遺産分割には「遡及効」という法律効果があります。これは、遺産分割で決まった内容が、被相続人の死亡日(相続開始日)までさかのぼって効力を持つという重要なルールです。

 

遡及効は相続トラブルや二重譲渡、税金の扱いなどにも深く関わるため、仕組みをしっかり理解しておく必要があります。

 

ここでは、遡及効の意味・適用場面・注意点について説明していきます。

 

遺産分割の遡及効とは

民法では、「相続は被相続人の死亡によって開始する」とされ、死亡時点で遺産は一旦、相続人全員の共有になります。その後、相続人同士で遺産分割協議を行い、誰が・どの財産を・どの割合で取得するか、を確定させるのです。

 

遡及効の本質

遡及効とは、遺産分割の結果が「被相続人の死亡日までさかのぼって」有効になることを意味します。

 

たとえば、「不動産をAが相続することに決まった場合」について考えてみましょう。

 

その不動産は「被相続人が亡くなった当日からAのもの」とみなされますので、遺産分割協議中に発生した「使用」「収益」「管理」などの問題を、死亡時までさかのぼって整理することができます。

 

なぜ遡及効が必要なのか

遺産分割は死亡後すぐに決まるものではなく、数ヶ月〜1年ほど時間がかかることも珍しくありません。仮に、遺産分割の効力が協議成立日からしか及ばないとすると、次のような不都合が生じます。

 

  • 分割が終わるまで財産が誰のものかわからない
  • 協議中に生じた収益の扱いが曖昧になる
  • 不動産の所有者を確定できず売却・管理ができない

 

こういった状況を回避するため、分割後に効力を死亡日に「戻す=遡及させる」という仕組みが設けられています。

 

遺産分割の遡及効が影響する主な場面

では、具体的にどのような場面で「遡及効」の影響を受けることになるのでしょうか。

 

不動産の所有権の帰属

分割後に「遡及効」により死亡日にさかのぼって所有者が確定するため、

  • 使用料
  • 借地権の扱い
  • 固定資産税の負担

なども最終的に調整されます。

 

預貯金の扱い

預貯金も本来、死亡日から相続人全員の共有です。遡及効により、分割が終わった時点で「誰の取り分か」が死亡日にさかのぼって確定します。

 

家賃収入・事業収益

死亡後に発生した収益についても、最終的な相続人の取り分が死亡日にさかのぼって確定します。

 

乱暴な財産処分の無効化

遺産分割が終わる前に、相続人の一人が勝手に財産を処分した場合、遡及効により「そもそも処分する権限がなかった」とされ、トラブルに発展します。

 

遡及効が及ばないケースにも注意

遡及効は万能ではなく、第三者の権利を害することはできません

 

仮に、遺産分割前に遺産を第三者へ売却した場合、その第三者が「善意・無過失」であれば、遡及効は適用されません。

 

たとえば、「相続人Aが遺産不動産を勝手に売却したが、買主に悪意がなかった場合」が該当し、この場合は遡及効で取り消すことができません。

 

遺産分割の遡及効は民法の中の「遡及効」の一つ

民法にはさまざまな場面で「遡及効」が登場します。

 

  • 無権代理の追認
  • 契約の取消
  • 相殺の効力
  • 時効の完成 など

 

いずれも「後の行為により、過去にさかのぼって効力が生じる」という共通点があります。遺産分割の遡及効も、この民法における遡及効の代表例です。

 

まとめ

遺産分割の遡及効とは、遺産分割の結果が、被相続人の死亡日にさかのぼって効力を持つという相続法の大原則です。遡及効があることで、

  • 死亡時点での公平性
  • 財産帰属の明確化
  • 税金や収益の取り扱いの調整

がスムーズになり、相続全体の秩序が保たれます。

 

しかし、第三者の権利を害することはできないなど、例外も存在します。

 

相続は個別事情が複雑に関係するため、遡及効の理解はトラブル防止に非常に役立ちます。

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