと、後継者だけが高額相続税を負うことになったり、他の相続人との遺留分トラブルが起きたり、あるいは納税資金が確保できないといった深刻な問題が発生します。
④ 相続税の申告・納税(10か月以内)
相続税は以下の財産を合算して計算されます。
- 株式
- 事業用不動産
- 預貯金
- 会社への貸付金
- 役員退職金(みなし相続財産)など
相続税額の計算の仕方について、おさらいしておきましょう。
【1】相続財産の総額を算出する
現金・預貯金・不動産・株式・生命保険金(みなし相続財産)など、すべてのプラスの財産を合算し、借金や葬式費用などのマイナス財産を差し引きます。
【2】基礎控除を差し引く
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算することができ、算出された金額を超えた部分に対して相続税が課税されます。
【3】課税遺産総額を法定相続分で分ける
課税対象額を、いったん法定相続分どおりに仮分割します。
【4】相続税の総額を計算する
以下の税率を使って、各人の税額を計算し、合計します。
|
課税取得金額 |
税率 |
控除額 |
|
1,000万円以下 |
10% |
なし |
|
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
|
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
|
1億円以下 |
30% |
700万円 |
|
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
|
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
|
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
|
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
【5】実際の取得割合で按分し税額控除を適用する
遺産分割の内容に応じて税額を振り分け、
- 配偶者の税額軽減
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 贈与税額控除
などを差し引いて、最終的な納税額を確定させます。
経営者から会社への「貸付金」は要注意
中小企業では、「経営者が会社資金を立替」「私財から運転資金を補填」といったケースが多く、これらは「会社への貸付金」、つまり相続財産に該当すると判断されます。
したがって、実態は資金不足でも、貸付金が多いと相続税だけが高額になるという逆転現象が起きることがあるので注意しましょう。
会社の相続で利用できる節税制度
会社の相続では、次の制度を活用できる可能性があります。ただし、いずれも適用要件が厳しいため、元気なうちからの対策が必須です。専門家に相談しながら、相続に向けた生前対策を行うようにしましょう。
事業承継税制(納税猶予制度)
一定の要件を満たすことで、後継者が取得した自社株にかかる相続税・贈与税の最大100%が猶予され、事業承継時の税負担を大幅に軽減できます。
生命保険による納税資金対策
死亡保険金は受取人固有の財産となるため、相続税の納税資金を確保しやすく、会社承継時の資金不足対策として有効です。
退職金の非課税枠活用(500万円×法定相続人)
死亡退職金には500万円×法定相続人の非課税枠があり、現金で効率よく財産を移転でき、相続税の大幅な節税につながります。
まとめ
会社の相続では、法人か個人事業主かで税金の仕組みが大きく異なります。法人の場合は株式や貸付金に相続税が課税され、評価を誤ると高額な税負担につながります。
事業承継税制などの活用も含め、生前対策と専門家のサポートが不可欠な分野ですので、会社と家族を守るためにも、早めに専門家に相談士、正しい相続対策を進めましょう。










