「物権」と「債権」とは
相続手続きを進めるうえで重要になるのが、「物権」と「債権」という考え方です。相続財産には、土地や建物のような「形のある財産」だけでなく、請求できる権利や借金といった「権利・義務」も含まれます。この違いを理解しておかないと、遺産分割や相続放棄で思わぬトラブルにつながることがあります。
物権とは
物権とは、特定の「物(もの)」を直接支配・利用できる権利のことです。相続では、被相続人が所有していた財産そのものを引き継ぐイメージになります。
相続で問題になりやすい物権の例
- 土地・建物の所有権
- マンションの区分所有権
- 自動車
- 預貯金(法律上は物権的に扱われます)
物権の特徴は「対世的効力」といって、他人に対してもその権利を主張できる点にあります。
債権とは
債権とは、「お金を払ってもらう」「物を引き渡してもらう」など特定の相手に対して行為を請求できる権利です。たとえば、「貸したお金を返してもらう権利」や「家賃を受け取る権利」などが該当します。
債権は「対人関係の権利」であり、特定の相手に対してのみ効力を持つという点が物権と異なります。
相続における物権
相続において、物権は被相続人(亡くなった人)が所有していた財産そのものを直接引き継ぐ権利です。たとえば、土地や建物、自動車などは物権にあたり、相続が発生するとこれらの所有権が相続人に移転します。
相続財産に含まれる物権としてよく知られている不動産について、以下で相続と登記の注意点を知っておきましょう。
不動産の相続と登記
不動産の所有権は、相続によって自動的に相続人に移りますが、名義変更(相続登記)をしなければ第三者に主張できません。
相続登記を怠ると、将来的に売却・抵当権設定・共有トラブルが発生する可能性があります。
なお、2024年4月以降、相続登記は義務化されており、3年以内に登記をしないと過料(罰金)の対象になります。
共有物権としての相続財産
複数の相続人がいる場合、遺産分割が終わるまでは「共有状態」となります。
つまり、相続人全員がその不動産や財産を共同で所有している状態です。
この間、共有不動産を売却するには、全員の同意が必要になります。
相続における債権
被相続人が生前に持っていた「貸金債権」や「未収入金」などの権利も、相続の対象になります。
一方で、借金や連帯保証などの「債務(マイナスの債権)」も相続されます。
相続される債権の具体例
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貸したお金を返してもらう権利(貸金債権)
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家賃や売掛金などの未収金
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損害賠償請求権(交通事故などでの慰謝料)
これらの債権は、相続開始と同時に相続人に承継され、相続人全員の共有債権となります。
遺産分割によって、特定の相続人が債権を単独で引き継ぐことも可能です。
相続される債務(借金など)
被相続人の借入金やクレジット債務などは、債務として相続人に引き継がれます。ただし、債務が多い場合は「相続放棄」や「限定承認」を選択することで、相続人が負担を免れることもできます。
物権と債権の違いを整理
| 区分 | 物権 | 債権 |
|---|---|---|
| 権利の対象 | 物(もの)そのもの | 特定の相手の行為(支払い・引渡し) |
| 効力 | 対世的(誰にでも主張可能) | 対人的(相手にのみ主張可能) |
| 例 | 所有権・抵当権・地上権 | 貸金債権・家賃債権・売掛金 |
| 相続との関係 | 財産そのものを相続 | 債権・債務として相続 |
| 手続き | 登記・名義変更が必要 | 債権者・債務者への通知が必要 |
相続においては、物権は「形のある財産」を、債権は「請求できる権利」や「返済すべき義務」を表しています。つまり、相続財産にはこの両方が含まれており、プラスの財産とマイナスの財産の両方を承継する点が重要です。
物権・債権の遺産分割
遺産分割協議では、相続財産をどのように分けるかを相続人全員で話し合います。
このとき、物権と債権では分割方法や注意点が異なります。
物権の分割方法
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現物分割:土地・建物をそのまま分ける(例:長男に土地A、次男に土地B)
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代償分割:財産を一人が取得し、他の相続人に金銭を支払う
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換価分割:財産を売却して現金で分ける
債権の分割方法
債権は共有状態で相続されるため、分割協議で「どの相続人が回収するか」を決める必要があります。
たとえば、貸金債権がある場合、相続人全員の同意で特定の相続人が単独で請求を行う形にするのが一般的です。
まとめ
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 物権 | 土地・建物などの「物」を直接支配する権利 |
| 債権 | お金や行為を請求できる「対人関係の権利」 |
| 相続での関係 | 両方が相続財産に含まれる(プラスとマイナス) |
| 注意点 | 登記・債務確認・遺産分割協議書の明確化が重要 |
相続を円滑に進めるには、「物権=形のある財産」「債権=権利・義務」として整理し、どちらも相続の対象となることを理解することが大切です。
物権・債権に関するトラブルを未然に防ぐためにも、相続手続きのできるだけ早い段階で、相続の専門家(行政書士・税理士・司法書士)に相談することを検討してみましょう。










