相続では、通常は配偶者や子などの「法定相続人」が遺産を引き継ぎます。しかし、現実には 相続人が一人もいないケース も珍しくありません。そんなときに重要となる制度が 「特別縁故者」 です。

 

この記事では、特別縁故者になれる人や相続人不在の場合の相続手続き、特別縁故者の申立て方法などについて説明していきます。

 

特別縁故者とは

法定相続人がいない場合に、家庭裁判所の判断で遺産の一部または全部を受け取れる人 を「特別縁故者」といいます。

 

相続人がいなければ遺産は国庫に帰属しますが、「生前に深い関係を持っていた人が、何も受け取れないのは不合理」という考えから設けられた制度です。

 

特別縁故者となり得る典型例

特別縁故者になるためには、家庭裁判所による認定を受ける必要があります。

 

被相続人と生計を同じくしていた人

  • 内縁の妻・夫(婚姻届を出していない配偶者)
  • 事実上の養子関係にあった人

※内縁関係は法律上の相続権がないため、遺言がなければ特別縁故者としての申立てが唯一の手段となります。

 

被相続人の療養看護に努めた人

  • 親族・知人で介護をしていた人

※職業介護人(ヘルパー等)は対象外

 

生前に特別の縁故があった人

  • 被相続人から「財産を譲る」と言われていた
  • 家族同然の付き合いをしていた友人・知人

 

生前に深くかかわった法人

  • 学校法人
  • 公益法人
  • 地方公共団体 など

 

相続人がいないときの相続手続きの流れ

相続人が誰もいない場合、遺産はすぐに国のものになるわけではありません。

 

相続財産法人の設立

相続人がいないことが判明した場合、民法第951条の「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」との記載にもとづき、家庭裁判所は遺産を管理するために「相続財産法人」 を設立し、相続財産清算人 を選任します。

 

※請求できる者:特別縁故者、被相続人の債権者、受遺者、検察官など

 

相続財産清算人が清算・相続人の捜索

相続財産清算人は以下を行います。

  • 被相続人の債務弁済
  • 相続人の捜索(官報公告)
  • 財産目録の作成

相続人が見つかれば通常の相続手続きが行われますが、相続人が見つからない場合は「相続人不存在」としての手続きに進みます。

 

特別縁故者による財産分与の申立て

相続財産の清算や相続人の捜索が終わり、特別縁故者の存在が認められた場合、特別縁故者は家庭裁判所に財産分与を申立てできます。

 

裁判所は、特別縁故者と被相続人との関係性やどれだけ貢献していたか、特別縁故者と被相続人の生前の生活状況などを総合的に判断し、遺産の全部または一部の分与を決定します。

 

特別縁故者もいない場合は国庫へ帰属

特別縁故者がいない、または申立てが認められない場合は、遺産は最終的に国庫に入ります

 

特別縁故者になるための申立て方法

生前の被相続人に貢献し支えた人物が特別縁故者としての申立てを行う場合、次の手続きを行う必要があります。

 

【申立てできる人】

  • 内縁の妻・夫
  • 被相続人を介護していた人
  • 特別な縁故のあった人
  • 関係する法人 など

 

【申立先】

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

 

【必要書類】

  • 申立書(裁判所のHPから入手可)
  • 被相続人の戸籍・住民票
  • 申立人の戸籍
  • 被相続人との関係を証明する資料(同居の事実・介護の記録・写真・手紙など)
  • その他裁判所から求められた書類

 

特別縁故者制度が必要とされる理由

  • 生涯独身者の増加
  • 親族との交流が疎遠な人の増加
  • 内縁関係の広がり
  • 家族同然に生活する友人・知人の存在

社会構造が変わる中で、「形式上の親族以外にも遺産を渡す仕組み」 として極めて重要な制度です。

 

まとめ

相続人が一人もいない場合、遺産はただちに国庫に入るわけではありません。家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、清算手続後、特別縁故者が申立てを行うことで遺産の分与を受けられる可能性があります。

 

特別縁故者は、一般的に内縁の配偶者・介護を担った人・深い関係のあった人などが対象となり、申立てには証明資料が重要です。

 

「相続人がいない」「内縁の妻に遺産を残したい」「自分が特別縁故者に当たるのか知りたい」などの場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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