相続回復請求権とは

「相続回復請求権」とは、本来の相続人の権利を侵害されたときに、その相続権を取り戻すための制度です。民法に規定されていますが、具体的な内容の明記が少ないため、裁判例や学説によって解釈が分かれる難しい分野とされています。

 

簡単に言えば、相続が始まった際に、本来は相続人でない者(=表見相続人)が「自分が相続人だ」と主張して財産を取得してしまった場合、本当の相続人がその権利を回復するために請求できるのが「相続回復請求権」です。

 

表見相続人とは

「表見相続人」とは、実際には相続権がないのに、相続人のように見える人のことです。たとえば次のようなケースが該当します。

  • 被相続人の子でないのに、親族関係を偽って相続人として遺産を取得した
  • 他の相続人の分まで勝手に財産を相続してしまった

 

つまり、相続する資格のない人が相続人の立場を装って遺産を取得した場合、真の相続人は「相続回復請求権」によって自分の権利を取り返すことができます

 

相続人なのに財産を奪われたとき

表見相続人が他人の場合だけでなく、共同相続人の一人が他の人の分まで相続した場合も問題になります。

 

たとえば、兄と弟の2人が相続人で、遺言書に「遺産を2分の1ずつ相続する」と書かれていたのに、兄が遺産の全てを自分の名義にしてしまった場合について考えてみましょう。

 

弟は兄に対して「自分の相続分を返してほしい」と請求できます。このとき兄は、相続分を超えて相続しているため、表見相続人の扱いとなり、弟は相続回復請求権を行使することができます。

 

善意・悪意による相続回復請求権の取り扱い

相続回復請求権では、表見相続人が「善意」か「悪意」かによって取扱いが変わります。

区分

内容

請求の対象になるか

善意の表見相続人

相続権がないことを知らず、過失もない

相続回復請求の対象になる

悪意の表見相続人

相続権がないと知りながら相続した、または注意を怠った

原則、遺産分割や損害賠償で処理される(相続回復請求権の対象外)

つまり、「知らなかった」場合には回復請求が可能ですが、「知っていて侵害した」場合には、別の法的手段で解決を図る必要があります。

 

相続回復請求権の時効

相続回復請求権は、時効によって消滅することがあります。民法によると、

  • 「権利を侵害されたことを知ったときから5年」
  • 「相続開始から20年」

が経過すると、原則として請求することができなくなります。

 

つまり、相続権の侵害に気づいたら、できるだけ早く行動することが大切です。

 

相続トラブルでは、証拠の確保や法的主張の整理に時間がかかるため、早めに専門家に相談することが推奨されます。

 

相続回復請求の流れ

相続回復請求の手続きの流れを確認していきましょう。相続回復請求の手続きは、主に次の4つのステップで進められます。

 

① 相続関係の確認

被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて収集し、本来の相続人が誰であるかを法的に確定させます。代襲相続の有無もこの段階で確認します。

② 侵害事実の証明

不正に相続したとされる人物が、どの財産をどのような経緯で取得したのか、不動産登記簿や預金記録などの客観的証拠を収集します。

③ 交渉または訴訟

まずは当事者同士で返還交渉を行いますが、話し合いで解決しない場合は、相続回復請求訴訟として裁判所に正式に争いを持ち込みます。

④ 財産の回復・名義変更

裁判で相続権が認められると、不動産の名義変更や預貯金の返還手続きが行われ、正当な相続人のもとに財産が戻ります。

 

まとめ

相続回復請求権は、相続の中でもあまり知られていませんが、真の相続人が不当に奪われた権利を取り戻すための大切な制度です。

 

ただし、相続人同士の関係や善意・悪意の判断、時効の適用など、法的な解釈が難しい分野でもあります。「自分の相続分を他の人に奪われたかもしれない」「遺産が勝手に名義変更されていた」という場合は、早急に専門家へ相談し、権利を守る行動をとりましょう。

 

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