家族信託で信託財産を金銭にする場合の注意点
家族信託では、信託財産として「金銭」を選択するケースが最も一般的です。特に、委託者=受益者(親)が所有する金銭を信託し、受託者(子)が認知症対策として財産管理を行う形が広く利用されています。
しかし、金銭信託には 預貯金口座をそのまま信託することはできないなど、誤解されやすいルールがあります。まずは金銭信託がどのように設定されるのか、その基本を押さえましょう。
預貯金口座そのものは信託財産にできない
信託できるのは 「金銭」そのもの であり、口座の名義や口座そのものは信託財産にできません。そのため、以下の手続きが必要です。
委託者側の実務
- 委託者の預貯金口座から金銭を出金し、受託者へ引き渡す
- 口座の全額を信託する場合は信託後に口座を解約してもよい
- 引落し用の口座を残す場合は残高不足にならないよう信託金から補填していく
生活費口座を残したい場合の対応
- 水道光熱費など引落しを続けたい
※一定額を残して口座運用を継続し、必要に応じて受託者が入金する
このように、「口座管理」と「金銭引き渡し」の両方を計画的に行うことが不可欠となります。
受託者は金銭を分別管理する義務がある
信託法上、受託者には分別管理義務が課されます。これは、「受託者自身の固有財産と信託財産(預かった金銭)を絶対に混同してはいけない」というルールです。
①新しい預貯金口座(信託用口座)を開設する
- 金融機関に“信託口口座として名義表記を依頼する
- 対応しない金融機関が多いため、その場合は受託者名義の新規口座を使う
- 信託契約書に「この口座で信託金を管理する」と記載すれば問題なし
②既存の未使用口座を流用する
- 新規開設が難しい場合は、受託者が使っていない口座を信託専用にする
- 契約書に口座情報を記載して分別管理を担保する
ポイント
分別管理ができていれば、口座名義が受託者の個人口座でも信託口座として扱うことは可能です。
金銭信託を安全に運用するための注意点
金銭を信託財産とする場合、以下の点に注意して運用していきましょう。
信託財産の引き渡し方法を明確にする
- 信託時に一括で金銭を移すのか
- 定期的に追加信託するのか
- 委託者の生活費用口座とどう連携するか
これらを契約書に具体的に記載しましょう。
信託財産の目的を明確にする
「委託者の生活費・医療費・施設費等に充てるため受託者が管理する」など、目的を曖昧にせず、受託者が金融機関や家族にきちんと説明できるような配慮が必要です。
受託者の権限範囲を細かく規定する
- 医療費・介護費の支払い
- 必要経費の支出
- 委託者口座への補填
権限が弱いと実務が不可能になるため、十分に規定する必要があります。
金銭信託が選ばれる理由
金銭信託が広く利用される理由は以下のとおりです。
認知症で預金が凍結されるのを防げる
家族が預金を使えない問題を事前に解決できる。
成年後見制度より柔軟に管理できる
後見制度では支出の制限が厳しく、報酬負担も大きい。
子が生活費や医療費を迅速に支払える
事前に金銭が信託財産として移っているため、判断能力低下後もスムーズ。
まとめ
金銭を信託財産とする家族信託は、認知症による預金凍結を防ぎ、家族が安心して財産管理を行える優れた生前対策です。
ただし、預貯金口座そのものは信託できないこと、委託者からの金銭引き渡しが必要であること、受託者には分別管理義務があることなどについて理解しておくことが不可欠です。
不安がある場合は、信託実務に精通した行政書士・司法書士に相談すると安全です。










