任意後見契約は、本人の判断能力が低下したときに備える制度ですが、その効力がいつ発生するのか・どう判断するのかが非常に重要です。
ここでは、任意後見契約の発効条件、判断能力低下の基準、見守り契約を併用すべき理由をわかりやすく説明します。
任意後見契約の効力が発生する条件
任意後見契約は、締結しただけでは効力は発生しません。効力が生じるには次の2つが必須条件です。
(1)本人に判断能力の低下が認められること
法律上の基準は、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況」にあることとしていますが、実務では、軽度の認知症が見られる時点が一般的な目安とされています。
判断能力低下の例として、以下を挙げることができます。
- 貯金や支払い状況を説明できない
- 通帳やカードを本人が管理できなくなる
- 日常生活の判断(契約・手続き)が難しくなる など
(2)家庭裁判所が任意後見監督人を選任すること
本人の判断能力が低下したと認められれば、本人・配偶者・親族・任意後見受任者などが家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点で契約が正式に発効します。
任意後見監督人が選ばれると、以下の順で手続きが進み、任意後見契約が発効します。
- 受任者 → 任意後見人へ移行
- 契約書に書かれた代理権が使用可能になる
- 後見人・監督人の報酬支払いが開始される
効力発生のタイミングを逃しやすい理由
任意後見契約は、本人の判断能力低下を誰が気づくかが鍵となります。
日常的に支援者がいる場合
家族が様子を見ているため、判断能力の低下に気づきやすいといえるでしょう。
日常的な支援者がいない場合
本人の判断能力が低下しても、そのことを誰も発見できなかったり、そのために家庭裁判所への申立てタイミングを逃してしまったりすることがあります。これが「任意後見は発効のタイミングが難しい」と言われる理由です。
見守り契約を併用すべき理由
支援者がいないケースでは、任意後見契約と同時に「見守り契約」を公正証書で結ぶことが強く推奨されます。
見守り契約とは
定期的に訪問したり連絡を取ったりして、本人の健康状態や生活状況、判断能力などを見守る契約です。
見守り契約が必要な理由
任意後見契約と見守り契約を併用すれば、定期的に第三者が本人の生活状況や判断能力を確認することで、適切な時期に任意後見契約の発効申立てを行える体制を整えることができます。
また、見守り人と任意後見受任者を別の人物にすることで、受任者が申立てをためらうケースを防ぎ、本当に必要なタイミングで任意後見契約を発効できる点が大きなメリットです。
見守り人と受任者を分けるメリット
見守り人と任意後見受任者を分けることには、次のようなメリットがあります。
- 見守り人が第三者の立場で「発効すべき時期」を適切に判断できる
- 任意後見受任者が手続きに躊躇しても、見守り人が申立てを促せる
- 本人の利益を最優先に発効のタイミングを調整できる
まとめ
任意後見契約は、本人の判断能力低下を発端として任意後見監督人の選任申立てを行い、家庭裁判所が選任することで効力が発生します。
しかし実務では、判断能力低下の見極めが難しく申立てのタイミングを逃しやすかったり、受任者が申立てを躊躇する可能性があったりする、という問題があります。
したがって、最も重要なのは、任意後見契約と同時に見守り契約を結ぶこと、そして見守り人と任意後見受任者は別の人物にすることだといえるでしょう。確かな体制を作り上げておくことで、本人にとって最も良いタイミングで任意後見契約を発効させることができます。










