家族信託とは民事信託に分類されるもので、自分の財産の管理を信頼できる家族に託すことを意味します。しかし、家族も人間ですから、魔が差すなどして、委託された財産に手を付けてしまう可能性も決して否定できません。
【この記事の要点】
- 信託法上、受託者に課せられた義務について知っておく
- 善管注意義務・忠実義務・分別管理義務は特に大事
- 信託財産の使い込みを防ぐための方法とは
- 信託財産の使い込みが発覚したときの対処とは
ここでは、家族信託で受託者による財産使い込みを防ぐ方法について説明していきます。トラブル回避の策を知るだけではなく、万が一使い込みが起こってしまったときの対処についても理解しておきましょう。
家族信託のしくみと目的
家族信託は、財産を託す委託者・財産管理を託された受託者・信託財産から生じた利益を得る受益者で構成される、生前対策の1つのかたちです。委託者と受託者が家族信託契約を締結することにより効力を発揮します。
家族信託契約を締結する背景事情はさまざまですが、「高齢の親が委託者として自分の財産の管理を子に委託し、将来的に自分が認知症などになったときでも安心して金銭管理を子に任せることができる。」といったケースがよくみられます。
受託者が負う義務と責任
さて、受託者は、委託者の大切な財産を管理するよう委託されていますので、相応の義務と責任を果たすことが求められます。具体的には、次の義務・責任を挙げることができます。
- 分別管理義務
- 善管注意義務
- 忠実義務
- 信託事務処理委託に関する第三者選任および監督義務
- 公平義務
- 帳簿等の作成・保存・報告などの義務
- 損失補てん責任
善管注意義務
信託の目的にしたがって、受託者が善良な管理者として十分に注意しながら信託事務を行うことをいいます。
信託事務処理委託に関する第三者選任および監督義務
受託者がその信託事務を第三者に委託する場合、信託目的にもとづき適正な人選を行い、委託後も当該第三者が適切に信託事務を行っているか監督することをいいます。
公平義務
受益者が2人以上いる場合、その受益者らに対して公平に信託事務を遂行することをいいます。
帳簿等の作成・保存・報告などの義務
委託者または受益者から信託事務の処理状況・信託財産の状況・信託財産責任負担債務の状況について報告を求められたとき、適当な方法で報告を行うことをいいます。
分別管理義務
受託者が委託を受けた財産はあくまでも信託財産であり、受託者個人の財産とは別のものです。受託者個人の財産とは分け、適切に管理することが求められます。具体的には、口座を分けて区別するなどの対処が必要です。
信託財産と受託者個人の財産を分けて管理することで、たとえば受託者自身が個人的に債務を負いその回収を受けたときでも、債権者は信託財産に手を付けることができず、結果として信託財産を守ることができます。
忠実義務
受託者は、受益者に対して忠実に信託事務およびその他の行為をしなければなりません。これを忠実義務といいます。忠実義務を正しく果たすために、受託者は利益相反行為・競合行為に制限を受けますので十分に注意しましょう。
損失てん補責任
受託者がその任務を適切に行わなかったことにより信託財産に損失が生じた場合、受益者は受託者に対して「損失のてん補請求」を行うことができ、受託者はその損失を補わなければなりません。
損失補てん責任を問われないための最善の策は、分別管理義務を徹底して守ることです。信託財産の適切な管理に努めれば、損失を生じさせるリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
信託財産の使い込みを防ぐ方法とは
信託財産の使い込みを防ぐためには、複数人で信託財産を管理したり信託監督人をつけたりする方法を採るといいかもしれません。
複数の受託者の選任
複数の受託者を選任し互いに見守りや観察を続けることで、いずれかの受託者による不正の可能性を防いだり財産管理・活用について意見を交わして最善策を採ったりすることが可能になるでしょう。
ただし、受託者同士で意見が合わず揉めるリスクもありますので、適切な人選が非常に重要です。
信託監督人の選任
受託者のほかに「信託監督人」を選任しておくことも、信託財産の使い込みを防ぐ1つの方法になってきます。
【信託監督人】
以下のような状況において、受託者の信託事務遂行を監視あるいは監督する「信託監督人」を選任することがあります。
- 受益者が認知症・障害者・未成年者である場合
- 受託者自身が1人で信託事務を遂行することに困難を感じる場合 など
信託監督人は、信託財産が受益者のために正しく利用されているかどうかを監視し、その業務を監督します。公平・公正な人物が信託監督人になることが望ましいという考えから、家族信託に詳しく経験豊富な行政書士や司法書士などの専門家を選ぶ傾向にあるようです。
財産使い込みが発覚したときの対処法
信頼のもとに受託者となってもらった相手でも、「万が一」の事態が起こらないとも限りません。もし、信託財産が受託者に使い込まれた場合、受益者は受託者に対する監督権限を行使して、以下に挙げるような対処を行うことができます。
使い込んだ財産の返還要求
受益者は受託者に対し、財産のうち損失分について返還するよう求めることができます。もし、受託者が返還を拒んだ場合は、訴訟を起こして解決を図ることになるでしょう。
受託者の解任
信託財産の使い込みは「受託者の忠実義務」に違反する行為ですので、委託者または受益者は受託者を解任することができます。ただし、解任した場合は新たに受託者を選ばなければなりません。
委託者または受益者がすでに高齢であるなど、受託者の監督が十分できないと考えられる場合は、信託監督人を設置することも検討してみましょう。
まとめ
家族信託の場合、委託者=受益者(親)・受託者(子)としているケースがよくみられます。財産を扱う契約ですから、信頼をもって受託者を選び契約締結にいたっていることでしょう。
しかし、人間である以上、間違いが起こる可能性も否定できません。受託者への信頼が確かなものであっても、安心のために信託監督人を設置することには検討の価値があります。行政書士や司法書士、弁護士など公平・公正な第三者であれば、「つい信託財産に手を付けてしまう」ということもありませんし、受託者に対して適切なサポートを行うこともできます。
当行政書士法人では、家族信託契約に関するご相談・ご依頼を数多くいただいてきました。培ってきた経験は、ご相談者様やご依頼者様に対する適切な助言やサポートに活きています。もし、家族信託についてご不安やご心配をお抱えでしたら、ぜひ当社の無料相談をご利用ください。最適と思われる解決策や家族信託のあり方を一緒に整理してみましょう。










