家族信託で不動産を信託する場合
不動産を家族信託の対象とする場合、信託契約書を作成しただけでは法的に完全ではありません。不動産は登記によって初めて第三者に対して「信託財産である」ことを主張できるため、以下の登記手続きをセットで行う必要があります。
- 所有権移転登記(委託者 → 受託者)
- 信託設定登記(信託内容の登記)
これらの登記手続きを行わないと、信託契約が存在しても不動産の法的地位は変わらず、信託自体が不完全な状態になります。
不動産を信託したら登記が必須となる理由
不動産は登記されて初めて第三者に対抗できます。「対抗」とは、第三者に対して自分の権利を主張できることであり、登記の場面では「登記済みであることによって所有権や信託設定などを第三者に主張できる」という意味合いになります。
つまり、登記をしなかった場合、以下のようなトラブルが発生する可能性が高くなる、ともいえます。
- 信託したはずの不動産が、外部から見れば「委託者のまま」と扱われる
- 委託者が勝手に第三者へ売却したように見える
- 受託者の権限を金融機関や買主に証明できない
信託契約を確実に機能させるには登記が必須ということです。
登記前に「受託者の権限」を明確化
信託契約書作成時の重要ポイントは、受託者が不動産をどこまで取り扱えるかを明確にすることです。必ず契約書に明記すべき権限として、次の3つを挙げることができます。
- 管理権限(修繕・賃貸借契約など)
- 運用権限(賃貸経営・資産運用)
- 処分権限(売却・交換・担保設定の可否)
もし、受託者の権限を曖昧なままにした場合、不動産売却や運用ができず、信託の目的が果たせなくなる恐れがあります。
所有権移転登記と信託設定登記の手続き
所有権移転登記と信託設定登記は、不動産を信託財産とする際に必ず同時に行う必要があります。
登記手続きの手順
まず、信託契約書を作成し、受託者が不動産を管理・運用・処分できる権限を契約内で明確化します。その後、法務局に対し「委託者→受託者」への所有権移転登記と、不動産が信託財産であることを明示する信託設定登記を申請します。
所有権移転登記は非課税ですが、信託設定登記は不動産評価額に応じて登録免許税が発生します。
登記を行うことで初めて信託を第三者に主張でき、受託者による適正な管理・処分が可能になります。
【登記申請先】
不動産所在地を管轄する法務局
【登録免許税(信託設定登記)】
- 土地:固定資産評価額 × 0.3%
- 建物:固定資産評価額 × 0.4%
※所有権移転登記は非課税(信託による移転のため)
【専門家に依頼するメリット】
- 複雑な手続きを任せることができる
- 記載漏れによる補正のリスクが大幅に軽減される
- 登記の専門家が正確に処理してトラブル防止できる
自身で申請する場合は、信託契約書作成時点から法務局で相談しながら進めることが大切です。
不動産に抵当権がある場合は要注意
住宅ローンが残っている不動産を信託する場合、必ず事前に金融機関へ相談が必要です。
オーナー名義が受託者に変わった場合、債務者・担保関係に影響を与えることから、金融機関の承諾なく信託すると契約違反になる可能性があります。必ず「信託設定の通知+事前相談」を行いましょう。
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賃貸不動産を信託する場合の手続き
賃貸物件を信託した場合は、管理関係も変更する必要があります。
必要な通知・変更
- 賃料の振込先口座を受託者名義に変更
- 借主(または管理会社)への通知
- 火災保険・地震保険のオーナー変更手続き
- 固定資産税について関係官庁への届出
これらを行わないと、旧口座に賃料が入金され続けたり、保険金請求に支障をきたしたり、税金の通知が委託者に届いたりするなどのトラブルが発生します。
まとめ
不動産を家族信託する場合は、以下の点に十分注意し、丁寧に手続きを進めることが大切です。
- 登記(所有権移転+信託設定)が必須
- 受託者の権限を契約書に明確化
- 抵当権付き不動産は金融機関へ事前相談
- 賃貸不動産は賃料口座・保険・税手続きを変更
- 登記は司法書士に依頼すると安全
不動産信託は「契約書作成」より「登記と権限設定」が重要となる手続きです。










