親が認知症になったときに備えて、元気なうちに親の財産管理を子に託したいと考えるケースがよくみられます。これを叶えるのが家族信託というしくみですが、もし、信託財産のなかに住宅ローン(抵当権)が残っている不動産が含まれていた場合、当該不動産を家族信託契約で受託者である子に託すことはできるのでしょうか

【この記事の要点】

  • 不動産を信託するには名義変更を行う必要がある
  • 不動産信託時に欠かせない「債務引受契約」で債務者を委託者から受託者に変える
  • さらに「信託財産責任負担債務」の取り決めを行い金融機関による債権回収に備える
  • ローンが残っている不動産の信託には複雑な要素もあるため経験豊富な専門家への相談を

 

ここでは、ローンが残っている不動産を家族信託する際の手続きについて説明していきます。特に「債務引受契約」と「信託財産責任負担債務」に注目していきましょう

 

ローン(債務)を信託することはできない

アパートや自宅など不動産を購入する際、多くの人は住宅ローンやアパートローンなどを利用しています。ローンは金融機関との契約によって利用できる金融商品ですから、通常、ローン完済までは当該不動産について抵当権がつきます。債務は信託できませんので、ローンが残っている収益不動産をどう扱えばいいかお困りの方は少なくないでしょう。

 

名義変更を行って受託者に信託する

一般的に家族信託は、委託者の高齢化に伴う生前対策として利用されることが多いため、仮に住宅ローンが残っている不動産を受託者に託したいのであれば、不動産の名義変更をするなどして債務ごと不動産を信託する必要があります

 

法律上、ローン残債(抵当権)がある不動産の名義変更に金融機関の承諾は不要とされていますが、金融機関との契約内容によっては、勝手に名義変更すること自体が契約違反となり、一括返済を迫られる可能性も否定できません。

 

名義変更手続きを行う前には必ず金融機関に相談し、適切な対処を行うことが求められます。

 

債務引受契約を締結して受託者に信託する

仮に金融機関から同意を得て収益不動産の名義変更を行ったとしても、ローンの借主は委託者であることに変わりありません。つまり、ローン返済義務を負う人物と不動産の所有権を持つ人物が別々になってしまうのです。

 

この状態で、もし、委託者である親が認知症になってしまった場合、親は自分の判断でローンの返済を続行することができなくなることも考えられます。受託者である子が、債務の名義を自分に変更して手続きしようとしても、そのためには親の同意が必要ですから非常に困った状況に陥りかねません。

 

そこで、家族信託契約の締結時に「債務引受契約」も交わし、万が一に備えておく必要が出てきます。

 

債務引受契約

債務を引き受ける人を移転させる手続きのことを「債務引受契約」といい、家族信託契約においては、債務者を委託者から受託者に変えることを意味します。これによりローンの返済義務を負う人物が委託者から受託者になり、万が一受託者が返済できないときでも、金融機関は受託者名義の財産から債権を回収できるようになるのです。

 

債務引受契約には以下2種類がありますので、専門家に相談しながらどちらを選択すべきか慎重に検討することが大切です。

 

併存的債務引受(重畳的債務引受)

委託者と受託者の両方が連帯して債務を負う取り決めです。万が一、委託者が認知症になってしまったときは、委託者の同意を得ることができず、ローンを借り換えたり売却したりできなくなる可能性がありますので注意しましょう。

 

免責的債務引受

従来の債務者であった委託者に代わり、引受人のみが債務者となる取り決めです。これにより、信託不動産に係る各種取引について、委託者が認知症になったときのリスクを回避することができます。

 

ただし、引き受けた債務を信託財産から返済しようとする場合は、あらかじめ「信託財産責任負担債務」の取り決めを行っておかなければなりません。

 

信託財産責任負担債務の扱いにする

債務引受契約を締結しておくことで、不動産に係るローンの返済義務は委託者から受託者に移ります。しかし、このままでは、受託者個人の財産から返済を行わなければならなくなります。そこで、債務引受契約と同時に取り決めておきたいのが「信託財産責任負担債務」なのです。

【信託財産責任負担】

信託財産から返済する義務をもつ債務(受託者が信託財産から債務返済)

信託財産責任負担の取り決めをしておくことにより、受託者が信託財産から債務の返済を行ったり金融機関が信託財産から債権回収したりすることが可能になります

 

なお、受託者の固有財産も責任財産と見なされるため、債務返済の不履行による強制執行などについて、信託不動産だけではなく受託者の財産も債権回収の対象となる点に十分注意が必要です。

 

受託者は信託不動産を売却できるか

信託不動産は家族信託契約の発効に伴い受託者名義に変更されますが、不動産を処分する権限が契約書に明記されていることが必要です。また、信託不動産の扱いについては次のような選択肢が考えられます。

 

融資銀行にローンを完済し抵当権抹消手続きを行う

債務引受契約を「免責的債務引受」として締結しておき、受託者が債務者として融資銀行にローンを完済。その後、抵当権抹消手続きを行います。以後、受託者名義で不動産を売却することが可能です。

 

信託不動産をもって債務返済に充てる

信託財産について信託財産責任負担の取り決めを行っていたとき、受託者による返済が滞ってしまっても、融資銀行は信託財産から債権を回収することができます。

 

信託不動産を売却して得た代金は信託財産に該当します。以後も受託者は、これまで通り委託者のために財産管理を行っていく必要があります。

 

まとめ

家族信託で管理を任せる財産のなかに「ローン返済中の不動産」が含まれているときは、家族信託契約に際して債務引受契約や信託財産責任負担の取り決めを行うことになるでしょう。

 

ただし、債務引受契約や信託財産責任負担は理解やしくみが難しいため、1人で対応するには困難を伴うことが想定されます。また、委託者の判断能力が低下してしまってからでは契約事はできなくなりますし、委託者の同意を必要とする行為にも影響が出てしまうでしょう。

 

だからこそ、家族信託について豊富な経験を持つ専門家に事前相談し、適切な内容の信託契約を締結できるよう、しっかり準備を行っていくことが大切なのです。

 

また、家族信託に限らず、終活や相続、遺言などさまざまな生前対策についても、知識を得て備えを進めることが大切になってきます。

 

当行政書士法人は、家族信託を含む生前対策全般について豊富な経験を備えており、ご相談者様・ご依頼者様に対して最も適切と思われるプランを提案することはもちろん、必要に応じて専門家を手配するなど、トータルサポートの提供が可能です。まだ具体的な設計を決めきれていない状態でも問題ありませんので、無料相談でイメージを具体化してみることをお勧めします。

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