相続人が複数いる場合、遺産をどのように分けるかを決める「遺産分割協議」を行います。しかし、感情的対立や相続分への不満により協議が進まない、または相続人の一部が協議に参加しないケースが生じることがあります。
相続トラブルは誰にでも起こりうる
親の死後に始まる相続。被相続人(亡くなった人)の死亡と同時に、法律上の手続きとして相続が開始します。本来、家族の絆を大切にしながら遺産を分けるはずが、実際には親族間のトラブルに発展するケースが非常に多く見られます。
「自分の取り分が少ない」
「兄弟の一人だけが優遇されている」
「借金まで引き継ぐのは納得できない」
こうした感情の行き違いが原因で、兄弟喧嘩や親戚同士の絶縁にまで発展することも少なくありません。
相続トラブルの多くは「遺産分割協議」で発生する
相続が始まると、まず相続人全員で遺産分割協議を行います。これは、被相続人の財産をどのように分けるかを話し合って決める手続きです。
しかし、この協議がスムーズに進むケースは意外と少なく、次のような理由で揉めることがあります。
相続で揉める主な原因
- 遺言書がない、または内容が不明確
- 特定の相続人だけが生前贈与を受けていた
- 財産の評価額(特に不動産)で意見が対立
- 相続人の一部が話し合いに参加しない
- 借金や債務が発覚した
協議で全員が納得すれば「遺産分割協議書」を作成して手続きは完了しますが、一人でも反対する相続人がいれば成立しません。その場合、家庭裁判所に解決を委ねることになります。
家庭裁判所で相続トラブルを解決する方法
では、家庭裁判所を介在した法的解決方法とはどのようなものなのでしょうか。
①遺産分割調停
家庭裁判所での最初の段階は、遺産分割調停です。相続人同士で話し合いがつかない場合、裁判所が間に入って解決を促します。
(1)調停の流れ
- 相続人の一人が家庭裁判所に「遺産分割調停申立書」を提出
- 第1回期日が指定され、相続人に通知
- 調停委員が双方の意見を聞き取り、解決案を提示
- 合意が成立すれば「調停成立」となり、調停調書が作成される
家庭裁判所では裁判官1名と調停委員2名からなる「調停委員会」が当事者の意見を聞きながら、円満な合意を促す役割を担います。この場で合意に至ると「調停調書」が作成され、法的効力を持ちます。
しかし、実際には調停は1回では終わらないことが多く、複数回開かれます。相続人が全員出席する必要はありませんが、出席しないと不成立になり、長期化する恐れがあります。
(2)代理人による出席も可能
遠方に住んでいる相続人や、顔を合わせたくない人がいる場合には、弁護士などの代理人を立てて出席することも可能です。調停委員が電話や書面で意見を聞くこともありますが、話し合いに消極的な姿勢を見せると、調停成立が難しくなるケースもあります。
(3)調停が成立したら
調停が成立すると、裁判所が作成する「調停調書」に基づいて遺産を分割します。この調書は確定判決と同じ効力を持つため、後から覆すことはできません。
②遺産分割審判
調停が不成立に終わった場合、次の段階として遺産分割審判に進みます。審判では当事者同士が話し合うのではなく、裁判官が遺産の分割方法を一方的に決定します。
(1)審判の流れ
- 家庭裁判所が審判手続を開始
- 必要に応じて証拠調べ・財産評価などを行う
- 裁判官が分割方法を決定
- 結果が「審判書」として通知される
- 2週間経過で審判が確定(不服があれば即時抗告)
審判では、当事者の意向よりも法的公平性と客観的な財産評価が重視されます。そのため、全員が納得できる結論になるとは限りません。
(2)調停を飛ばしていきなり審判も可能
原則としては「まず調停から」となるケースが多いですが、法律上は調停を経ずに審判を申し立てることも可能です。ただし、裁判所は「まず話し合いをすべき」と判断する傾向が強く、実際には調停を経てから審判に進むケースが大半です。
審判で決まる内容とは?
審判では、裁判官が相続財産の内容や相続人の状況を踏まえ、公平な遺産分割方法を決定します。
【主な判断内容】
- 各相続人の相続分
- 財産の分割方法(現物分割・代償分割・換価分割)
- 特別受益(生前贈与など)の考慮
- 寄与分(介護や家業手伝いなどの貢献)の評価
審判の結果に不満がある場合は、2週間以内に「即時抗告」することで、上級裁判所に審査を求めることも可能です。
相続トラブルを長引かせないためのポイント
相続トラブルが泥沼化すると、家族関係が破綻するだけでなく、手続きが何年にもわたることもあります。争いを長引かせないためには、次の点を意識しましょう。
(1)遺言書を準備しておく
被相続人が生前に公正証書遺言を作成しておけば、相続人の間で争いが起きにくくなります。
(2)財産の内容を明確にしておく
不動産や預貯金の情報を整理し、「財産目録」としてまとめておくとスムーズです。
(3)早めに専門家へ相談する
調停・審判の手続きや法的主張には専門知識が必要です。専門家に早めに相談することで、最小限のトラブルで解決できる可能性が高まります。
まとめ
相続トラブルは、誰にでも起こりうる身近な問題です。感情的な対立を避けるためには、早い段階で冷静に話し合い、必要に応じて専門家や家庭裁判所の力を借りることが大切です。「争族」ではなく「想続(おもいやりの相続)」を実現するために、家族の対話と準備を怠らないようにしましょう。










